今日(日付変わって昨日)は雪組新人公演を拝見しました。
といっても、新人公演のチケットはそう易々と手に入るものではありません。
なんと、大好きな作家 玉岡かおる先生にお誘いいただいたのです。
嬉しい!!!
新人公演を客席に座って生で見られる喜びと、
玉岡先生と一緒に観劇できる喜び、Wのワクワクが止まらない状態でした。
新人公演を拝見するのはいつぶりのことか。
ずっと応援させていただいていた 星組の隼玲央くんが退団して以来見ていないので、
3年ぶりということになるのかしら。
とはいえそれも星組のこと。雪組の新人公演って本当にいつぶりかわからないです。
客席に配られている新公パンフレットを見てびっくり。
主演の蒼波黎也さんって、メイク顔が彩風咲奈さんとそっくりに見える!
⚫︎アントワネット:白綺華
初ヒロイン。
パリオペラ座の仮面舞踏会のシーンで初めて顔を出した瞬間から
歴代アントワネットに劣らない王妃ぶりでした。
ただ、最初の頃はちょっとセリフの声が幼すぎるかな、と思ったのですが、
それはアントワネットとしての未熟さを表したものだったようで、
場面を経るに従って、人間として成長していく様子がわかりました。
特に、チュイルリー宮殿あたりからは、切々とした心情が胸に迫り、
もうちょっと早く王妃としての自覚ができていれば、彼女の運命は違うものになったのだろうか、
と思わざるを得ませんでした。
ちょうどパリオリンピックの開会式でアントワネットと思しきドレス姿の生首を見た後だけに、
余計にそう思ったのです。
最後に、断頭台に向かうため長かった髪の毛をおかっぱに切られ、
質素なドレス姿になった白綺さんが とても美しく見えたのに驚きました。
これまで色々なアントワネット様を見てきましたが、
この場面でここまで綺麗に見えたのは初めてかも。
命の危険を顧みず助けに現れたフェルゼンをも退け、
死を選んだアントワネットの覚悟が見えましたわ。
ただ、断頭台に続く階段に見立てた大階段に敷いてある白い布が、結構あちこちでたるんでいて、
足を引っ掛けて転んでしまうのではないかとヒヤヒヤしました。
あの布は本公演でもあんなにシワシワなの?心臓に悪いですわ。
⚫︎オスカル:紀城ゆりや
綺麗なオスカル様、ちょっと女性味が強いように見えました。
私がこれまで見たオスカルでいうと、星組 大輝ゆうさんに似ているように感じましたね。
フェルゼン編のオスカルは、本来積み上げていくべき芝居が、かなり省略されます。
具体的にいうと、近衛隊隊長から衛兵隊隊長に転属する際に、
荒くれ者の衛兵隊員の心を掴んでいく部分や、
幼馴染ではあるものの身分違いのアンドレと相思相愛になるまでの過程が
大幅カットされております。
特にフェルゼンに憧れ愛を感じてたはずのオスカルが、アンドレの愛に気がつくきっかけが
フェルゼンからの手紙に変わっていたのにはびっくり仰天。
原作ファンから見ると不自然極まりない心の変化を、様式美で乗り切った感じ。
これは演者の責任ではなく、演出の問題ですし、
時間的にも辻褄を合わせるためにもこれしかなかったのだと納得しております。
紀城さんはバスティーユ襲撃場面での瞳の輝きがすごかったです。
「アンドレ、アンドレ、お前はもういないのか」のセリフも良かった。
⚫︎アンドレ:華世京
フェルゼン編ではアンドレも結構辛い。
目が見えなくなる理由を全部セリフで説明しないといけないんです。
オスカル毒殺未遂シーンもカットだし。
とはいえ、華世さんは「蒼穹の昴」の新人公演で主演を果たしているほどの逸材。
安定感抜群のアンドレでした。
オスカルと相思相愛になり「愛あればこそ」を歌った後、
オスカルとキスシーンがあるのですが、顔を近づけている途中くらいで暗転、
っていうのが萌えました。(すみません、ヘンタイ全開です)
⚫︎ルイ16世:希翠那音
国王陛下なのだから当たり前ですが、品のある落ち着いた佇まいでした。
レモンちゃん(宝純子)のルイ16世に似ている感じ。
子どもの頃は、ルイ16世が王妃とフェルゼンの関係に気が付きながらも見逃し許すのが
理解しがたかったのだけれど、今ルイ16世を見ると、なんとも言えない悲しみを覚えます。
そしてこの優しさに気がついたアントワネットが心を入れ替える流れにも
納得できるようになりました。
今回一つだけあれ?と思ったのは、カツラが茶色だったこと。
今まで見たルイ16世は白っぽい(シルバー?)のカツラだったともうのだけれど。
あとは、シーンなど気になった部分をピックアップしますね。
新人公演に限らない演出に関するツッコミも入ると思いますがご容赦ください。
⚫︎影ソロ
どの場面だったか、記憶があいまいですが、影ソロでめちゃくちゃ美声の方がおられました。
どなたなのかしら?
