夢と、夢を実現していくプロセス
ゼレンスキー大統領「私には夢がある」を引用 16日、ゼレンスキー大統領が、オンラインによる演説を米議会で行った。 毎日新聞(2022.3.18朝刊)によると、(ゼレンスキー大統領は)「黒人差別解消に取り組んだ指導者キング牧師の有名な言葉『私には夢がある』を引用して、『私ならこう言う。“私には必要がある”。わが国の空を守る必要がある。あなたがたの判断と助けを必要としている。』と述べ、防空システムや戦闘機の供与を求めた。」という。 ゼレンスキー大統領が引用した「私には夢がある」は、1963年8月28日「ワシントン大行進」でのキング牧師の演説の有名な言葉だ。その言葉の前に、キング牧師は群衆(そのほとんどがアフリカ系アメリカ人)に次のように呼びかけている。(以下の翻訳部分は全て、ハフポスト日本版編集部訳)非暴力抵抗 正義という殿堂に通じる熱を帯びた入り口に立つ同胞たちよ。 正当な地位を獲得する過程で、我々は決して不法行為の罪を 犯してはならない。 我々は敵意と憎悪の盃を飲み干すことで、自由への渇きをい やすのは止めよう。 我々は、尊厳と規律を保った高い次元で闘争を行わなくては ならない。 我々の創造性に富んだ抗議を、物理的な暴力へと貶めては ならない。 何度でも何度でも、我々は物理的な力に対して、魂の力で立 ち向かうという威厳ある高みへと登りつめなければならない。 「非暴力という抵抗」といわれるキング牧師の思想が、最もよく現われている部分だろう。このように呼びかけた後で、彼の夢が語られる。その一部を抜き出してみよう。私には夢がある 私には夢がある。いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、 かつての奴隷の子孫たちとかつての奴隷所有者の子孫たち が、兄弟の間柄として同じテーブルにつくという夢が。 私には夢がある。いつの日か、卑劣な人種差別主義者たち がいて、「連邦政府の干渉排除」や「連邦権力の無効化」という 言葉を弄する州知事のいるアラバマ州でさえも、いつの日かそ のアラバマでさえも、黒人の少年少女が白人の少年少女と兄 弟姉妹として手を取り合うようになるという夢が。 キング牧師の夢は、黒人と白人がともに手を取り合って生きる社会だ。だから、それを実現するプロセスは、敵対し暴力の連鎖を産むそれでなく、独立宣言と合衆国憲法の正義に訴える「非暴力という抵抗」でなければならなかったのではないだろうか。この現実から、キング牧師なら 今、プーチン大統領は、嘘のプロパガンダでロシア国民のウクライナ人に対する敵愾心を煽り、「特別軍事作戦」を正当化している。一方、ロシア軍の攻撃を受けて、ウクライナ人はロシア人への憎悪をかきたてられているのが現実だ。ここから、 キング牧師なら、ウクライナ人とロシア人がともに手を取り合って、戦火で荒れたウクライナを復興させていく夢を描くだろうか。 キング牧師なら、中国、台湾、北朝鮮、韓国、日本、アメリカ等々の国が敵対せず、ともに手を取り合ってこの地球に恒久平和をもたらす夢を描くだろうか。 キング牧師なら、武力による脅しや戦争に対して、武力や戦争で応えるのでなく、国際秩序に基づき、威厳と規律を保った高い次元での対応をするだろうか。非暴力という高い次元での抵抗こそが、平和をつくる その答えを、キング牧師に聞くことはできない。しかし、戦争がもたらす無惨な映像に胸が引き裂かれ、平和構築への思いを強くするたびに、非暴力という高い次元での抵抗こそが平和に至るプロセスなのだと、確信している。研究員 池間龍三