社長は身体が資本である。
これはよく言われるが、
やはり年々その重みが増しているように感じる。
社長は会社の中心であり、
判断し、動き、決断する役割を担う。
だから仕事に全力を注ぐのは当然である。
しかし同時に、
その全力を支えるための“休息”も同じくらい重要。
どちらか一方だけでは長続きしない。
大切なのは、そのバランスである。
仕事に集中し続ければ脳は疲弊する。
身体は動いていても、
判断のキレが鈍り、
些細なことにイライラしたり、
何かを忘れたり、
いい言葉やアイディアがでなかったり、
誤った決断を招くこともある。
そんなときこそ必要なのが
「気持ちの切り替え」と思っている。
少し社内を歩く、
コンビニなど外へでかける、
10分だけ椅子から離れる、
昼食をゆっくり味わう、でもいい。
ほんの小さな行動でも、
脳は一度リセットされ、
再び動き出す余白が生まれる。
ある社長は、
忙しい時期ほど意識的に“短い休憩”を挟むという。
理由を尋ねると
「休むためではなく、
仕事で最高のパフォーマンスを出すためだよ」とのこと。
まさにその通りで、
休むことは仕事をサボることではない。
働くために必要な準備であり、
集中力を保つための投資である。
休むことと働くことは対立するものではなく、
互いを支え合う存在だ。
心が整えば、人にも優しく接することができる。
頭がクリアなら、判断は鋭くなる。
身体が軽ければ、行動は速くなる。
つまり、休息が整うほど、
仕事の質は確実に上がるのである。
社長だからこそ、仕事に全力を注ぎながら、
同じ重さで休息にも目を向けてほしい。
忙しさに呑み込まれるのではなく、
意識して立ち止まり、深呼吸し、脳を休める。
その積み重ねが、長く強く会社を支える力になる。
仕事も大事。
休息も大事。
どちらが欠けても、良い経営は成り立たない。
バランスこそが、社長の最大の武器である。
最近、国内外を問わず、
大規模な火災のニュースをよく耳にする。
気候変動の影響もあるのだろうし、
人災も重なるのだろう。
しかし、一度何かが起こると被害が一気に広がり、
手のつけようがなくなる光景を見るたびに、
私たちはいま、
とても脆い世界に生きているのだと
痛感させられる。
車で走っていても、
交通事故現場をよく見かける。
せわしなく車線変更する車
スマホを見ながら信号に気づかない歩行者。
自転車専用レーン、車線の区分けなく
走る自転車など。
時間に追われているのか、
心がそわついているのか、
人の動きがどこか落ち着きなく、
全体がせかせかと流れている印象を受ける。
こうした出来事が続くと、
自然と「何が大事なのか」を考えさせられる。
忙しさの渦に巻き込まれていると、
つい見失うが、結局のところ、
私たちにとって一番大切なのは
“生きていること”そのものではないか。
生きていてこそ、家族とも話せるし、
仕事もできる。どんな計画も、
どんな夢も、命があって初めて意味を持つ。
にもかかわらず、
人はすぐに基本を忘れてしまう。
安全確認を怠り、焦って判断を誤り、
心の余裕をなくす。
だが、基本とは常にシンプルである。
「止まる」「見る」「待つ」
火災を防ぐのも、
事故を避けるのも、
まずはこの当たり前の積み重ねである。
大きな危機は、
ほんの小さな油断から起きている。
だからこそ、
いま改めて基本に立ち返る必要がある。
生き急がないこと。
大事なものを大事に扱うこと。
体を休めること。
周囲に少しだけ目を配ること。
これらを丁寧に積み重ねるだけで、
日常はずいぶん穏やかなものになる。
世界は揺らいでいる。
しかし、私たちが
揺らがないためにできることは確実にある。
自分を守ることは、
大切な人を守ることにつながる。
そんな当たり前を忘れず、
生きていくことそのものを、
もっと大切にしたい。
山形県酒田市にある、酒田米菓株式会社の
創立七十五周年記念式典に参加させていただいた。
およそ250名が集う「月のホテル」の会場は、
静かな熱気と、人々が長く、守り育ててきた
酒田米菓の歴史の重みが調和していた。
酒田市ゆかりの方々や
そしてオランダせんべいを愛し、
応援する多くのお客様が集い、
この企業が地域に根ざして歩んできた年月の尊さを、
