思わず書店で立ち止まってしまいました。

このタイトル。

 

 

だって1963年は私の生まれた年だもの。

これは読まずにいられません。

 

***

昭和38年(1963年)の横浜。

戦後18年たち、翌年には東京オリンピックが開催される。

第二次世界大戦の敗戦から見事蘇った、とはいえ、

横浜にはまだ米軍が駐留している。

在日米軍兵が犯罪を犯した場合、

多くは犯人を特定しても、起訴できない。

理不尽であるが、

刑事の中にはそれを仕方がないと諦めているものも多い。

 

そんな時に横浜港で若い女性の死体が発見される。

凶器はネイビーナイフと見られ、

被害女性の爪の間には金髪が残っていた。

神奈川県警は米兵の犯行と予想し、及び腰になっているが、

外事課の警察官、ソニー沢田は単身、米海軍捜査局に乗り込む。

 

いっぽうの米軍側は、いくら疑わしくとも、

確たる証拠がないのならば捜査に協力する必要もないという

立場をとっている。

しかし、日系三世の米軍SPショーン坂口は、

捜査協力を決意する。

 

しかし同じ手口での犯行が再び起こった。

今度も被害者は若い女性。

 

ソニーとショーン、二人は真犯人にたどり着くのか?!

***

 

 

私は自分の生まれた年が、

まだこんなにも戦争を引きずっていたとは知りませんでした。

 

でも読んでいるうちに思い出しました。

幼いころ大阪に出かけると、

地下鉄御堂筋線梅田駅の改札の近くや、

JR(当時は国鉄)と阪急、阪神をつなぐ陸橋などには

傷痍軍人さんが空き缶を前に置いて

座っていましたっけ。

 

戦争で怪我をした人たちだということは、

おとなから聞いてわかっていたけれど、

きちんと理解していたとはいえません。

ただ、彼らを見るとものすごく悲しい気持ちになったのは

覚えています。

母からお金をあずかって、缶に入れに行く時も、

そうやってお金を差し上げることが

なぜか申し訳ない気がしてなりませんでした。

 

そうか、忘れかけていたけれど、

そういう時代だったのだなぁ。

 

この小説では、

外見はまるっきりの白人なのに、

日本で生まれ、日本人として育ったソニー沢田と、

日系三世で、アメリカの文化で育ってきたのに、

外見は日本人そのもののショーン坂口という

見た目は正反対の二人が物語を動かしていきます。

彼らは立場は違えど、

自国に100パーセント受け入れられず、

差別される悩みを共有しているわけです。

 

アメリカではケネディ大統領が

新たな流れを作りかけていた時代。

ケネディ大統領の発言から新たな生き方を見出すという

明るい部分も描かれている一方で、

戦争がもたらした傷は、

体だけではなく心も蝕むという暗い部分も

描かれています。

 

伊東潤さんは横浜生まれの横浜育ちなんですって。

この小説にはどこか郷愁が漂っているのは、

時代背景もさることながら、

生まれ育った土地に対する著者の愛情が

そうさせているのかも。

 

タバコの銘柄といい、

出来事といい、

同世代の人にはたまらない作品かもしれません。

 

 

 

 

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