タイトルにぎょっとして、読まずにはいられなかった

山田詠美さんの『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』。

 

 

 

お互いの子どもを連れて再婚した夫婦。

そこに新たな子どもが生まれ、四人兄弟となる。

上から順に、

母親の連れ子の澄生、真澄、

父親の連れ子の創太、

そして二人の間に生まれた千絵だ。

ママは子どもから見ても美しく、

家の中をピカピカに磨いている。

澄生と真澄は本当の父親ではない人のことを

嫌いではない。

だがなぜか「パパ」とは呼びにくく、

「マコパパ」と呼ぶことでバランスを保っていた。

創太は新しいママが大好きになり、

いつもママにまとわりついている。

末っ子の千絵だけは、気を使うこともなく、

無邪気に過ごしていた。

どこから見ても、幸せな家族だった。

長男の澄生が亡くなるまでは。

澄生はまだ17歳だというのに、ある日死んでしまったのだ。

雷にうたれて。

それを機に、ママがアルコールに溺れるようになる。

子どもたちは精一杯「幸せな家庭」を守ろうとするが……。

(山田詠美『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』の

 序盤をまとめました。

 澄生の死と死の原因はかなり早い段階で明かされるので

 紹介しても問題ないと判断しました)

 

この小説は視点の違う4つの短編から成り立っています。

最初は、真澄の視点。

次が創太の視点。

三番目は千絵の視点。

そして最後は「皆」の視点。

 

真澄の章で、この兄弟は血縁という意味において

かなりややこしい間柄だとわかるようになっています。

父と母が同じで、生母と一緒にいるのが澄生と真澄。

生母の記憶がなく、父だけと血が繋がっている創太。

両親の元に生まれ、他の兄弟全員と血が繋がっている千絵。

普通だと、この兄弟に諍いが起こりそうなものですが、

四人はそれぞれくちには出さないものの、

家族の中の自分の役割を心得ていて、

「幸せな家庭」を作り上げねばと思っている節があります。

そして澄生が生きている間は、

ごく自然にそれらがかみ合っていたのです。

というのも、澄生は外見もなかみもよくできた子どもで、

家族一人一人を見守り、いたわり、潤滑剤のような存在だったから。

しかもママにとっては、彼の死を受け入れられないほどに特別な存在で、

アルコールに溺れていったのは無理もないことでした。

そして、澄生の死が原因で壊れていくママを見るのが、

他の子どもたちにとってどんな気持ちがするのか、

ママはそんなことにも気を回せないのです。

私は読んでいて創太が可哀そうでなりませんでしたよ。

 

しかし、創太の章を読んでみると、

創太がそんなに弱っちい男の子ではないことがわかり、

少しほっとします。

 

澄生の死で家族それぞれが傷つき、

傷つきながらも癒し合う様子が私はとても好き。

そう思わせてくれるのは、山田詠美さんの文章のおかげだと思います。

山田さんの言葉選びはとてもすばらしいのですよ。

同じことを言うのでも、別な言い方だとしたら、

ここまですっと心に届くだろうかと思います。

小説家とは言葉を操る人なのだなと、つくづく感じました。

 

そして、視点を移しながら進行するこの小説のラストには、

「へぇ!」と驚く場面がありました。

私は最初スルッと読み過ごしてし、

数行先を読みながら違和感を覚え

「ん?!今のどういうこと?」

と、再読してしまいました。

同じ行を何度も読み返し、

「ああ、そういうことか」と、じんわりと理解ができました。

 

今年に入って、身近な人の不幸が相次ぎ、

『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』

というタイトルをしみじみ真実だと感じているのですが、

このラストシーンが、癒しになります。

人の「死」って「無」じゃないのだと思えるので。

 

 

 

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