あらためて感じた。
式典では社長交代が発表され、
若い佐藤栄人新社長が壇上に立った。
その姿には、歴史ある企業のバトンを確かに受け取り、
未来へと新たな一歩を踏み出す覚悟が力強く宿っていた。
酒田米菓を率いてきた佐藤栄司社長、
栄人新社長は、
比較的もの静かな東北地方の企業としては、
珍しいほどアグレッシブで、
ポジティブな気風を持っている。
慎重で堅実な企業文化が根づきやすい地域にあって、
挑戦を恐れず前へ進む姿勢は、
まさに地方企業の新たなモデルとなる存在である。
その力強いリーダーシップが
酒田米菓の成長を支え、
今回の世代交代にも確かな未来の土台がある、
と感じさせてくれた。
人口減、雇用の問題など、
地方には避けて通れない課題がある。
酒田米菓は既に海外で売上を伸ばし、
さらに国内だけでなく、海外市場に向けて
大きく展開しようとしている。
その挑戦の姿勢こそ、
地方にこそ大きな可能性が潜んでいることを
証明しているように思う。
私はこれまでいただいてきた酒田米菓様とのご縁に
心から感謝し、これからも微力ながら、
酒田米菓の発展に関わり、
応援し続けたいと強く思った。
地方企業が持つ力、
そしてそこに息づく挑戦の精神は、
まだまだ大きく輝く。
酒田米菓が地域の希望の光として、
これからも発展し続けることを願ってやまない。
株式会社パジャ・ポスをスタートして23年。
そして、迎えた60歳の誕生日。
節目のこの日に、
これまで歩いてきた道を静かに振り返ると、
胸の奥から込み上げてくるのは
「感謝」という言葉しかない。
ありがたいことに、
私は本当に多くの企業とご縁をいただき、
ときには全く知らない業界に飛び込み、
ゼロから学び、
向き合い、
そして一緒に挑戦させていただいた。
未知の現場に入るたび、
私は“教える立場”ではなく、
むしろ“学ばせていただく立場”だった。
企業には歴史があり、
文化があり、
そこで必死に働く人たちの汗や思いがある。
その一つひとつが、
私にとって大切な教材だった。
当たり前のことだが
同じ日は一日としてなく、
また同じ企業も二つとしてない。
だからこそ、
この仕事は本当に深く、面白く、
そして何よりやり甲斐がある。
そして、そのすべての出会いが、
今の私をつくってくれたと思っている。
60歳を迎えた今、私は心から思う。
「私は人に支えられて、
ここまで来ることができた」と。
声をかけてくださった経営者の皆さま、
共に悩み動いてくれた社員の方々、
時に厳しく、
時に温かく接してくださった皆さま。
これらのご縁がなければ、
私はこの景色を見られなかった。
私はこの先、まだ成長したいと思っており、
もっと誰かのために働いていきたい。
そして企業をもっとよくしたいという
経営者の力になれたらと心から願っている。
60歳は区切りではなく、
“ここからもう一度始める日”だと思っている。
今まで出会ってくださったすべての皆さまへ
そして、これから出会う方々へ。
心から、ありがとうございます。
先日、医療クリニックの先生と話していた際に
こんな話を聞いた。
医者の世界では、
手術前の「準備は120%やる」が常識だという。
想定外をなくし、
患者の命を守るために、
万が一の芽を徹底的につぶすためだ。
これはプロとしての最低条件なのだろう。
私たちの仕事も同じである。
準備しておいて損をすることは一つもない。
むしろ、準備が不足しているときほど
ミスやトラブルは起こる。
商談がうまくいかないのは
当日の出来不出来ではなく、
事前の段取りで決着していることが多い。
「当日なんとかする」は仕事ではなく、
ただの運任せである。
120%の準備とは何か。
第一に、相手の立場を深く想像することである。
相手が抱えている不安や期待を
先回りして理解する。
第二に、「もし〜だったら」を
複数準備しておくことである。
最悪のパターンとその対処を持っておくことで、
場の安定感は大きく変わる。
第三に、手を動かして形にしておくことである。
資料やシナリオ、
動線の確認など、
準備は思考ではなく具体化が重要である。
準備を徹底する人は信用を得る。
「あの人に任せておけば心配ない」と思われる。
