幸せな2時間でした
今年、5年目を迎える「シゴトの中国語’SALON’」は「台湾特集」 をお届けしていますが、第2回目のテーマは「台北故宮」! アジアで唯一、世界4大美術館に数えられる台北故宮について、当校の通訳クラスの講師、李梅先生に語っていただきました。
上記ページの先生のプロフィールをご覧になるとお分かりのように、優秀な通訳者でありながらも、石窟の研究者でもいらっしゃいます。天はニ物を……与えます
当ブログの題名、「台北故宮へのまなざし」は、李先生がこの日の講座のテーマとして掲げたもの。
先生の、「それぞれのまなざしがあっていい」という想いはジーンときました。
まずは台北故宮の由来から
以前、私のブログでその流転の歴史について書いたことがありますが(こちら )、この日はさらにさかのぼり、出発点、原点である「承徳」「北京」「瀋陽」の3つの故宮について聞かせていただきました。
台北故宮の原点は、北京の故宮だと思っていたのですが、他の故宮に貯蔵されていたものも含まれていたのだと。
現在の北京の故宮には、殷時代に出土したものや民間からの寄贈などもあるようですが、この台北故宮に渡った宝物は、清王朝の皇帝のコレクションというところが、その貴重さ、神秘性が群を抜く所以ですね。
有名な「散氏盤」。書かれている文章は、領土問題、契約書などの説があるそう。
こちらは有名な書家、王羲之の作品。
書を観る、先生の「まなざし」をおすそ分け
書は書き出しと書き終わりで字体がまったく変わってくることがあるのだそう。例えば最初は緊張感に溢れ堅く、終わりに行くにつれて荒々しく、興奮しているような字体になったりとか……。
へぇ~~、そういうふうに見たことがなかったので、とても興味深かったです。
先生がその昔、美術品を細部まで見たく、アルバイトをして買ったという単眼鏡が右。そのお値段……びっくりしました。 左は書がお好きな参加者の方の双眼鏡。展覧会には欠かせないアイテムだそう
「渓橋策杖図」の「まなざし」紹介。
4分の1に分けて、まずいちばん下を観る、下から2番目までに広げて観る、徐々にその上…と目線を移していくと、近方から遠方への空間の広がりまでを感じることができる、と。
本当にそうでした! 先生と一緒に台北故宮展が観られたら、ほんとうに楽しいだろうな……
この「ひび割れの芸術」、なぜこうなったのか。製作過程で(誤って)急激な温度変化を起こしてしまい、ひび割れが入った、と分析されているのだそう。
例の「翠玉白菜」とならぶ有名な「肉形石」。
東京の後、九州で開催される展覧会(10/7~11/30)に、開幕から2週間のみお目見えするそうです。この芸の細かさ(意外と小さいんです)、肉塊のリアルさをぜひ堪能してください
李先生のセリフより。
「中国ではなんといっても玉(ぎょく)なんです」
玉は、翡翠(ヒスイ)のこと。そういえば、「翠玉白菜」も「肉形石」も、玉ですね。
日本語に「腐っても鯛(たい)」ということわざがありますが、中国では「腐っても?玉」なんでしょうか。
なんといっても「玉(ぎょく)」で、その次に「青銅器」、そして「陶磁器」なんだそう。へぇ~~。
ホワイトボードの漢字がとても達筆。
どんなお話の流れだったかは忘れてしまったのですが、この日、「小さい頃の遊びは、字を書くことくらいだった。紙と筆で字を書くことが、楽しみだった」とおっしゃっていました。
以下、参加者の皆さんから頂戴したアンケートから、お声を抜粋させていただきます。
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・見る時の焦点のあて方が一人一人違うということに楽しさを感じた。
・至宝の背景や宝物の見かたなど、色々知らないこともあったので勉強になった。
・先生の説明をきいて美術品への興味がよりわきました。ありがとうございます。
・美術品と歴史の複雑なつながりに気づくことができました。まだ上野に行っていませんが、先生のお話を思い出しながら是非鑑賞したいと思います。李先生と知り合うことができたのも、今日の大きな収穫です。
・美術品の鑑賞の楽しみ方を教えていただきました。先生の情熱や感動が伝わってきて、先生のお話に引き込まれました。またこのようなセミナーがあればぜひ参加したいです!
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ほんとうに、まさにその通り
美術に関しては疎い私でも楽しい2時間でした。「それを好きな人が、目をキラキラさせながらその魅力を語ってくれる空間」というのは、ほんとうに居心地がよく、幸せな気分になりました。
最後に李先生が、このSALONを企画した私にも「とても良い場だった。良い企画。目の付け所がいい」とほめてくださり、とても嬉しかったです
李梅先生、ありがとうございました
第三回のSALONで「台湾特集」はラスト。その後の「台湾語講座」に続きます。これからもとても楽しみです