”あきらめないこと”は、
古くから日本人の美徳とされてきた。
経営においても、
粘り強く継続することは
成功への最低条件である。
私自身、かつての経営の現場で
何度も壁にぶつかり、
それでも食らいつくことで
道が拓けた経験が数多くある。
しかし、
盲目的に「あきらめない」ことが、
時として組織を滅ぼす猛毒になることもある。
その現実から、
経営者は目を逸らしてはならない。
継続は力なり、という。
だが、その継続が
「思考停止」になっていないだろうか。
経営者の真の役割は「決めること」。
それも、「何をやるか」以上に
「何をやめるか」の決断にこそ、
経営の質が凝縮されるのである。
赤字が続く事業、
成長の見込みがないプロジェクト、
あるいは自社の価値観に合わない取引。
これらを
「今までやってきたから」
「担当者の努力があるから」と
ズルズル続けるのは、誠実さではない。
単なる「判断の先送り」に過ぎないのだ。
私が常に伝えているのは、
「始める前に、やめる基準を決めておく」
ということである。
挑戦には常に不確実性が伴う。
だからこそ、感情が高ぶる前に
冷静な「撤退ライン」を引く必要がある。
「半年でこの数値に届かなければ撤退する」
「投資額がここを超えたら即座に止める」
この客観的なルール、
いわば「判断のルールブック」があるからこそ、
経営者は迷いという霧の中でも、
迅速に舵を切ることができるのだ。
本当の「あきらめない」とは、
目指すべき理想やビジョンを
あきらめないことであり、
目の前の「手段」に固執することではない。
うまくいかない手法は潔く捨て、
別の道を探す。
この「切り替えの速さ」こそが、
これからの時代を生き抜く強力な武器になる。
執着を捨て、基準に従って判断する。
それが社員を守り、
会社を存続させるための経営者の覚悟である。
あなたの組織には、今、
「やめるための基準」がありますか?
もしないのであれば、
今すぐそれを言語化すべきである。
判断こそが経営であり、
決断こそが未来をつくる。



