今期の「駅弁大会」は既に終わって久しいが、残りあと1回。

前回の続き。

今回は甘いもの。

 

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玉出木村家・パン各種

 

クリームパン(194円/個)

売場には並んでいない。

島の中央に置かれ、頼めば個数分出してくれる。

甘めのカスタードクリームがぎっしり詰まった細長い菓子パン。

トッピングのアーモンドスライスがアクセント。

得てしてクリームをケチり、パンの中の空洞がスカスカになりがちな中にあって、隙間なくクリームを詰める姿勢は立派である。

 

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ロールデニッシュ(りんご)(237円/個)

甘いロールケーキというよりはロールカステラに、薄いパイ生地の皮、粉糖がかかったパン。中身が幾種類かあり、過去には「バナナ」、「オレンジ」、「みかん(オレンジに非ず)」などが来たこともあるが、近年はこの「りんご」に落ち着いたようだ。

酸味が鮮やかな「みかん」や「オレンジ」が印象深い中、この「りんご」は上品な甘さが身上。ちゃんと果肉も入っており、シナモンの味がする。

 

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栗のカスタードメロンパン(280円/個)

私は初めて食べた。

この店のメロンパンといえば、真ん中が空いた向日葵の花に見える「マルガリーテン」というバターの効いたパンを思い浮かべるが、昨年は具なしのオーソソックスなタイプが、今回はクリーム入りが来た。

カスタードは他のパン同様、どっしりと甘く、その上に茶色いマロンペーストが乗った二重構造。

クリームのお蔭で大ぶりのパンも、飽きることなく食べることができる。

 

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ベネティアーナ(ハーフ)(572円/個)

この店の看板商品。

かなり大ぶりのパンだが、中はふわふわと柔らかく、オレンジピールがたくさん練り込んである。

サクサクとしたクッキー生地の皮は、表面にアーモンドが多数埋め込まれ、ふりかけられた粉糖も相俟って、甘い。

何度食べても、最初は中身を手でくり抜くようにした後、最後に皮だけまとめて食べる、そんな食べ方をしている。

お店のInstagramを見ると、チョコレートバージョンもあるようで、一度味わってみたいものである。

今年は大将不在ゆえか、呼び込みが控えめだったが、例年だと、このパンを宣伝する声が飛び交う。その割には大ぶりで、少々値も張るせいか、一番多く持ってきているせいか、いつも最後までこのパンが売れ残っている印象がある。

 

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生ドーナツ(粒あん&栗)(259円/個)

生ドーナツ(イタリアンカスタード)(280円/個)

これらも今回初めて食べた。

何が"生"なのか…と思うが、オーソドックスな揚げドーナツである。

粒あん&栗」のほうは、ご覧のようにきなこパンで、「イタリアンカスタード」のほうは表面が砂糖で覆われ("アイシング"と言うのでしたっけ…?)ている。

揚げたパンはしつこくなるので、昔ほどは食べなくなったが、思っていたよりは油っこい印象はなかった。

又、イタリアンカスタード」のクリームには、洋梨なのか林檎なのかわからなかったが、少ないながらも果肉が認められた。

 

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マロンミルク(324円/個)

以前は「マロンミルク棒」と称していたように、どっしりと細長いパン。

表面は柔らかいクッキー状生地に覆われ、甘い。

そこに3粒栗の渋皮煮が置かれている。

パンもミルク風味の甘くて柔らかいもので、渦巻状に生地が練り込まれている。

 

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雪山パン(702円/個)

何回か前の記事に記したように、今年はぎりぎりで買えた。

出品された中で最も高価である。

言うなれば「玉出版シュトーレン」とでも言うべきパン。

チェリーとレーズン、ヘーゼルナッツが入っており、洋酒は使われていない。

ご覧の通り、粉糖が「これでもか!」というほどまぶされており、切り分けて食べるにせよ、丸かぶりするにせよ、受け皿必須。

さもないと衣服を汚す。

食べる過程で粉糖が零れ落ちるので、袋に集め、他の品のきな粉と共にお湯で溶き、牛乳を入れて飲むと、これまた甘~いきな粉牛乳の出来上がり。

 

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例年食べているチョコまみれの「ウィンナーショコラ」は今回買い逃してしまったが、それも含め、過剰なまでに甘い味付けがこの店の身上。

"甘さ控えめ"とか"ダイエット"とか、そんなことは一時忘れ、嘗て甘さが豊かさの象徴だった時代に思いを馳せて、サービス精神旺盛な甘~いパンを堪能する。大将との会話を楽しみながら。

それがこの店との正しい付き合い方に思える。

…大将、来年は新宿に出てきてや!!