⚫︎ジェローデルについて
私は毎回思うのですが、フェルゼン編ではジェローデルが便利屋にされているのが不憫です。
実は私、『ベルサイユのばら』に出てくる殿方で一番好きなのがジェローデルなのですよ。
根っからの貴族にして、オスカルに熱い愛を持っているジェローデル。
なのに、今回の演出ではジェローデルの最も良い場面、オスカルへの愛の告白もないし、
オスカルが人民側に寝返ったあと、諌めるシーンもない。
「あなたが不幸になれば私もまたこの世で最も不幸な人間になるからです」
数々のベルばら名言の中で一際泣けるジェローデルのこのセリフ!!もちろんその場面もありません。
撃たれたアンドレの元に行こうとするのをベルナールが止めていました。
これって前からベルナールでしたっけ?ジェローデルが止めていたと記憶しているのですが。
一番不満なのは、なんで、ジェローデルがスェーデンにフェルゼンを迎えに行くのかということ。
原作では絶対にあり得ないと思うんだけど、植田紳爾先生の身になって考えると、
登場人物の中でフェルゼンに知らせる人間が必要となった時、
ジェローデルしかいなかったんだろうなと思わざるを得ません。
⚫︎夢幻(フェルゼンとアントワネットの愛のシーン)
ピンク!ピンク!ピンク!
今回の公演ポスターのイメージ通りの場面です。
トウシューズ姿のバラの精が二人、上手下手から出てくると舞台中央には、
どどーんとピンクの薔薇の蕾が。
嫌な予感、あれが開いてフェルゼンとアントワネットが出てくるのか?!
予想通りでした。この薔薇のオブジェの出来栄えが微妙で、
下手をすると下品に見えそうなスレスレな感じなのが微妙でした。
(私個人の感想です。私の邪な気持ちがそう見せるだけなのかも)
⚫︎第二部 プロローグB
革命の市民達のダンス。これって多分、令和のベルばら独自のシーンですよね?
黒っぽい衣装を着たシトワイヤン、シトワイエンヌの激しいダンスです。
多分本公演ではそんなことはないと思うのだけれど、
踊っているシトワイヤンの中に死んだはずのアンドレ(華世京)発見。
おお、アンドレ、輪廻転生が早いナ(笑)。
私は気が付きませんでしたが、死んだはずのオスカルも踊っていたそうです。
少人数の新人公演ならではですね。
そしてこのダンスの直前のロザリーとベルナールの会話に、客席で密かに身悶えした私。
というのも、ベルナールの現在の立ち位置というのでしょうか、
新聞記者だったベルナールが現在は監獄の看守をしていることを
ロザリーとベルナール自身がセリフで説明するんです。
これは植田紳爾先生の作品では時々見かける演出。
本人同士がそんな会話するのか?と身をよじってしまったというわけ。
⚫︎スウェーデン王宮
アントワネットとの不倫がバレて、これ以上スウェーデンの恥になることをしないよう軟禁されていたフェルゼンが、国王の誕生日にことよせて宮殿に赴き、どさくさに紛れて脱出しようとする計画。
国王陛下をダシに使うとは、なんという不遜な輩なんだ、フェルゼンは。
そしてフェルゼン編でいつもびっくりするのは、なぜかグスタフ国王が物分かりが良くて、
フェルゼンに「行けー!!」とお命じなさること。
なんでやねん!国王陛下がそんなこと言うのかな?といつも心の中でツッコミを入れてしまいます。
今日もツッコミました。
⚫︎駆けろペガサスの如く
国境沿いで人々がルイ16世の処刑について話しているのを聞いたフェルゼンが
「王妃様だけでもお助けする!!」と宣言すると、カーテンが開いて馬車が登場。
なんと手回しのいいこと。フェルゼンはどこで馬車を調達したのか?!
