ついに東映YouTubeで配信中のジャンパーソンが最終回を迎えましたので今回は全体を通しての総括をしたいと思います。

まずジャンパーソンはキカイダーやメタルダー等と同じくロボットヒーローなのですがキカイダーやメタルダーが人間としての姿を持っていたのに対してジャンパーソンには人間体は一切存在しないというのが大きな違いです、あとジャンパーソンが他のロボットヒーローと決定的に違う点としてはジャンパーソンはある程度完成された人格を持っていて様々な人間やロボットを時には優しく、時には厳しく導いてきました。これは不完全な良心回路で善悪の狭間で悩むキカイダーや人間や時にはネロスの軍団員から様々な事を学んでいったメタルダーとは対照的です。このようにジャンパーソンがある程度完成された人格を持った背景にあるのはMX-A1の時の悪は全て倒すという極端な善悪判断回路から廃棄処分されてかおるの手によってジャンパーソンとして修復されたことでした、途中そんなジャンパーソンの内にあるMX-A1としてのトラウマが蘇りますがジャンパーソンは自らの力でトラウマを克服しました。そんな経験があってか元々破壊ロボットとして作られたエンジェルや帯刀の下で数々の悪事を働き、戦いの中で死んでクローンとして再生したセーラさん等に対して「どう生まれたかではなくどう生きるか」や「今この一瞬から君の本当の人生が始まるんだよ」と自ら運命を切り開いていくことの大切さ、生きる喜びを説いてきました。そして時には自分を犠牲にしても人間を救おうとしました。まさにジャンパーソンは人間以上に人間らしいロボットなのですが最終回で回路が切られているにも関わらずMX-A1からジャンパーソンとして蘇ったことでそれは確固たるものとなります、それはつまりMX-A1として生まれ廃棄処分されて命が消えようとしてるなかでジャンパーソンとして生まれ変わったのはまさしく奇跡ですが回路を切られて再びMX-A1に戻ってもなおジャンパーソンとして蘇ったのは奇跡などではなく常に人は何度でも生まれ変われる、自分の運命は自分で切り開いていけると人々やロボットを導いてきたジャンパーソンが掴み取った勝利であると言えます。

またジャンパーソンはレスキューポリスからの流れから人間ドラマが非常にしっかりしていました、特に親子の絆や家族愛、男女の愛について度々描かれてきました。特に主要な悪の組織の内の二つの組織のボスは何故悪の道に走ってしまったかを丁寧に描いてます、このあたりも人間の犯罪者が相手だったレスキューポリスを彷彿とさせます。あと忘れてはならないのはジャンパーソンの声を演じた小峰裕一さんの存在で最初はいかにもロボットぽく喋っていたのですが回を重ねるにつれて段々と人間味のある声になっていきました、特に終盤での叫び声はかなり気合いが入った演技だったと思います。それとあんな重装甲のスーツの中で迫力のあるアクションや人間味のある演技を披露したジャンパーソンのスーツアクターの横山一敏さんの存在も忘れることは出来ません。

ジャンパーソンといえばやはり相棒のガンギブソンの存在も忘れることは出来ません。当初はジャンパーソンを倒すために現れた暗殺ロボットとして登場し、恋人のキャロルが殺された直後にはジョージ真壁への復讐のみに執着していましたがジャンパーソンと共に戦い時には対立する中で徐々に人間らしく成長していきました。最終的にジョージ真壁にトドメを刺さなかったのも数々の戦いの中で復讐からは何も生まれないと悟ったガンギブソンの成長の証だったように思います。あとガンギブソンはジャンパーソンとは違う意味で人間臭い性格で特にアールジーコとの軽妙なやり取りはある種の清涼剤のようでしたね。声を演じた鳥居賞也さんは「仮面ライダーBLACKRX」で仮面ライダー1号の声を演じておりジャンパーソンでは他にもMX-A1の声も演じていました。ちなみに「重甲ビーファイター」第52・53話に登場した際は松本大さんが声を演じていましたがこれは当時鳥居さんがフランスに留学していたためで後に鳥居さんは「ビーファイターにガンギブソンが出るとは知らなかった」とコメントしています(皮肉にもビーファイター第1話でサーベライザの声を演じていますが)

そして最もインパクトがあるのはやはりビルゴルディの存在でしょう、変身前の帯刀は当初から登場していて最初は無邪気で子供っぽいところも見せつつ悪役らしい一面も見せていたのですがビルゴルディになってからはより悪役らしい一面が強調されるようになりました。まず主人公が変身しないのに対して逆に悪役が変身するというのはかなり画期的だったと思います。あとやはり帯刀を演じる菅田俊さんの強烈な強面のビジュアルと凄みのある演技がビルゴルディの印象をより際立たせていたと思います。それとビルゴルディこと帯刀は他の二つの組織のボスと違って悪の道に走った悲しい過去が一切描かれず純粋に倒すべき敵として描かれてきました、まさにジャンパーソンのラスボスには相応しい存在だったと言えます。



