本日2回目の更新です。
花組『アルカンシェル 〜パリに架かる虹〜』観劇
本日、宝塚大劇場で花組『アルカンシェル 〜パリに架かる虹〜』を観劇しました。
花組トップコンビのサヨナラ公演、チケットが取れるか心配でしたが、
本日の11時公演は宝塚友の会優先公演で、2階サブセンターブロックの通路ぎわという、
舞台全体が見やすいお席を取ることができました。
また、宝塚友の会優先公演ということで、公演後に再び緞帳があいて、
トップスター柚香光さんのご挨拶までついていて、とってもラッキーでした。
気がつけば明日が大千秋楽ということで、
終演後はあちこちで、啜り泣く声が聞こえ、涙を拭う方のお姿が見受けられました。
ファンの皆さんが惜しむのも当然。
柚香さんは、とても立派で堂々と、そして力みなく演じておられ、
有終の美ってこういうことなんだなと感じましたよ。
では感想の前に初日映像を見ていきましょう。
舞台は1940年のフランス。
幕が開くと、そこはパリにあるミュージック・ホール「アルカンシェル・ド・パリ(パリの虹)」。
華やかなショーが繰り広げられ楽しんだのも束の間、すぐにナチス・ドイツが侵攻してきて、ほとんど抵抗せずフランスはドイツにパリを占領させてしまうのだった。
戦えば多くの人命が失われ、街も傷つく、といった理由で。
「アルカンシェル・ド・パリ」の演出家と振付師は共にユダヤ系だったので、すぐに亡命を決意。
残された団員の中から、看板歌手のカトリーヌが演出を、天才ダンサーのマルセルが振り付けを担当し、占領下でも公演を続けていくことになる……
(花組『アルカンシェル』の出だしを私なりに紹介しました)
天才ダンサー マルセルがトップスター柚香光さん、看板歌手カトリーヌがトップ娘役 星風まどかさんです。
二人はどちらもスターで、得意なジャンルが違うし目指すものも違うので、最初は理解し合えず衝突することも多いのですが、ドイツ占領下で協力して公演を続けるうちに互いを尊敬するようになり、恋に発展していくという流れ。
よくあるパターンと言えるかもしれませんが、ただただ相手が好き、愛しているというのではなく、お互いの仕事や夢に対してリスペクトしあっていること、遠く離れても互いを信じ、お互いに今できることを一生懸命にやり遂げるというあたり、昭和の宝塚歌劇では見ることがなかったように思います。
多分それは、女性の生き方の変化によるものではないかしら。
そしてそれが、今のトップコンビニよく似合っていて”愛よ夢よ”だけではない
新しい宝塚歌劇の恋愛ドラマなのだと思いました。
占領下のパリでは、それまで掲げられたいたパリ市の旗が下ろされ、代わりにハーケンクロイツの旗が掲げられていきます。
その際、パリ市の旗に書かれたラテン語「たゆたうとも 沈まず」という言葉が紹介され、歌われるのですが、私はその歌詞を聞いて、これはまさに今の宝塚歌劇のことではないのかと思いました。
大きな波に揺られ船は大きくたゆたっていますが、決して沈まない、いや、沈んではいけない、沈めてはいけないという、演出家小池修一郎先生のエールではないかと。
(帰宅してプログラムを読んでみると、作・演出の小池修一郎先生ご自身、作者の言葉としてその旨書いておられました)
この言葉と歌詞が出てくるのは、まだ物語が始まったばかりの段階でしたが、思わず涙してしまったのでした。
この舞台は、ナチス・ドイツの占領下、ということで、ドイツ将校役の人たちは「ハイルヒットラー」と敬礼をします。何度もやります。
それに関して、否定的なご意見があることはSNSを通して知っていました。
でもあれは時代考証的に、あって然るべきセリフと動きではないかと思いました。
もちろん嫌悪感を覚える人もおられるでしょうが、ないと逆に変でしょう。
ちょっと話がそれますが、最近のディズニー映画がポリコレを重視しすぎて過去がめちゃくちゃになっているのが見受けられます。
言葉がきつすぎるかも知れないけれど、歴史を改竄していると言えるくらい。
だから小池先生のあの場面は私はあっても良いと感じました。