そしてジェローデルは置いてけぼりなの?どうして馬車に乗せてあげないのか?!謎ですよ。
この馬車のシーン、映像技術の発達により、初演と比べると森を抜けて走る馬車の感じが
とてもよく表現できるようになったのには感慨深いものがありました。
このように、フェルゼン編は特にツッコミどころ満載。
今まで宝塚歌劇団の『ベルサイユのばら』を見ていて、こういう原作にない矛盾点が
気になっていた時期もあったのですが、今日はツッコミを入れながらも
「これはこれでいいねん」と思える自分がいました。
加えて思ったのは、宝塚歌劇団における『ベルサイユのばら』は古典に分類される、
歌舞伎なんだなということ。
会話なのに相手の目を見ず、正面を向いて言い切るフェルゼンは見得を切っているのですね。
他の人のセリフもそう。「少しも早く!」「このオスカル(このアンドレ)」など、大仰なセリフも多々あり、ナチュラルな会話ではありません。
だけど、あのコスチュームでナチュラルな芝居をしたら、逆に変かも。
歌舞伎でいいのだと思います。様式美で。
私が今回、「ベルサイユのばら」を全面的に受け入れる気持ちになったのは、
雪組新公メンバーの実力が高く、ハラハラせずにまるで本公演の如く見ることができたおかげかもしれません。雪組の将来は明るいね。
このあと本公演も拝見する予定です。
楽しみ。
おまけ
今回お誘いくださった玉岡かおる先生とは、大劇場ロビーで待ち合わせしました。
遠くからでも先生のお姿はすぐ目に飛び込んできましたよ。
お帽子をかぶっておられて、避暑地の貴婦人みたいに美しくて一際目立っておられたんですもの。
客席についてからお互いに写真を撮り合ったのですが、お別れしてから「あ!ツーショットをお願いしなかった」。
せめて、玉岡先生の全身のお写真を撮らなかったことは痛恨の極み。
でもね、先生と一緒に観劇することだけで舞い上がってしまって、それ以上のことは思いもつかなかったのです。
観劇後、駅に向かいながら舞台の感想をああでもないこうでもないと語り合う楽しさよ。
先生と私は男役さんの好みのタイプが違うことを発見しましたよ。
また、ベルばら歌舞伎説で意気投合。
オスカル編でオスカルがクレーンのペガサスに乗って客席に出てくる演出があるけれど、
いっそのことスーパー歌舞伎のようにペガサスごと宙乗りにしたらどうだろう
ということで意見が一致しました。
もちろん宝塚には天井にそういう装置がないし、最後、ペガサスごとどこにハケるのか、
考えると無理っぽいですけど、想像すると楽しい。
話題は新人公演のことだけではなく、劇団四季のこと、OSK日本歌劇団のこと、
そして先生がご出演になる文士劇「放課後」のこと……と広がりました。
また、先生は作家目線でも舞台をご覧になっています。
歌舞伎に近くなった『ベルサイユのばら』をご覧になって、
「作品が古典になる程長い時間愛され続けるにはどうしたらいいのかと考える」とおっしゃっていました。
すごい!日頃から全てのことをご自身の作品に活かす視点をお持ちなのだわ。
本当に貴重な舞台を拝見できた上に、楽しいひと時をありがとうございました!
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