子どもの頃は新聞記者に憧れていました。
夢は叶わなかったけれど、
大学時代に某新聞社系の週刊誌編集部でアルバイトをし、
ほんのわずかではありますが、
編集部のお仕事を垣間見て胸がときめきました。

だって、デスクの上に無造作に置かれた
司馬遼太郎さんの原稿を見ちゃったんですよ。
あの司馬遼太郎さんですよ!
中学時代に読んだ『燃えよ剣』で
一気にはまったものでした。
当時は街道を旅する歴史エッセイの
絶賛連載中だったのです。

「うわっ!!
 この万年筆の字、写真で見たことあるわ。
 本物や~!!」

いやはや、興奮しました。

今でもやはり、新聞社や出版社の編集部には
憧れの気持ちがあります。

そんな私が、出版界に秘められた「日常の謎」を題材にした
『中野のお父さん』を読んで、
つまらないなんてことがあるでしょうか。
しかも作者は北村薫さん。
はずれようがありません。
***
主人公の田川美希は体育会系女子。
バスケットで鍛えた気力体力で、
大手出版社「文宝出版」に入社。
日々頑張っている。
最初は女性誌編集部に配属され、
柄にもないファッションや美容を担当していた。
その後、文芸の書籍部門へ異動となった。
そんな美希が出くわす出版業界の「謎」の数々。

その度に美希は、実家がある中野に帰る。
父親は現役の高校国語教師であり、読書家。
資料の整理能力も抜群で、
ドラえもんのなんでもポケットのごとく、
美希が必要な資料を取り出してくれる。
考察力、発想力に優れ、
美希が持ち帰った謎をさらりと解いてくれるのだった。
***

この小説は8つの短編からなっています。
それぞれの「謎」は、大げさなものではありません。
むしろ、注意深くない人(私)などは、
それが謎であることにも気がつかず通り過ぎてしまいそう。
だから、中野のお父さんの謎解きに、毎回、
「へー」「ほー」と間の抜けた感嘆符を連発するばかりでした。

ともすれば 単なるウンチク語りになりそうなところを、
定年間近の父親が、娘と娘が持ってくる謎を楽しみにしている、
というほのぼのしたシチュエーションが和らげてくれいています。
そう、お父さんは娘とああでもない、こうでもないと
話をするのが嬉しいんですね。

私は父とほのぼの話をすることが全くないので、
「ふーむ、世の中の父と娘は皆こんなのなのか?」と
不思議なものを見る感じではありますが。

のんびりと読みたいかた、
ピリピリ神経にさわるような作品が苦手な方にお勧めします。



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