あのセリフと敬礼があるからと言って、ナチスを擁護しているわけではないし、ヒットラーに敬意を示しているわけではない。まして、出演者には何も罪はないと思っています。
個々の感想
では覚えている範囲で個々の感想を。
芸名には敬称略で失礼します。
●柚香光:マルセル
花組はコロナ禍で、見られるはずだった公演が中止になったことが多く、柚香さんのトップ姿は4作しか見ていない気がします。
私は柚香さんの衣装ではスーツ姿が一番好きなので、見納めが『アルカンシェル』だったことにすごく満足しています。
ニジンスキーの再来と言われ、いつかアメリカに行くことを夢見ているダンサー、柚香さんがなんの無理もなく自然に演じているように見えました。二番手時代は背伸びしているように見える役もありました。
こうして余裕を持って、生き生きと役本人として舞台の真ん中に立てるようになった時、宝塚歌劇の男役さんは辞めていくんですね。
惜しいんです。すごく惜しい。まだまだ見ていたい。
だけど、だからこそ良いのかもしれません。
『ラルカンシェル』のお芝居の幕切れ、ホリゾントに描かれたエッフェル塔にかかる虹。
すると舞台にファーっとドライアイスの煙が流れてくるのが2階席からはよく見えます。
「え。なんで、ファンタジーみたいにここでドライアイス?」と思ったら、ドライアイスの白い煙の上に、照明がもう一つの虹をかけるのです。ホリゾントと本舞台にかかるダブルレインボー。
そしてフィナーレでも、大きな虹の手前にもう一つ虹がかけられダブルレインボー完成。
柚香光さんのこれからにも素敵な虹がかかりますように。
●星風まどか:カトリーヌ
私の中の星風さんのイメージにピッタリ。星風さんには気の強い、芯のしっかりした女性が似合うと思っていました。
清純とはまた違う星風さんの「潔い」感じがカトリーヌにピッタリ。
途中で、銃を天井に向けて撃つシーンがあるのですが、娘役さんのそんな場面見たことがなくて、男前!!と思いましたよ。
お疲れ様でした。
●フリードリッヒ・アドラー:永久輝せあ
●アネット:星空美咲
次期花組トップコンビ。
ナチス・ドイツの文化統制官で演劇担当のフリードリッヒと、アルカンシェル・ド・パリの歌手アネット。
フリードリッヒは舞台芸術に造形があり、純粋で、純情。いかがわしいドイツ兵からアネットを守ったことがきっかけでアネットに恋をする。アネットもまた…という流れで、次のトップコンビの恋愛が描かれていました。
ほほー、次はこういう感じなんだな、というプレお披露目で、永久輝さんの軍服姿と、純情な青年ぶりを愛でましたワ。
●綺城ひか理:ジョルジュ
アルカンシェル・ド・パリのスター歌手でカトリーヌの恋人。
途中で、カトリーヌがマルセルに心変わりしたと思い込み、やさぐれ、舞台を放棄。
おまけになぜかナチス・ドイツの文化統制官に心酔してしまい、ナチス入りしてしまう。
そんなんやから彼女に振られるんだぞ、という役。
黒っぽいナチスの制服が長身細身によく似合っていました。かっこいいけど性格は情けないヤツなのを上手に演じておられました。
最後の最後にものすごく重要なポイントを演じておられるのに、私は迂闊にも別のところを見ていて、ことが起こってから「え?誰が?誰がやったの?あ、君か!」と。
悪になりきれないジョルジュが好きです。
●聖乃あすか:イヴ・ゴーシェ
現代のミュージックホールの歌手であり、物語の語り部。
登場人物の一人のひ孫にあたり、父親から聞いた話を語る体で、物語の説明をし、進行をしてくれるいわゆる狂言まわしの役です。物語のどこにも所属しない役は、私としてはちょっと物足りない。
次は二番手になるのでしょうか。トップさんとの熱い共演を楽しみにしています。
●一樹千尋:ぺぺ
●湖春ひめ花:少年イヴ
ぺぺは聖乃あすかさん演じるイヴのひいおじいさんにあたります。
私は湖春さんが聖乃さんのお父さんだと思っていたのですが、プログラムには少年イヴって書いています。まさか、聖乃さんの子ども時代ではないですよね?年代が違う気がするのだけど。
まぁいいか。お二人はコメディアンとアコーディオンを弾く少年として、大事な場面で脚光をあびるとても良い役。
途中、一樹さんが収容所で亡くなってしまうのかと心配しましたよ。
