家族に連れて行ってもらったお料理やさん
そこの大将のお店は法事で2回伺ったことがあり、今回は新店舗だった。
法事で1年に一度お目にかかるだけだし、向こうは厨房の中、こっちは個室で家族と会食。
なので私の顔など覚えていず、改めて「実の姉です」と紹介されて、ああ。となったのだが。
そのお店はその日はたまたまお一人でされていて、カウンターの向こうでお料理をしながら、お喋りの相手をしてくれる。
で、もうかなりお酒も進み(家族が笑。私じゃない)
食事もいただいた頃に、大将がふと私の顔を見て言った。
「確か、お姉さんだと思うのですが、法事の会食の帰りに
皆さんのコートをお渡ししている時、『私のはMAXMARAだから!』とおっしゃったんです。よく覚えてます笑」
と。
ちょっと驚いた〜という感じにお話された。
私としては、法事なので全員黒いコートやジャケットだし、自分のコートを伝えるのにタグの名前(ブランド名)を言っただけで、それがわかりやすいと思うから言っただけだと思うのだが。
その大将にとってはMAXMARAのコートは高級品なので、その私のセリフの時に「え!」と印象的だったらしい。
で、思わず私は言ったのよ。
「確かにちょっと高いかもしれませんが、会社員時代に9時から23時まで働くような生活をして汗水垂らして買ったコートなんですよ!笑」と。
正確に言うと、毎日23時まで働いていたわけではないが、たまに19時とかに帰れる日があると「今日は早く帰れてラッキー」と感じるような日々だった。
アフター5に友達との約束をすることは無くなっていた時代だった。その日にならないと帰る時間がわからないからだ。
急な求人などが入るのが日常茶飯事だったので。
(人材派遣会社勤務だった)
世界にはもっと高価なコートがあるし、
もっと高いコートを着ている人が身近でいるから(いるから。ということもないが。それが理由ではないが)
MAXMARAのコートを特別と思っていない。
その中にも値段がピンからキリまであるしね。
私のはそんなに高いものではない(たぶん。忘れた。ラクダの毛のキャメルのコートではないし。多分カシミア100でもない)
実はそのコートは会社員では無くなってから購入した。
ある時、仕事の「いかりんとお買い物ツアー」である人がMAXMARAのコートを見に行きたいとおっしゃて、銀座の店舗に行った。その時は私も持っていなかったのだが、試着する彼女を見て、色々なコートの値札を見て、実際に生地を触り、「ああ〜やっぱりいいな〜。いいものはいいな〜」と感じた。
結局、その方は「やっぱり高いからやめておく」と言って購入しなかったのだが、「いつかお互いに買おうね!」と約束して(口約束だが)なぜか1年後くらいに私は買ったのだ。
今から9年くらい前かしら。
黒の本当にシンプルな形のコート。
多分心のどこかに、いつか冬に「不幸なこと」があった時に、着る黒のコートがないから買っておかなきゃという気持ちはあったと思う。
それが実際に冬に亡くなった母のお葬式や法事で着用されることになったわけだ。
最近は、会社勤めでもないし、スーツも着ないので、ロングコートを普段着ることは全然ない。重いから。というのが一番の理由でダウンコートを羽織ってる。
だから、そのMAXMARAのロングコートは普段は倉庫に預けている。場所もとるのでね。
法事前に倉庫から出して着たのです。
そして、私が今までで一番好きだったコートは「ナチュラルビューティ」のグレーのコートで形は女らしく、共布のベルトをキュッと締める形で、会社員時代に長く愛用していた。
MAXMARAほどの値段じゃない。
冬はもちろん毎日着ていた。外回りの仕事をしていたので、通勤以外も長い時間着ていたのだが、最後は左のウエストちょっと下あたりの箇所に穴が空いてしまった!
いつも左腕にバッグを通して仕事に出掛けていたのだが、何せ重いパソコンや書類などが入っているバッグで、長年の愛用で布が擦れてしまったらしい。
見事なまでにバッグが当たっていた箇所が破けた。
私はそのコートが好きで好きで仕方がなかったので、悲しかったが、5年くらいかな〜毎冬自分が毎日着ていたことも自覚しているし、バッグが当たっていたのもわかっていたので
びっくりしたけれど、「やっぱりね」とも思ったのだ。
私の仕事人生の勲章だった。そのコートに空いた穴は。
そんなわけで、そのグレーのコートを上回るコートには出会っていないし、重たいからロングコートはもう買わないので、お店で見ることもないのだが、ふとお店の大将から
MAXMARA!の話をされたので、コートについて色々思い出した。
そういえば、昔、冬に母をSONYの熱海の保養所に連れて行って、近くのMOA美術館に行った時「つまらないからもう帰りたい」と正直に言われ(笑)何故かそのまま、日本橋高島屋まで突然行って買い物をした。
その時にカルバンクラインのロングコートを買ってもらった。
今は扱って無いようだが、その当時はカルバンクラインはロングコートを売っていたのだ。
それは茶系のこれまたシンプルなコートで、通勤に愛用していた。とても気に入っていたが、いつだったか処分してしまった。ごめんなさい。たぶんナチュラルビューティのお気に入りがクローゼットに新規参入して、置き場所がなくなったのだろう。
なぜコートを買う流れになったのかは覚えていないが、きっと旅行に連れていったお礼だったのかもしれない。
そういえば、写真の一枚も撮らない旅だった。
私が30代半ばの頃だから、まだ携帯で写真を撮るのが当たり前という時代ではなかったのかも。
MOA美術館は私も最初から違和感を感じたが、後で知ったら宗教団体の美術館なんですね。どうりで「なんか変」と感じたわけだ。母は正直なのでつい口にしたのだろう。
ロングコートは重い。だからもう着ることはあまりないだろう。と書きつつ、もし誰かがとても軽いMAXMARAのキャメルのコートを買ってくれたら愛用するだろうな🤭
自分では全く他意はなく、コートを渡してくださる方がわかりやすいだろうからと「私のはMAXMARA」と言ったとしても、聞いてる人は、色んな意味に解釈するのだろう。
その大将はもちろん笑い話として伝えてくれたのだけど。
最後母のクローゼットの中にはロングコートは一枚もなかった。
きっと86歳には重たいからだろう。
わかるなー