この信用こそが次の機会につながる
最大の資産である。
準備は裏切らない。
準備こそが自分を守り、
成功を引き寄せる最強の武器である。
だからこそ、
仕事でも120%の準備を
標準にしたいものである。
最近つくづく感じるのは、
自分で“不調を意識しない”こと。
これはとても重要だと思っている。
人は「なんとなく調子が悪いかもしれない」と
思い始めた瞬間から、
心がその方向へ傾き、
身体までがそれに引きずられることがある。
まさに“病は気から”。
この言葉は本当によくできていると思う。
もちろん休養が必要なときはある。
身体が発するサインを無視して突き進めば、
かえって大きな不調につながる。
しかし問題は、
実際には大したことがないにもかかわらず、
自分の心が
「不調」をつくり出してしまうことである。
「疲れた気がする」
「風邪をひいたかもしれない」
「最近弱っている気がする」
こういった“気がする”が続くと、
やがて本当に身体がそちらへ寄っていく。
心と体が密接につながっている証拠である。
だからこそ私は日常の基本を
“元気である自分”に置いている。
多少の違和感なら深く考えない。
必要な休養はとりつつも、
気持ちまで沈ませない。
そうすると、不思議なほど身体も軽くなる。
社長業は、
日々多くの判断と責任が
のしかかる仕事である。
だからこそ、
自分の心がつくる「不調」に
負けないことが重要だ。
心の持ち方ひとつで、
仕事の質も人生の質も大きく変わる。
意識しすぎない。
心配しすぎない。
“気”の整え方こそ、
日々を健やかに生きる土台であると
強く思っている。
私は時々、考えることがある。
「不思議なことがよく起きる」のだ。
意図していないのに、
ある時期から急に人との関係が広がり始める。
新しい人を紹介され、
その人がまた別の人をつなげてくれる。
気づけば、一見バラバラに思える人たちが、
実はどこかでつながっていたりする。
「この人とあの人が知り合いだったのか」
「この紹介がまさかこんな展開になるとは」
そんな驚きを何度も経験する。
とくに社長業をやっている人は
こう感じる人が多いかもしれない。
私はこれを、ただの偶然とは思っていない。
人の流れには
“同じ泉”のようなものがあると感じている。
同じ泉とは、
同じ方向に生きている人たちが
自然と惹かれ合う、
見えない水脈のようなものだ。
価値観、姿勢、エネルギー、思考のクセ。
そうしたものが似ている人同士は、
まったく違う業界にいてもどこかでつながる。
特にこの「泉の流れ」を強く感じる。
なぜなら、
社長自身の心の状態や姿勢が、
そのまま周囲の縁を引き寄せるからだ。
前向きなときは、
不思議なほど前向きな人が集まってくる。
挑戦しようとしているときは、
自然と背中を押してくれる人が現れる。
逆に、迷っているときは、
迷った人との縁が増えるのだ。
世の中とは本当にそういうものである。
私が思うに、
縁が広がる時期というのは、
社長自身の心が整い、
エネルギーが高まっている証拠だ。
自分の泉が澄んでくると、
その水脈につながる人が次々と現れる。
だから私は縁が広がるときには
できるだけ逆らわないように心がけている。
紹介されたら、
できるだけ早い日時で会ってみる。
話をいただいたら、すぐに相手先を調べ、
一度耳を傾けるようにする。
その小さな行動が、
後になって大きな流れになることがある。
社長業は、「孤独」に見えて、
実は、縁で成り立っている仕事だ。
ひとつの縁が次の縁を呼び、
その縁がまた新しい道を開いていく。
人は人を通じて成長する。
会社も、また人を通じて強くなる。
そして広がる縁の向こうには、
必ず“同じ泉”がある。
私はそう信じている。
採用がますます難しくなっている。
どの会社も人が足りず、
求人をかけてもなかなか応募が来ない。
そんな状況が続くと、
社長としてはどうしても
「もう誰でもいいから来てほしい!」
と思ってしまう。
気持ちはよくわかる。本当に。
だが、そこで妥協してしまうと、
後々もっと大きな問題が必ずやってくるのだ。
事業は人で決まる。
人が会社をつくり、
人が会社を壊す。
だからこそ、
採用は社長の最重要仕事のひとつだ。
