「夜と霧」


この世界的に有名な著作は、

作者のビクトール・E・フランクルが、

アウシュビッツ(ナチス強制収容所)

での体験をつづったもの。


しかし、過酷な体験を生き抜いた記録だけ、

と言うわけではありません。


半世紀以上経っても、

世界中で読まれ

新鮮な輝きを失わないのは、


この作品が一手記に留まらず、

優れた文学、心理学、哲学書であるからです。


フランクル博士は、

心理学者として、この体験のあと、

フランクル心理学、

ロゴセラピーで、勢力的に活躍されますが、


その元には、

この作品の忘れがたい一節が

あるのでしょう。


「生きることからなにを期待するかではなく、


……生きることが、

わたしたちからなにを期待しているかが問題」


この一説は、

フランクル心理学の珠玉のような

言葉です。


さらに、フランクル心理学では、

人間が実現できる3つの価値を

言っています。


それは、


創造価値体験価値態度価値


です。


中でも、重要なのが、

態度価値。


人は一生のうちに

さまざまな体験をします。


苦しいこと、楽しいこと、

さまざま起こってきます。


しかし、どんな過酷な状況下にあっても、

態度価値は、

人間がその状況を受け止める態度によって

実現される価値なのです。


さまざまな苦しみにより、

活動の自由(創造価値)がなくなり、

楽しみの自由(体験価値)のなくなったとしても、

最後には、

その運命を受け止める態度を決める自由

残っている。


それこそが、態度価値だと。。


人として、苦しみの極限である、

収容所という場を借りてこそ、

解き明かされた人間洞察ではないでしょうか。


フランクルが

収容所で接した人々がとった

さまざまな態度。


最後まで尊厳を捨てなかった

人々が実現した態度、

その態度こそが、一番最後の価値、


態度価値として、

フランクルは重視したのでしょう。


私達は、ふだん、

生死に関わる極限状態の困難に

遭遇することは多くはないと思います。


しかし、人生にシビアな出来事は

起こってくるもの。


そんなときにどんな態度をとるのか?

それによって、

態度価値が実践できるのでしょう。


そう思うと、日々

この価値を実践できる場があり、

日々積み重ねられる徳とも言えます。


ところで、若い頃の私は、

「夜と霧」と言う作品は、

できれば読みたくない、

そんな風に思っていました。


しかし、今は・・・

読んで良かった、


素晴らしい気づきを与えてくれる

作品なのです。