コメの価格高騰は、生産調整と農政の需給管理の失敗による大幅なコメ不足が原因である。とはいえ不足だったからすぐに高騰するというものでもない。コメ高騰は不足下で順を追って進んでいった。

結論から言えば、概算金値上げ、集荷競争、スポット価格の上昇で高騰した。

価格は、前年の2023年10月頃から既にくすぶりはじめていた。

23年10月には5㎏1905円が1968円に値上がり11月には2000円を超えていた。2024年3月を過ぎると値上がりは誰の目にも見えるようになり、2042円が6月には2201円になり、それ以降は25年の3月の4145円を目指して一瀉千里に上がっていく。わずか1年間で倍値になる。

 

1)集荷不安から集荷競争へ

こうした、生産不足・民間在庫不足によるコメ不足は、先に述べたように業界にいる人々からすれば、23年の秋にはすでに懸念されていたことである。事業者からすれば、死活問題であり、当然集荷に関心を寄せはじめることになる。集荷に不安を感じた業務用米利用者が伝手を使ってコメ確保に動くこともあった。

コメ価格高騰は、新規参入者も含めた集荷への関心によって火蓋が切られる。動きは24年に入って顕在化し、「今まで見たことのない業者が米を買いに来ている」と言われはじめる。しかしこれはまだ序章に過ぎず、本格的になるのは価格が上昇しはじめる6月以降であり、中小スーパーの棚からコメが消え、コメ不足が顕在化したころだ。

 

2)農協の高い概算金が高騰を誘発

まずもって8月の価格値上がりに合わせ、農協の概算金が値上がりした。すると価格は右肩上がりに上がっていき、くすぶっていた農協と実需者との集荷競争が表面化し激化していく。

農協は劣勢に立たされ、農協集荷が例年の7割程度になり、コメは出せないという噂が流れはじめる。すると大手卸も本気で集荷に動かざるをえなくなる。小売り価格は3400円台まで高騰する。

10月頃だが、この時点で小康状態になる。それは卸業界がもしかしたら備蓄米放出が実現するかもしれないと期待したからである。

 

3)年間供給が難しくなり、月あたり出荷数量が下がりスポット価格が急騰

が、そうなることはなかった。そうなると25年夏までの供給が不可能との観測が広がり、価格高騰は次のステージに移っていく。コメは年一回の産物である。25年夏までの供給が不可能との観測が出てくれば、当然年間供給を優先し、一月あたりの出荷量を減らさざるを得なくなる。コメ不足の顕在化である。

コメ供給に懸念を示す卸の足元では、農協の卸への売値「相対価格」が60㎏22000円から26000円へと上がっていく。同時に月あたり供給を絞らざるをえなくなった卸の間では「卸間売買」が活発になる。コメを求めて卸間売買市場である「スポット市場」の価格が急上昇しはじめる。一時期60㎏50000円の落札もでるようになった。この頃(年明け早々)コメは天井知らずになっていく。小売価格も5ヶ月で2倍に上がってしまう。

 

4)理由は何であれ備蓄米放出を決断

米価高騰は、誰の目にもこれは異常とうつるようになる。万やむを得ず農水省は動かざるをえなくなるが、その方策があれほど忌み嫌った5ヶ月遅れの「備蓄米」の放出だった。

「コメは足りている」と主張する農水省がなぜ備蓄米を流すことになったのか?備蓄米は「不足時に放出」するのではなかったのか?

ここで農水省は新たな説明を準備する。それは「流通の目詰まり」を解消するために備蓄米を流すというロジックである。「流通量不足でも備蓄米は流せる」ととりつくろい、勝手に解釈し、備蓄米放出に踏み切ったのだった。これまでかたくなに「大幅な不作時」に限ると杓子定規に解釈してきた備蓄米放出の条件を変えたのである。

ただ、遅きに失したとは思うが、私はどんなロジックでも備蓄米放出の決断は良かったと思う。ここから、実際の放出までは約2ヶ月を要するがこの間も小売価格は値上がりを続ける。