採用で手を抜いた会社は、
必ず組織のどこかが歪み、
いつかそれが大きなひび割れになる。
妥協して採った人材のフォローに時間を取られ、
優秀な社員の不満が溜まり、
組織はじわじわと弱っていく。
「採れれば誰でもいい」は短期的には楽だ。
しかし中長期的には、
社長が一番苦しむことになる。
だからこそ、
採用基準は絶対に緩めてはいけないのだ。
どれだけ応募が少なくても、
基準に満たない人は採らない。
その覚悟が組織を守る。
むしろ、採用難のときこそ
自社の魅力を磨くチャンス。
社員が誇れる会社か、
理念が伝わっているか、
給与体系は納得感があるか、
評価軸は明確か。
そして一番重要な
「自社の価値観」と合っているか。
応募が少ないからこそ、
会社そのものの質を問い直す時間が生まれる。
採用は「人を選ぶこと」ではなく、
「選ばれる会社になること」
でもあるのだから。
採用は戦である。
勝つまで動き続ければ必ず成果は出る。
社長の覚悟が試される領域だ。
だから、
焦らなくていい。
妥協しなくていい。
基準を守って探し続ければ、
必ず「この人だ」という出会いが訪れる。
採用が難しい時代だからこそ、
目先に流されず、
未来に投資する判断をしよう。
基準を守る社長の姿勢こそが、
強い組織をつくる。
最近つくづく思う。
人は、放っておくと
なんでも“力んでしまう”ということだ。
たとえばゴルフ。
上手く飛ばそうと思うほど肩に力が入り、
クラブは思う方向にいかない。
コーチから「もっと力を抜いて」と言われても、
いざ構えると無意識に力む。
結果、飛距離も方向性も安定しない。
仕事でも同じ。
忙しさやプレッシャーで
つい気持ちも身体も固くなる。
PC作業が続くと肘や首に痛みが出て、
日頃通っている治療院では
「力入ってますね」と言われる。
本人は無意識でも、身体は正直だ。
力みは、成果を遠ざけ、パフォーマンスを落とす。
では、なぜ力んでしまうのか。
「なんとかしよう」
「もっと良くしよう」
という思いが強すぎるからだ。
真面目に取り組めはとり組むほど、
結果を出そうと力を入れてしまう。
しかし力みが大きいほど視野は狭くなり、
判断も遅れる。
体にも心にも余裕がなくなり、むしろ逆効果になる。
大切なのは、力を抜く勇気だと思っている。
力を抜くとは、手を抜くことではない。
いまの自分を信じて、
必要以上に抱え込まないということだ。
肩の力を少し落とすだけで、
物事はスムーズに流れ始める。
ゴルフも、仕事も、人間関係も同じだ。
力を抜けば、
自然と視野が広がり、判断も軽やかになる。
良いアイデアも生まれるし、
周りとのコミュニケーションも柔らかくなることで
会社全体の空気も、驚くほど変わる。
がんばりすぎず、力まない。
そのほうが、結果は確実に良くなる。
がむしゃらに力を入れるのではなく、
自然体で取り組む。
そのほうが、遠くへ、そして正確に飛ぶのだ。
社員が一つにまとまる時というのは、
実は大きな出来事ではなく、
ほんの小さなきっかけから生まれるものだ。
たとえば、
新しい人員が入社した際に
ランチを一緒に食べに行ったときの会話。
あるいは、同じ目標に向かって忙しさを共に、
苦労を分かち合った瞬間。
オフィスのイベントで
外に出て、一緒の空間で体験をしている時。
そうした“日常の中の出来事”が、
心の距離をぐっと縮めてくれる。
私は組織づくりの本質は
「関係づくり」だと思っている。
チームをまとめようとするよりも、
まず人と人がつながる。
その関係の中で信頼が生まれ、
自然とまとまりができていく。
ときには、
社長の一言がきっかけになることもある。
何気なくかけた
「ありがとう」や
「頼りにしてるよ」という言葉が、
社員の心に火をつけることがある。
人は言葉で動く。
だからこそ、
社長の言葉には大きな力がある。
会社を一つにしようと気負わなくていい。
大切なのは、
日々の中にある“きっかけ”を大切にすること。
その積み重ねが、
やがて「チームの一体感」という
形になって表れる。
社員が一つになる瞬間は、
特別な会議でも、
難しい仕組みでもなく、
人と人との「温度」の中に
生まれているのだと思う。








