ホワイトアウト  その1 | 素人短編小説

ホワイトアウト  その1

 

 

 

テレビで冬の天気予報を観ていると、なにかしらの不自然さを感ぜずにはいられない。そしてその不自然さは明確な違和感へと心移行し、遂には少しの怒りにも似た感情をスパイスに呆れかえった脱力感の表現としての苦笑へとつながっていく。

 

特に、気象業務法とやらに規定されたという国家試験に合格した気象予報士サンの解説にはだいぶ慣れてきたとはいえ、こと冬についてのお話にはつい耳を塞ぎたくなることもたびたびだ。

 

誤解されては困るので弁解しておくが、気象に関する学問を学び、精通され、合格率六パーセントにも達しないほど難易度の高い国家試験に合格された方々の予報やその解説などにはこれっぽっちも異議があるわけでもない。

 

かえって、専門的な気象データをもとにお天気という自然の大いなる動向を認知し、予測され、予報するお歴々には頭の下がる思いすら抱いているところであり、この言葉に寸分の嘘もない。

 

ただ私の場合、なにぶん情報テレビを主としたマスコミに登場する予報士の方々、そのお話に巧みな合いの手を入れる機転の利いたMCの進行ぶりを通じてのことだから、どうもいまいち感を抱いてしまうのである。

 

なんといっても私は、日本海側の奥羽山脈に抱かれた北東北に棲家を構えているものだから、冬の気象にはどうしてもテレビ画面から聞こえてくる内容との間に大きな乖離を感ぜずには得ないのだ。

 

これについては致し方なかろうと本駄文の数少ない貴重な読者各位にも共感していただけるのではなかろうか。

 

これは、台風についても同様ではないかと察する。

遠く南の沖縄県から九州、四国、中国並びに関西、近畿といった地域の方々が毎年同時期に遭遇する台風の猛威たるや、勢力が弱まりじきに温帯低気圧になろうかというそれを念頭に我々東北人が台風の凄さ、恐ろしさをいくら熱弁しても、当該地方の方々はおそらくふんっと横を向いてしまうはずである。

 

加えて、地形や位置する所在地に起因して、度々自然の猛威にさらされている特定地域の様子については、毎年、よく画面に映し出され目にするが、まったく名前の挙がらぬ地方の中でも最高勢力を保ったままの台風から御身や家族、まちを守る姿はまるで戦いにも似た様相であることは想像に固くないところである。

 

いや、この必死な戦いを毎度毎度強いられながらも人の命やライフラインを守り切るもマスコミにはまったく報道されない地域の方が数的には多いはずと推測する。

 

雪もまさしくそうなのだ。

 

今年もまた昨年を上回るような豪雪で、珍しくと言っては語弊があるやもしれないが北海道、青森県などの名前を耳にし目にした。富山県をはじめ北陸地方も大きく報じられた。

 

しかし、この報じられ方も極めて一時的なものと言わざるを得ず、首都圏に降る数センチメートルの積雪の方が大きく報じられるのが常である。しかも、実際に降ってもいない予報の段階での話しである。

 

だいぶ前段が長くなった。実は、ここまでは前段なのである。ここから本編に入るのだが、一気に書いたせいで少々疲れた・・・と愚痴をこぼすのには理由がある。

 

大方の地域において中止、縮小となったとはいえ、小正月行事の時期も過ぎ、さあ迎えるは春!と思っていた矢先に今日のこの猛吹雪と時ならぬ多量の降雪。積雪も十五センチメートルほどとなったがため、愚妻にうながされて自宅前の除雪作業に小一時間ほどもかかってからのキーボードとなっているからにほかならない。

 

というわけで、端的に少々疲れたと書いたわけであり・・・。

 

・・・雪。四季にはそれぞれを象徴する事象が観察される。春は春暖のなかに舞うサクラ、夏は灼熱の太陽、秋は色づきや収穫。それぞれに季節を感じさせる風流を感じさせるが、冬の雪は趣の一方で、牙を剥き、怒りを露わにし、不思議の力を用いてなおの閑静を演じる。

 

 

 

「いやあ、吹雪く(ふく)で、吹雪く(ふく)で!この横がらの吹雪き(ふき)なば参ったで。・・・あら、案の定、ホワイトアウトしてさっぱりあたりが見えねえ・・・」

 

ホワイトアウトで視界を失った高橋は、ハンドルに胸を押し付け、目を細めながら必死に道路と雪壁との境を探しながら運転していた。

 

「あや、んねえ~、参ったなや!やっぱりこの道を通ったのがえぐねがったなあ。せめで、前にほがの車でもいで、そのバックランプでも見えれば助かるんだども・・・」

 

夕方の七時前。この時季もう二時間以上前に日は沈み真っ暗になっている。日中のホワイトアウトも人の行動を狂わせるが、暗くなってからのそれもまた人の五感と感性と感情とを弄ぶ。

 

「あど、家まで五百メートルぐれだべが。くそっ、でっきり見えねえ。だども、ここで停まれば、停まったで後ろがら追突されるがもしれねえ・・・あやや、参ったなや」