最初、知人から
「え~とね、不倫相手の赤ん坊をさらって逃げる女の話。」
と聞かされた時は、
「何だよそれ。昼ドラじゃん」
と思ったものですが、実際に読み始めてみると、一行目から
緊迫感漂う語り口、圧倒的な表現力にぐいぐいと引き込まれ、
ページを繰る手が止まらなくなっていきます。

そう、劇場版が4月29日から公開され、再び話題となって
いる『八日目の蝉』の原作は、犯罪者の視点で描かれた
サスペンス、スリリングな逃亡劇として幕を開けます。


$粋七日記

八日目の蝉/角田光代(中央公論新社・文庫)
※第2回中央公論文芸賞受賞作


しかしこの作品は犯罪そのものを描いた小説ではなく、むしろ
徹底した女性視点に貫かれた「母性」や「絆」、「家族(親子)」
についての物語なのです。

だから偽りの親子に束の間訪れる幸せ、一緒に見つめた自然の
美しさに我がことのように感動し、二人が引き剥がされる場面
では、胸が掻きむしられもします。

そして誘拐された女の子が成人になり、混乱し、結局自分を
さらった女と同じ様なシチュエーションに追い込まれていく
段になると、「果たして救いはあるのか?」と疑問を抱く
ようになります。

しかしこの作者は、最後に心揺さぶられる感動的なシーンを
残してくれました。

そこには赦(ゆる)しがある。抑制された美しさがある。

懐の深い小説です。
ぜひ、多くの人に手に取ってほしい・・・と、素直に思えました。


P.S.そういえば映画の方も永作さんの演技、スゴイらしいですね。
ぜひ観なければ・・・

(J)


↓1週間が過ぎても死ななかった蝉は何を見たのか?
 色々考えさせられました・・・。ぽち。
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