考えてみると、このドラマは最小限の血しか流れません。
もっと悲惨に描くこともできたのでしょうけど、私はこれくらいマイルドな方が嬉しいです。
●輝月ゆうま:コンラート・バルツアー
ナチス・ドイツの文化統制官。後にヒトラーの親衛隊SSの大尉に昇格。
カトリーヌの才能と魅力を気に入ってしまい、立場を利用して我が物にしようとする、この作品で最も嫌なヤツです。
昭和時代のファンの方にわかりやすくいうなら、上級生になってからのソルーナさん(磯野千尋)が演じるような役どころですわ。
でもね、私はここ数年、輝月さんには心撃ち抜かれっぱなしなんです。
なんなの この色香は。
とことん嫌なヤツなのに、輝月さんの佇まいやシニカルな笑顔にキュンキュン。
こういう中年男性は現実世界にいないと思うわ。
いや、いたら困る。どうしようもなく惹かれてしまうじゃないですか。
ちなみに、とっても嫌なヤツなのですが、彼の立場に立てば、十分成立するのです。彼の価値観だったら、こういう生き方になるよねと。コンラートに限らず、この作品の登場人物は皆、それぞれの人生を実際に歩んでいる感じが舞台から滲み出ていて素晴らしいと思いました。
好きな場面や衣装について
パリのミュージック・ホールが舞台なので、幕開き早々ミラーボールが回ってレビューが繰り広げられ、うっとり。
ナチス・ドイツの方針による、クラシカルなナンバーや、禁止されていたが需要はあって計画されたジャズの舞台、また、ドイツがクラシック以外で許していたラテンナンバーなど、
色々なテイストのショーが繰り広げられる楽しみがありました。
フィナーレ冒頭、銀橋を渡りながら「たゆたえども沈まず」を歌う永久輝せあさんのシルバーの衣装が豪華でした。
ロケットのラインダンスは色々なバリエーションのピックアップが楽しい。
鈴懸三由岐先生の振り付けです。足上げの連続回数は19回だったかな?数え違いでなければ。
柚香さんが娘役を従えて大階段で踊るフィナーレCでは、アレンジされた「ラ・ビアン・ローズ」に合わせるかのように、衣装はローズ色。
しかも、娘役さんのドレスは、まるで薔薇の蕾を逆さまにしたように見える模様と形で、とても素敵でした。あのドレス、着てみたい。私にはサイズ的に入らないし、もし着られたとしても薔薇の蕾ではなく子豚さんみたいに見えるだろうけどさ。
パレードでは、2番手永久輝せあさんもかなり大きめの羽を背負っていまして、トップスターの羽はどんなのだろうと期待が膨らみました。形や構成自体は目新しくありませんが、孔雀の羽と、うっすら虹色に見える色合いが綺麗。
全体的に私には大好きな作品でしたよ。
柚香光さんご挨拶
冒頭にも書きましたが、11時公演は宝塚友の会優先公演ということで、トップスターのご挨拶付き。嬉しい。
挨拶の文言自体は、まあ定型と言いますか、別に新しいことはなかったのですが、途中から柚香さんがふにゃふにゃになっていったのが意外でした。
何があったかというと、1階下手がわの客席で、どなたかが手を振ったみたいなんですね。
そしたら挨拶途中の柚香さんが「あ、ありがとうございます。ふふふ」と、そちらに向かって手を振り返したんです。
そしてご挨拶を続けると、今度は1階上手側の客席の人が手を振ったみたいで「あ、ありがとうございます」とまたそっちに向かって手を振り返しました。
それを見たら、あちらでもこちらでも手を振るでしょ?私も手を振っちゃいました。
柚香さんはおそらくあらかじめ覚えていたであろうご挨拶を喋りながらも、「うふふ」「ありがとう」「ありがとうございます」と、あちこちに手を振ってくださる。
クールに見える柚香さんがこんなにフニフニしながらあっちこっちに手を振って応える方だったとは。
意外でした。
明日は千秋楽。
私は仕事で配信も拝見できませんが、どうぞよき1日になりますように。
おまけ
キャトルレーヴに置いてあった柚香さんの等身大(?)パネル。
「撮影OK」と記載していましたので、撮影したものをAI合成してみました。
元の写真はこれね。
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