ミステリ時代小説 米澤穂信『黒牢城』 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー

本日2回目の更新です。

 

米澤穂信さんの『黒牢城』を読了しました。

ミステリとしても時代小説としても読み応えがあり、第166回 直木賞と、第12回 山田風太郎賞をW受賞したのも頷けました。

 

 

 

本能寺の変の4年前、荒木村重は織田信長に反旗を翻し、有岡城に立て籠った。

 

自分に逆らうものはことごとく誅する織田信長と違い、荒木村重は人質や裏切り者を生かしていた。

織田方の軍師である黒田官兵衛もその一人で、降伏を促しに来て捉えられた官兵衛は城の地下深く、日のささぬ牢屋に閉じ込められることとなった。

このようなことは戦国の習いに背くことで、村重が何を考えているのか理解できない配下のものには、うっすらと不満や不信が生まれていた。

 

人心が一つにまとまらない状態で籠城している有岡城内で、不可思議なことが起こり始める。

皆の動揺を防ごうと、荒木村重は謎解きに挑むが、わからない。

 

荒木村重はついに地下牢へと降りていった。頭のキレる官兵衛に謎解きを依頼するために……

(米澤穂信さんの『黒牢城』の出だしを私なりにまとめました)

 

歴史に弱い私はまず、有岡城ってどこのお城だろうと思いました。

荒木村重がお城に入るまでは「伊丹氏が収める伊丹城だった」と知って、びっくり。

JR伊丹駅の西側に石垣が残っているのは以前から知っていました。

 

黒田官兵衛が囚われの身だったことも一応知ってはおりました。

でもその地が伊丹市のことだったとは!

多分、歴史をちゃんと知っておられる方には呆れられると思います。

 

小説の舞台が、自分のよく知っている場所だったことがわかり、俄然、興味深く読むことができました。

 

この小説は歴史小説であり、謎解き小説でもあります。

城内で起こる不可思議な事件。

誰も、犯人らしき人が入ってくるところも出ていくところも見ていません。

誰が、どのようにして行なったのか?

謎を解くのは城主である荒木村重で、関係者全員に事情聴取をするものの、考えあぐねてしまいます。

とはいえ、謎をそのままにしておくわけにはいきません。

織田信長という大きな敵に向かっている時に、城内にモヤモヤした気分を残しておいては士気が下がります。

事件を起こした者を罰するなり許すなり、何らかの処置をしなくては示しがつきません。

ましてや「わかっていない」ことが明らかになったら人心が離れてしまいます。

困った村重は囚われの身である小寺(黒田)官兵衛に密かに会いに行くのです。

 

いくら切れ者だからと言って、自分がとらえた官兵衛にヒントをもらって謎を解いていくなんて、びっくりです。敵味方がタッグを組んでことにあたる、そのあたりがとても新鮮。

そして官兵衛はズバリ犯人を言い当てたり、犯行の手法を明かしません。

読者は村重と一緒になって、官兵衛の言葉から真相を推理する楽しみを味わうことになります。

面白い。

 

二つ、三つと謎をといていき、荒木村重と黒田官兵衛が名探偵ホームズとワトスンくんのような関係になったのかと思った時、全てをひっくり返すことが明かされます。

軍師 官兵衛がそんなお人好しなわけがない、ということが。

 

また、荒木村重の心理描写も考えさせられます。

荒木村重は、池田氏に支えていましたが、のちに反旗を翻し織田信長に支えることになります。

そして今度は織田信長に対して謀反を起こし、籠城することになったのですが、自分自身の置かれている立場や城内に流れる空気感が、自らが追い落とした池田氏の最後と似ていることに気がつくのです。

それは簡単に言ってしまえば「因果はめぐる」ということなのでしょうが、荒木村重の心にひんやりしたものがよぎるあたりに、人間ドラマとしての面白さを感じました。

 

誰に味方するのか、誰と組むのか、誰と袂を分つのか。

一つ見誤ると自分だけではなく、一族郎党が犠牲になる、戦国時代とは大変な時代だったのだとしみじみ感じさせる小説でした。

 

 

 

 

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