 

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縄文おやき(りんご/あずき)(長野県・小川の庄・おやき村)(200円/個)

「おやき」といえば野沢菜が定番だが、敢えて惣菜系を避け、ここでも甘いフレーバー2種を選択。

あずき」は塩気の効いた甘さ控えめの味で、水気と甘みが少ない素朴な粒あんが嬉しい。

りんご」は隠れた名品。

煮詰められたりんご果肉が舌にトロリと溶け、シナモンの風味がさっぱりとした後味を醸す。

 

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からいも団子(あん入り/あんなし)(各140円/個)(宮崎県・味のくらや)

昨年に続きリピート。

サツマイモを練り込んだ団子にたっぷりときな粉をまぶした品。

あんこは瑞々しい粒あんで、甘すぎないため、目立ち過ぎない。

あんなしは本来のサツマイモ味がより際立ち、さっぱりと上品な甘さが好ましい。

たっぷりとまぶされたきな粉は捨てるのが惜しく、上で触れた玉出木村家の「雪山パン」の粉糖と合わせて、きな粉牛乳にして飲むのが私の"お約束"。

 

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黄娘(918円/円)(宮崎県・味のくらや)

"きむすめ"と言うと、何だか例の牛丼屋の大失言が未だ思い出されるが、本品は黄色い日向夏の皮だけ残して中身をくり抜き、白羊羹を詰め、全体を甘い蜜で覆ったもの。

上から半分に割って、寝かせて縦に切り分ける。

言うなれば玉ねぎを切る要領である。

鮮烈な日向夏の皮は甘さの中に苦みがあり、それを白羊羹の優しい甘みが程よく整える。

”シャブ漬け"ほどではないが、癖になりそうな美味い柑橘系羊羹である。

 

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これにて今回味わった全ての食品に対するレポートを終えた。

 

会期中も、時折、悪天候により輸送が遅れる旨案内が出るのを目にしたが、会期終了後日本列島を襲った"最強寒波"が来る前で、まだ幸いであった。

年々、特に目玉とファンが評する駅弁が来なくなってきており、「その1」で触れたように、今回は遂に米原駅の井筒屋の弁当が姿を消した。

 

原材料費高騰による値上げ傾向は、侵略戦争勃発の影響で更に拍車がかかり、今や2,000円超えは当たり前。3,000円を超えるものさえ出始めた。

 

こうなっては飲食店でちょっと贅沢な食事をするのと変わらない。

ファミレスや安いチェーン店で、1人3,000円分食べようと思ったら、結構な品数になる。

 

昨年までに比べると、新型コロナ禍は特別なことではなくなりつつあるのか、7階会場外だが飲食スペースが復活し、屋上も解放された。

実演ブースの弁当を持ち帰り中に冷めてしまうことなく、百貨店内で食べられるようになったのは大いに歓迎することである。

又、全種類ではないが、ネット予約ができるようになったのは、買う側としては実に有難く、これは今後も是非続けてほしいサービスである。

昨年に比べると、予約指定時間によらず、早めに引取を始めてくれたお蔭で、少なくとも2階の引取コーナーで長蛇の列に並ばされることはなかった。

この階は高級化粧品売り場であり、そこの脇に、駅弁を求めて長い列で待たされるのは、何とも場違いな居心地の悪さを感じたものだった。

それがなくなったのは、百貨店側も、売り場の品位との両立を図ってくれたのかもしれない。

 

一方、実演ブースでも、薄いビニール袋に弁当を入れて渡されるケースが昨年よりも増えた。

紙袋も今や5円とはいえ有料である。

お店独自の手提げビニール袋に入れてくれることは稀になった。

 

屋上で弁当を食べた後も、自宅へ持ち帰って食べた後も、空容器を捨てねばならないが、今や昔懐かしい経木の弁当箱を用いる例は極めて少なく、多くがプラ製容器で、実に嵩張る。

中には側面に化粧箱をあしらい、その中ほどまでしか実際の容量がない、いわば上げ底容器を使用する弁当もあった。

幾ら原材料費高騰とはいえ、見た目だけ立派にしても、容器を食べるわけではないのだから、何の満足も得られない。

”騙された"と感じるだけである。

見てくれだけを装う上げ底容器はコンビニ弁当だけにしてもらいたい。

 

屋上のゴミ箱に溢れかえる弁当のプラ容器を目にするにつけ、レジ袋だけを槍玉に挙げ、例のセクシー野郎が強行した天下の愚策の大いなる矛盾を感じる。

レジ袋はプラごみの象徴かもしれないが、今も肉、魚、持ち帰り食品の容器類はプラスティック製品で溢れかえっている。

地球環境保護とか、プラごみ削減とか、もっともらしい大義名分を振りかざすのなら、何故容器類も規制し、もっと言えば禁止しないのか?

