絵本「へいわのつくりかた」より

心からの謝罪を

 思いもしなかったことで、人を傷つけてしまうことがある。どんな理由があっても、傷つけてしまったことを心から謝り、相手の傷をいやさなければならない。理由を並べて言い訳したり言い逃れをしたりしようとすれば、相手をさらに傷つけてしまうことになるからだ。

 心理学者は、憎悪を軽減するための謝罪は心からのものでなければならないという。

 日本と隣国の間で、捕虜や住民の虐殺、強制連行、強制徴用、強制労働、従軍慰安婦などの問題がとりあげられ、「こんなに謝っているのに、いつまで謝ればいいのか」という日本側の反応を聞くたびその言葉を思い出す。

 日本の謝罪について、ジャレド・ダイアモンドは「危機と人類」(日本経済新聞出版)で次のように述べている。長くなるが一部をそのまま引用させていただきたい。

日本流の謝罪を信じることなく(ジャレド・ダイアモンド)

 日本がドイツと同様の対応をすれば、中国人や韓国人は真摯さに納得するかもしれない。たとえば、日本の首相が南京を訪れ、中国人が見守る中でひざまずき、戦時中の日本軍の残虐行為への許しを請うてはどうだろうか。日本中にある博物館や記念碑や元捕虜収容所に、戦時中の日本軍の残虐行為を示す写真や詳しい説明を展示してはどうだろうか。日本の児童が国内および南京、サンダカン、バターンなど海外のこうした場所を遠足や修学旅行で定期的に訪れるようにしてはどうだろうか。あるいは、戦争の犠牲者としての日本よりも、戦時中に日本の残虐行為の犠牲となった非日本人を描くことにもっと力を入れてはどうだろうか。こういった活動は今の日本には存在しないし、思い浮かべることすらできないが、ドイツでは同様の活動が広く実行されている。こうした活動が実行されるまで、中国人や韓国人は日本流の謝罪を信じることなく、日本人を憎みつづけるだろう。

謝罪はわれらとわれらの関係づくりの一歩

 非道に気づき恥じれば、それを繰り返す可能性は低くなるという。日本がそのような国家だと認められれば、他国に与える脅威は軽減される。国境を挟んだ敵対関係でなく、国境を超えたわれらとわれらの関係づくりは、恐怖と憎悪の軽減から始まる。謝罪はその一歩だ。

研究員 池間龍三