中年女性の役人は僕の手紙を読み終えたあと
何かを言いたそうな顔で僕を見る。
しかし結局何も言わず、僕の手紙に四角い大き目のハンコを押し
ハンコの空白に僕のサインを求めた。
僕はサインして戻すと
「あとで社会保険庁から手紙が届くから
それを読んでまた来るように」と英語で言われた。
中年女性の役人個人で判断出来るような内容ではなかったのだろう。
しかし手紙を受け取ってもらっただけでも
僕としては良い結果だったと思う。
突っ返されたら打つ手がない。
その後、次は財政局への手紙を作成した。
内容としては同じ感じになるが、
社会保険庁と違うのは
Miss Mが働いていなかった期間に
Miss Mに払ったと申告している給料は
何処にいったのかという点だ。
結果、そのMiss Mに払ったと申告した給料は
そのままMiss Lに払ったことにするほかない。
僕は2年10ヶ月分の給与記録を作り直す。
Miss Mの名前をMiss Lに書き換えていく。
しかしここもそう単純ではなく
必要になるのはMiss Lに書き換えたあと
Miss L自身に2年10ヶ月分の給与記録に
一つ一つサインをしてもらわなくてはならない。
呼び出すのもさすがに悪く、
Miss Lがリトルトウキョウに出勤した時、話すしかなかった。
何処までその給与記録が真実に近いものなのかは
ともかく、ここは全て正直に話すのがいいと思った。
Miss Lには今までのMiss Mの経緯を全て話し、
今回、本当に申し訳ないんだけど、
ここにサインをしてもらえないだろうか。
決して迷惑をかけるようなことはないと約束しますと。
僕ば両手を膝の上に置いて、Miss Lにゆっくりと頭を下げる。
するとMiss Lは『OK,OK』そう言って気軽にサインしてくれた。
本当に理解しているのだろうか。ちょっと不安になったが
マカオ人は皆、謝ったあとの対応は優しいひとばかりだ。
おかげでここまで続けられたような気がする。
お隣の大きな国ではこうはいかなかっただろう。
いや、そこは間違いない。
マカオという国からどんどん離れられなくなっていく。
そして第二関門の財政局宛の英文作成が終わり
次の日、給与記録を持参して財政局に向かった。
2年10ヶ月もの給料を別人と間違えたなんて話を
僕はどんな顔ですればいいのか。
つづく。