ここでちょっとジャンパーソンの劇中で愛する者へのもはや狂ってるとさえ言える愛情を見せた三枝かおるとセーラについても触れておきましょう。まずセーラさんは帯刀の秘書として当初から登場していましたが第25話で戦死して一旦退場します、そして再登場した第39話では死んだ後も帯刀の役に立ちたいと自分の遺伝子をある科学者に託して超能力を持ったクローンとして再生します。そしてセーラさんは帯刀の怖いけど子供っぽく夢を語る時の無邪気な姿に心惹かれ愛していたことを語ります、だが現実は過酷なものでビルゴルディとなった帯刀はもはや人間の心を捨て去った悪魔でありセーラさんのことも戦いの道具としか見ていませんでした。セーラさんはそんな悪の魔王となった帯刀に失望し、結果粛清されてしまいました。愛する者のために死んでもなお忠誠を誓っていたのに蘇ってみたらその愛する者が変わってしまったことはなんとも残酷です、さらに敵であったはずのジャンパーソンが手を差し伸べたというのもなんとも皮肉な話です。そしてかおるは第17話からレギュラーとして登場しジャンパーソンをサポートし、ジャンパーソンの過去にも関わりの深い人物でした。かおるは終盤ジャンパーソン達を裏切り、子供達を操って秘密基地を壊滅させて弟の周平の心を深く傷付けたりブラックキャロルを作って悪事を働かせガンギブソンの心を弄んだりしました。しかしそれは全てジャンパーソンの力になりたいがためにジャンパーソン達を裏切る形をとってでも敵の懐に飛び込みジャンパーソンにビルゴルディを倒してほしいという想いからでした、仲間や自分自身を捨ててまで愛する者の力になろうとしたかおるのジャンパーソンへの狂ってるとさえ言える愛はまさに三枝かおるという女性を決定的付けるものとなりました。そして一度は機能停止したジャンパーソンの後を追うように自殺しようとしたかおる、かおるにとってはジャンパーソンこそが自分の全てでありジャンパーソンのそばで死ねるならもはや思い残すことは何もなかったのです。しかしジャンパーソンは復活しそしてかおるに過酷な決断を迫ります、それは回路を切ってMX-A1に戻ることでした。もちろんかおるは頑なに拒絶します、それはMX-A1に戻ってしまったら愛するジャンパーソンが自分の元から離れていってしまうのではという恐怖心なのでした。かおるはずっと自分のそばにいてくれるだけでいい、ずっと今のままでいてほしい、そう願っていました。しかしそれ以上にジャンパーソンは正義のためになんとしても悪の魔王であるビルゴルディを倒し世界を平和にしなければいけないという使命感が強かったのです、ジャンパーソンは常に正義のためなら自分が犠牲になることも厭いませんでした、そんなジャンパーソンが下した今の自分自身を捨てて悪を倒そうとしたのはまさに究極の決断だったのです。そしてかおるは渋々ジャンパーソンの回路を切りMX-A1に戻ったジャンパーソンはついにビルゴルディを倒したのでした、そして再び奇跡は起こり回路が切れているにも関わらず再びジャンパーソンとして蘇ったのでした。それは一度はMX-A1としての運命を受け入れ、そして再び自分の意思で運命を切り開いたジャンパーソンが掴み取った勝利であり人間とロボットの境界を超えた奇跡の瞬間だったのです。

そして本作の最も大きなテーマとしては人間とロボットという異なる出自の者同士でも互いを理解し、尊重しあって手を取り合い共存出来ること、ロボットやバイオ怪物にも命がありあらゆる生命を守り大切に思うことが挙げられます。ジャンパーソンが最終回で言った「人間には様々な者がいる、生まれも育ちも、性格も皆違う。ロボットもそうだ!だからこそ、互いを認め合い尊重し合う!合体しなくても手を繋ぎ合えるんだ!共存出来るんだ!」という台詞には本作のテーマが最も強く込められていました。

こうしてジャンパーソンの戦いは終わり、世界は平和になりました。しかしこの世から全ての犯罪が無くなったわけではなく世界のどこかでは今も犯罪によってあらゆる生命が脅かされています、おそらくジャンパーソンは子供達と楽しく遊ぶ平和的なエピローグの後に犯罪から全ての生命を守るために日本全国、世界各地へと旅立ったものと思われます。そう、ジャンパーソンは“そこに悪がある限り、君が救いを待つ限り、きっとあいつはやって来る、紫の炎になって”戦う正義のスーパーロボットなのです。そしてジャンパーソンは「重甲ビーファイター」第52・53話で再び登場し、ブルースワットとビーファイターと共に復活した悪と戦いました。もしかしたらどこかでウインスペクターやソルブレイン、エクシードラフトといったレスキューポリス、ジバンや磁雷矢と仲間の世界忍者といった地球上にいる他のメタルヒーロー達と共に悪に立ち向かったこともあったのでしょう。さらにもしかしたらどこかで剣流星としての姿を失い放浪していたメタルダーとも会っていたのでしょう。近年メタルヒーローが再登場する機会も多いですしもしかしたらいつかまたジャンパーソンに会える日も来るかもしれません。

とはいえ「スーパーヒーロー大戦Z」ではゴーカイピンクのゴーカイチェンジという形でジャンパーソンは再登場したのですがやはり正式な形で復活してほしいものです。まずは新生コンパチヒーローシリーズへの参戦、そして新作Vシネマでしょうか。というわけで長くなりましたが以上で「特捜ロボジャンパーソン」の総括を終わります。皆様も機会があれば是非観てはいかがでしょうか?