
ドラえもんはTVでこそ見ていたが漫画ではまったく熱心ではなかったので、読んでいない話がたくさん
ある。だから楽しめてしまう。でもさすがにこの年になってなあ、と思ったが、大人向けと言っては
なんだが、うまい話ばかりが集まっていた。毎日がサプライズ!編なんだそうだ(笑)。
『ドラえもんだらけ』という章があった。
のび太はドラえもんをドラ焼きで買収し、うまく言いくるめて明日までの宿題を押し付けて自分は
寝てしまう(さりげなく極悪)。翌朝のび太が起きてみるとドラえもんはボロボロの傷だらけ。
どうしたんだ?と聞くと、「自分でやったんだ」と言う。
「宿題は終わってるよ、僕はもう寝るグゥ…」と言って寝てしまうドラえもん。
のび太は何が起こったのかを突き止めに、タイムマシンで昨夜自分が寝た後の様子を覗きに行く。
宿題を前に困ったドラえもんは、未来の自分を連れてきて一緒に宿題を手伝ってもらうことを思いつく。
2時間、4時間、6時間、8時間後、そして今のドラえもん5人で宿題をやろうということになる。
ところが、連れて来た2時間後のドラえもんはボロボロの傷だらけ。どうして?と聞く今のドラえもんに
「当ててみな」とむっつり怒り顔の2時間後のドラえもん。4,6,8時間後のドラえもんも同じ。
それでも何とか宿題を終えて、いざ解散、というところでドラえもんは未来のドラえもんたちに
宿題を手伝わされた腹いせにボコボコにされてしまう。そうしてヘトヘトになって眠りにつく…。
ところが2時間後、2時間前のドラえもんがさっき終わったはずの宿題を手伝えと、ドラえもんを
起こしにやってくる。仕方なく過去へ戻ってまた宿題を手伝うドラえもん。
やっと終わってまた元の世界に戻り眠りにつくが、2時間後また、今度は4時間前のドラえもんが…。
ってな具合に、2時間ごとに過去のドラえもんが起こしにきて、その度にドラえもんは宿題をしに
過去へ戻るハメになるという話。自分で自分に傷だらけにされてしまったのだ。
タイムマシンを使って過去・未来の自分と会う、というのはホラー話みたいなゾクゾク感がある。
それはドッペルゲンガーを見ると死んでしまうとか、パラレルワールドにいる自分と今の自分が
出会ってしまうと時間軸が狂って存在が消えてしまうという(これもドラえもんネタだった気が…)
どこかで刷り込まれた知識が元になっているような気がする。それは恐くて面白い。
この話は、宿題をサボろうとしたのび太から思いついたのか、それともタイムマシンを軸に考えついた
のか、どっちだろう?のび太は僕です、と藤子不二雄は言った。のび太は実に日常に対して課題が
多くて、それゆえにドラえもんの能力がフルに発揮される。とっかかりは、なんでもないような、
宿題だったり運動会だったり、ちょっとした些細な事、でも子供にとっては深刻な事で、それを
サボるとか楽する=助けると言う発想がドラえもんの毎回のストーリーの発端になっている。
日常に少しだけ、ほんの一つだけ何かを足したり、あるいは引いたりすることで生まれる非日常。
それこそ藤子不二雄のいう、「少し・不思議=SF」ということに他ならないと思うが、如何にしろ、
漫画のネタなんてものは実に簡単に思いつくはずだ。そこから膨らませること。それが、難しい。
のび太はしかし決定的に善人で小市民で、欲をかいて失敗する。それだから笑い話になる。
子供だからだ、といえばまったくその通りで、だからこそシャレで済む。大人じゃホントに悪人になる。
藤子不二雄は大人が主人公の不思議な話もたくさん描いていて、その場合ハッピーエンドとは限らない。
ドラえもんを見ていても、そういう漫画を見ていても、本当に人間を観察する眼差しにただならぬ
ものを感じて身震いがするくらいだ。だからこそ、長い間、多くの人に愛されるってわけなんですが。
病床に於いても仕事をし、死の直前までペンを握りつづけ机に座して絶命したと言う壮絶な死に様。
紛れもなく、藤子不二雄先生は漫画界の大巨人なのであります!!なんつって。Aは存命だけど。
帰り際に拾って読めるなんてちょっと贅沢でした。まあたまに、でいいんですけれどもね。
画像は本誌より。しずちゃんの「なおさらキャー」というセリフが笑えます(笑)。