あらゆる意味で恐ろしい 福田ますみ『でっちあげ』 | 茶々吉24時 ー着物と歌劇とわんにゃんとー

衝撃のノンフィクションと銘打たれた

福田ますみさんの『でっちあげ』を読みました。

福岡県で起こった事件を追ったもので、

第六回新潮ドキュメント賞を受賞しています。

 

 

平成15年、福岡市の公立小学校の男性教諭による

特定の生徒への体罰・暴言などが朝日新聞により報道されます。

 

なんでも、祖父がアメリカ人である少年に対して、

「血が混じっているから穢れている」

などと人種差別的な発言をしただけではなく、

終わりの会で

「10秒以内に帰り支度をしろ」と指示。

それが出来ないと、罰を与えるという。

罰は複数あり、どれが良いかは少年に選ばせる。

「ピノキオが良いか、ミッキーマウスが良いか?」

ピノキオは鼻をつまんで振り回される罰、

ミッキーマウスは両耳を掴んで持ち上げられる罰。

(実際にはもっと種類があります)

そんなことが連日行われていたというのだ。

 

すぐに朝日新聞以外の週刊誌やワイドショーで

大きく取り上げられることとなり、

この教師は、糾弾されることになります。

 

しかしこの教師は、なかなか自分の非を認めようとしません。

業を煮やした被害少年の両親が、

教師と福岡市を相手取り、裁判を起こします。

 

この事件は当時大きく報道されていたのでしょうが、

私は詳細を覚えていませんでした。

だから、全く新しい事件であるかのように、

先入観なく読み進めることになりました。

 

冒頭の朝日新聞の当時の報道を読んだ時には、

なんという教師だろうかと、

息苦しいほどの怒りを感じました。

 

ところが、読み進めるにつれて

別の意味で息苦しいほどの怒りがこみ上げてきました。

 

普通の裁判であれば、被告人である「非道な」教師の

悪行が暴かれていくはずなのですが、

そうはならなかったのです。

 

むしろ、本当の被害者は誰なのか、

教育の現場が抱える問題点と、

責任者の事なかれ主義、

またちゃんとした調査なしに思い込みで報道する

メディアの責任など、いろいろなことが浮き彫りになってきます。

だんだん当事者に感情移入してしまい、

途中で読むのが嫌になるくらい、恐ろしさを感じました。

 

これは痴漢などの加害者のでっちあげにも言えることですが、

本当に無実なのであれば、

「早く認めたほうが罪は軽くなる」

などという言葉に騙されてはいけないのだなと、

心底思いました。

軽微な罪を認めてしまって、

今の苦しさから逃れようとしたことが

自分の首をしめる結果になるからです。

本当に恐ろしいです。

 

この冤罪は誰が作ったのか。

モンスターペアレンツか、

ことを荒立てずうちわで収めようとした校長か、

中途半端に譲歩してしまった当事者か、

あるいはろくに周辺調査もせず、

センセーショナルに報道したマスコミなのか。

 

大手新聞社だから、名の通ったテレビ局だからと、

報道を鵜呑みにしてはいけないのだなと思いました。

 

 

 

 

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