前回の続き。

 

うなぎまぶし(豊橋駅)(1,480円)

チラシで見て、「美味しそう!」と思い、Net予約した駅弁。

写真だともっと大きく見えたが、実際は直径13㎝強と、昨今のケーキやバウムクーヘン1ホール程度の大きさ。

しば漬け、菜っ葉が添えられ、白飯には錦糸玉子が一面に敷き詰められている。その上には刻み鰻が一面に置かれ、濃厚な甘辛ダレに纏われた鰻が食欲を増進させる。

弁当なので、ご飯にタレが滲み込ませない役割があるのだろうが、錦糸玉子は余計に思える。

直径20㎝程度は期待していただけに、まず大きさにがっかりしたが、鰻の濃厚さ、上げ底容器でなかったことからすれば、これ位で丁度良いのかもしれない。

容器は経木製の円形を想像させるが、木の色をした薄いプラスティック製であった。

 

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富嶽あしたか牛すき弁当(三島駅)(1,180円)

これは"当たり"であった。

一面にご飯が敷き詰められ、その上に牛すき煮、牛そぼろ煮、残りはしらたきと長ねぎ、しめじ煮。彩のためであろう。梅型の人参、玉子焼きが乗っている。

玉子焼は砂糖入り、牛肉の半分はそぼろだが、「すき焼き弁当」を名乗る他の多くの弁当よりも、圧倒的にしらたきが多く、そのしらたきまですき焼きダレの味が滲みているせいか、ちゃんとすき焼きらしい味がする。

甘辛牛肉を以て「すき焼き」を称しているわけではないのがわかる。

すき焼きの再現性はなかなかのものだ。

濃厚でしつこくなるが、生卵を落としてみたくなる味であった。

 

尚、写真では判りづらいが、弁当箱は全て経木製で、横から見ると逆さ台形をしており、最後までご飯を食べやすい作りになっている。

 

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きつねの鶏めし冬(京都駅)(920円)

前に取り上げた「きつねのへそくり」同様、京都駅弁だが、神戸の淡路屋が調製している駅弁。

小ぶりに見えるが、竹皮を模した紙製折詰の中は炊き込みご飯でぎっしりなので、見かけだけ大ぶりな弁当よりも遥かに食べ応えがある。

 

その炊き込みご飯は油揚げが入ったマイルドな醤油味で、メイン食材は鶏の照焼。焦げ目があるのが嬉しい。そこに鶏つくね焼、結びこんにゃく煮、葱、人参、エリンギなど全て優しい味の煮物が並ぶ。

写真では判りづらいが、左上には三角形の油揚げが置かれ、「きつね」を演出。京の漬物では定番の、すぐきが醤油漬けとして入っているのも京都ぽさに一役買っている。

黒七味という薬味をかければ、マイルド一辺倒だった味に、ピリリと刺激が加わる。

 

見た目は小さいが、意外に量のあるコストパフォーマンスの良い駅弁といえよう。

唯一欠点を挙げるとすると、竹皮を模した紙製容器の弁当箱長手方向の小さな折返しが、ぎっしり詰まったご飯を食べきるのに意外と邪魔になることである。

 

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八角弁当(新大阪駅)(1,250円)

八角弁当」は新大阪から新幹線に乗って東京へ帰ってくる時、かつてよく食べた。私にとっては懐かしい駅弁である。

今回取り上げた中では唯一の幕の内弁当で、その名の由来となる八角形の容器に、俵型おにぎりを模した黒ごまのかかった白飯。

様々なおかずが並ぶ。

珍しいところではイカにウニのペーストを乗せて焼いたもの、そら豆、なます。

昆布巻き、高野豆腐、椎茸、筍、人参、インゲン豆、里芋、小ぶりの海老等全て煮物。あんころ餅か?と訝しげに口に運んでみると、茄子の煮つけだったりする。

中でもメイン食材は鶏肉の柔らかい煮つけ、焼いた赤魚であろう。

赤魚は、「赤魚味噌祐庵焼」とある。

玉子焼は、出し巻で、勿論砂糖なしの関西風。

砂糖入りの甘ったるい玉子焼きが全国的には主流だが、何でシンプルであっさり美味い砂糖抜きの関西風が少数派なのか、全く納得できない。

 

かつて少年が好きなものを指す言葉として、「巨人、大鵬、玉子焼き」というのがあった。

3番目の玉子焼きは、砂糖が入った甘い関東風玉子焼きを指すのだそうである。

大鵬関の現役時代は年代的に合わず、好きも嫌いもないが、今なお関西贔屓の私としては、1番目も3番目もどうしても好きになれない。というよりも、これまでの人生の中で一度たりとも好きだと思ったことがない。

 

この弁当を久しぶりに食べながら、そんなことに思いを馳せた。

 

尚、今回、確か「その1」で言及したと思うが、水了軒という調製元は一度倒産の憂き目に遭い、この「八角弁当」もしばらく消滅していたが、後に他の会社が屋号ごと買い取り、復活させたいわば復刻版である。

当時と何がどう変わり、どう違ったか、或いは変わらないか、細かいところを残念ながら今となってはさっぱり思い出せない。

ただ、側面だけ経木を用いた広々とした八角形の弁当箱にゆとりを以て配されたご飯におかず、そのおかずのさっぱりとした風味が自分の舌に合う。それ位の曖昧な、好意を伴った記憶として印象に残るのみである。

 

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この後、今回唯一2度目の購入となった「ぶりかまめし(富山駅)」を、弁当の"締め"として食べたが、既に取り上げているので繰り返すことは避ける。

大変珍しいことだが、骨まで食べられるぶりかまにあって、噛み切れない硬い骨が入っていたことだけ、折角なので触れておきたい。

 

これで今回の弁当は全て終了。

 

次回は甘いもの。