村上春樹氏との比較で語られる事も多く、
以前から読んでみたいと思っていたアメリカの現代作家、
ポール・オースターの小説第一作(85年)が新訳版で
出たので、手に取ってみました。

$粋七日記

「ガラスの街」ポール・オースター
柴田元彦訳(新潮社)


確かに、音楽的で透明感あふれる文体、
探偵小説の枠組みを使いながらも、そこから逸脱していくような展開、
また、ある熾烈な状況下に置かれる事により登場人物の人生が
大きく損なわれていく・・・と言ったテーマは、
村上作品との共通項かも知れません。

しかしこの人の場合、もっと印象的なのは、丹念に築き上げられた
文章が、内側からつき崩されるような瞬間。

依頼人による「ブーフー。ウィリニリ。」な長い独白の衝撃、
主人公によるニューヨークの人々の観察、その叩きつける様な
言葉の連射、犯人(?)と思しき博士の歪んだ整合性のある理論・・・。


端正なのに破壊的、伝統的なのに非在感があるという
この奇妙なねじれの感覚が、この作家の最大の持ち味なのかも・・・
と思ってしまいました。

平たく言えば受け取り手によって、どんな風にも読めてしまう
「面白い作品」で、私も見事にハマっちゃいました。


かくなる上は<ニューヨーク三部作>の残り二作
(『幽霊たち』、『鍵のかかった部屋』)にも触手を伸ばさなければ・・・

う~ん、楽しみです。

(J)

P.S.この乾いた感じと舞台設定(N.Y.)・・・読みながら飲むなら、
バーボンに決まり!ですね。


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