友達の誘いに乗って見に行った一本、いや~面白かった!!
1987年公開(日本は89年)の再上映ということで、知らない方が恥ずかしいのかもしれない。
プログラムを読むとニューシネマパラダイスと一緒に単館映画ブームの火付け役、とあるから
そのころすでに単館上映なんてのがあったとすら思っていなかった僕の方がものを知らないんでしょう。


ストーリーは、ラスベガス近く、砂漠のハイウェイ沿いにあるモーテル『バグダッドカフェ』が舞台。
立ち寄る者も少ない砂漠のモーテルには、倦怠感のみが漂っており、経営する黒人一家の女主人…と
言っても、ダンナをついには追い出してしまい女主人といった立場にあるブレンダは、遊び呆ける
娘、ピアノばかり弾いて自分の子供の面倒を見ない息子、やる気のないネイティブアメリカンっぽい
バーテン、そんな気だるさを気に入ってモーテルに入り浸る客たちに囲まれて、人生へのいらだちが
頂点に達し、誰にでも攻撃的に接しまさに発狂寸前といったところ。

そこへ砂漠の中で夫婦喧嘩のあげく車を降りて一人歩きついたドイツ人旅行者の女、ジャスミンが
たどりつきます。ジャスミンを演じるのがドイツ人女優のマリアンネ・ゼーゲブレヒト。
太ったおばさんです(笑)。

彼女は砂漠の中で行き着いたこの場末のカフェで、当たり前のように周囲の人々とコミュニケーションを
とろうとします。この行動に、ブレンダは強く反発。砂漠の中を歩いてきた女、普通じゃないよ!と
ののしるほど。それでもジャスミンは、ドイツ人らしい折り目正しさで厚意からモーテルを大掃除。
そこからブレンダの彼女への偏見も少しづつ溶けていき…心は通じ合い、周囲も巻き込んで人生で
かけがえのない間柄になっていく!!というハッピーな物語。一見極限状態に置かれたかのように
見えながら実にあっさり立ち直り、かわいい旅行者をやってのける?不屈のゲルマン魂というかドイツ女の
強さなのか。ジャスミンの存在はまるで天使です。


アメリカ人にとってはハイウェイの点景でしかないと思われるモーテルという、よくこんな細かい舞台を
映画に拾えたな!!とまずは感心しました。アメリカ人もやるじゃん!!と思ったんですが、よく見ると
監督はドイツ人(笑)。なるほどすでにデフォルメされているんだな、とそれで腑に落ちました。
出てくるアメリカ人は冗談みたいなアッパッパーばかりでこれも監督の諧謔ということでしょうね(笑)。

シュールな映画なのかと思いきや全然逆。しっかりと筋の通った直球映画でした。ストーリーも
思い通りの展開で外さないと思いきや、ひとつひとつのシーンも作り手の意図がしっかりと伝わって
きました。

たとえば、ブレンダに怒られながらおどおど練習していてピアノが上手に弾けなかったサルJrが、
ジャスミンが隣に座ったとたん、抑揚をつけて感情のこもった音楽を奏で始めるところとか。要するに、
音楽は誰かに聴かせるために弾けば、弾けるようになるんだよ、と。突然弾けるようになるんですが
その意味さえわかればサルJrが突然弾けるようになるのも不自然ではないと。
サルJrがジャスミンに、ドイツ人だと思った、と語りかけた後にバッハの肖像画のカットとか。
彼はバッハしか弾いてなかったんですが、こういうところも洒落が利いてます。

ジャスミンのヌード画はジャスミンを映さずに完成した絵が出てくるだけとか。最後のシーンも
いきなり終わる感じがあるのですが、ここから先はいいでしょ。といった監督のメッセージが聞こえる
ようで。意味のない描写はないしストーリーも背骨がまっすぐピシーッと通ってブレない。
ここも実に監督の、ドイツ人らしさと言うか(笑)。それ自体がシャレなんですかね??
ハッピーエンドでなお文句なし。絶対にオススメ出来る映画です。


印象的なシーンはジャスミンが最初にブレンダと遭遇した時に、ドラム缶風呂で周囲を黒人たちが
ダンスしながら釜ゆでに遭う、といった妄想をしてしまうシーンとか(笑)。海外に行って向こうの人と
コミュニケーションを取ろうと思ったとき、こういう想像なんかしてテンパる時あるよね、とか。
あとちょっとしたマジック(しかも人生ゲームみたいな箱に詰まったベタなマジックセットの!)で
国を超えて、感情を超えて、笑いの中からコミュニケーションが生まれるというシチュエーションとか。
本当に素晴らしい。言葉で言わずにそういうことを、映像作品として見せてくれるんです。サイズ的にも
ちょうどいい感じで。最後はいきなり終わりますもん。もう言いたいことはわかったでしょ?みたいな。

洒脱ですねぇ~~。これは幸福な映画ですよ!!!

85点/100点中