そして何故レジ袋を有料で買えるようにしているのか?

所詮はパフォーマンスである。

SDGsだの何だの言っても、本気で環境問題を考えている政治家などいないと思っている。

それと、この手の庶民の生活感覚を無視した政策には、必ずと言ってよいほど、裏で何らかの利権が蠢いている。

あらかたエコバッグ業者が多額の上納金を収めているのだろう。

 

近頃の世の習いゆえ、京王百貨店をとりたてて批判する積りはないが、セクシー野郎が規制させたのはレジ袋だけで、紙袋を有料化せよとは言わなかった筈だ。

「レジ袋を減らそう」という動機が、レジ袋有料化へとシフトし、ひいてはその流れはレジ袋に限らず、紙袋でも何でも店の袋は有料という流れを生み出してしまった。

紙袋にカネを取るなど、体のいい便乗値上げである。

何のことはない。店屋がそれだけ儲けているのである。サービス低下である。

 

元々世知辛い世の中なのに、益々その傾向に拍車をかけたのが、袋有料化だと思っている。我々庶民は汲汲と息苦しい暮らしを強いられている。

そんな中でも、相変わらず輸送駅弁や玉出のパンには長蛇の列ができ、当初は例年よりも空いていると思っていたが、テレビで紹介されるや大混雑にもなる。マスコミによる誘導に踊らされる。

このイベントを訪れる度に、まだまだ日本は平和で、余力のある人たちが多いのだな…と思う。

 

いつもなら「5ちゃんねる」あたりでも、人気の駅弁が登場するのだが、今回は人気駅弁に長蛇の列ができる傾向が著しく鈍化した印象がある。

既に何度も触れた、ヘッドマーク弁当の「はくつる」や、ゲゲゲの鬼太郎は、中身そのものよりは容器に価値を見出す手合いによる買い占めが招いた"人気"に思える。「はくつる」なぞ、弁当自体よりも高値で、使い古しの容器だけをオークションに出して儲けを目論む輩がいる始末である。

全く食指が動かなかった。

例年、長蛇の列ができる「いかめし」はいつになく不人気のように思えた。相次ぐ値上げにより、量の割に割高感が感じられてしまったのかもしれない。

甘いものの輸送で、"瞬殺"アイテムだった「生信玄餅」は、定番以外の店のものであることと、"生"という殺し文句が効いたこと、稀少性が更なる人気を呼んだように思えた。内容は特別「すごい!」と絶賛するまでには思えなかった。

 

後半、実演ブースで長い列が出来ていたのは、TVで取り上げられたとか、マツコが紹介していたとか言う、ミーハー的動機によるものだろう。

マツコの唐揚げは知らないが、「氏家かきめし」にせよ、「ふたつ星」にせよ、味は折り紙付きで、「ふたつ星」は一見、西九州新幹線部分開業に便乗したキワモノに思えるが、調製元は幾度も優れた牛肉弁当を輩出し続けている店である。

付和雷同的な一過性人気に留まらず、数を減らしつつある"名物駅弁"たちの中にあって、気を吐いてもらいたいものである。

 

お隣の小田急百貨店が、新宿西口再開発の影響で、逸早く店を閉めた。

それに続き、京王百貨店も、再開発~建て替えの報せが舞い込んできた。

数年後、この「駅弁大会」はどうなってしまうのだろうか?

小田急には、道の向こうにハルクがあり、規模は大幅縮小とはいえ百貨店自体が新宿から消えたわけではない。

京王には、ハルクのようなサブ的商業施設はないと思う。

京王百貨店自体、他には聖蹟桜ヶ丘店しかない。

まさか新宿店建て替え中は、聖蹟桜ヶ丘に「駅弁大会」が移るのか?

新宿と多摩郊外では地の利が随分違う。

不便さは衰退を招く。

親会社の京王電鉄にとっては、聖蹟桜ヶ丘まで乗ってくれれば増収になるのかもしれないけれど。

 

以上、最後は随分と個人の主観を交えて勝手なことを述べた。

 

かつての「牛肉対決」を遥かに上回る数の牛肉弁当を味わう機会を得た。

来年は、まだ京王新宿店に再開発の手が及ぶことはないだろう。

5月の連休明けには新型コロナが5類になる。

数年前には”コロナはただの風邪”と言って、ノーマスクを強行して電車に乗り込んだ連中をキ〇ガイと思ったが、今度はその”コロナはただの風邪”にお墨付きが付く。

そんな中、来年の今頃はどういう状況になっているのか、皆目見当がつかない。

「わっ!食べてみたい!!」そう思わせる魅力的な弁当、食べ物に巡り会えることを楽しみに、又、場内で出来立てを味わえる、そして何よりも外出ができる平和な世の中であってくれることを願ってやまない。