ぼくは三十代の大半を、福祉や医療といったリハビリテーションの領域に時間を使っていました。そのひとつに障害者福祉作業所がありました。
みなさんは、福祉作業所という場所を知っていますか?
なんとなく知ってるけど、あの…障害者がいるところでしょ?
障害者がのんびりしたり、ちょっとした作業をしてるところ?
簡単にいうとそうです。障害を抱えている人が、生活の場や仕事の場として利用している場所です。今回は障害者の仕事について、書いてみました。それを補う資料として、丁寧にわかりやすく説明している厚生労働省(2014)のウェブサイトを覗いてみましょう。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/shurou.html
Q.日本には、障害者は何人いるんですか?
A.およそ744万人です。そのうち322万人(18~64歳)が、雇用の対象になる人の数です。
Q.雇用の対象になる障害者ってどういう人なんですか?
A.322万人のうち、身体障害者124万人、知的障害者27万人、精神障害者181万人(20~64歳)です。
Q.作業所では、どんなことをしているんですか?
A.例えば、地域の清掃などの環境整備やパンを作って接客などをするところもあります。
Q.給料は出るんですか?
A.はい。給料は作業工賃という名目で支払われます。ただし、仕事内容や働き方によって異なります。時給は176円~724円(平均258円)。月額平均は21,175円。ちなみに東京都の最低賃金は888円(2015年8月現在)。
東京都八丈町。欠航の多い飛行機の航空券を握りしめて、ぼくは八丈島へ渡りました。滞在期間は三日。はじめての島を満喫しよう!……気がつくと二週間、滞在していました。あらま!
九州を離れてから、1年とちょっと。プレイバック・シアターからもずんぶんと離れていました。それでも、プレイバック・シアターに教わってきた「自分を活かす」旅は続いています。
↓プレイバック・シアターって?
2015年の初夏、青い海に囲まれたひょうたん型の島、八丈島"。ここに三十年前に立ち上がった、"ちょんこめ共同福祉作業所"がありました。叔母がスタッフとして関わっていた縁で、ちょっとでいいから見学に来て、と頼まれて"ちょんこめ"に顔を出しました。せっかく島に来たのに、作業所なんか面倒だなぁ…はっきりいってイヤイヤ訪ねました。
今回はこんな出だしで始めてみます。
福祉作業所といえば、知的・精神・身体・発達などというように、障害別に開設されることが少なくないんですね。それは、それぞれの都合とそうせざるを得ない事情があってのこと。でもぼくは、ある人たちの偏った勝手な事情だなぁと思っています。
八丈島の作業所は衝撃でした。とにかくいろんな人が集まっているんです。知的精神身体発達高齢者その家族と、障害の別を問わずに、島中の人が集まってるんじゃないかと思うくらいに。
そのちょんこめでは……
身体の自由が利かない人の車椅子を、他のメンバーが押して散歩へでかけたり(微笑ましい)、耳が聞こえず発話できない人と笑顔で会話していたり(なに?!)、発話できなくてもミーティングの司会をしていたり(どーゆーこと?!)、職員とメンバーの区別がつかなかったり(ここ重要!)。
なんてごちゃごちゃなんだ!たのしそう!それが一番はじめに感じたことでした。
メンバーは、毎日ちょんこめに通ってきます。いつも笑顔で元気に1日が始まります。ミーティング、体操、手話講座、合唱、散歩を終えると、それぞれの仕事へ取り掛かります。仕事も様々。島中の空き缶を回収したり、公園の掃除をしたり、花を植えたり草を刈ったり、ステンシル(染料)を使ってTシャツやトートバッグをつくったり。
仕事のローテーションは毎朝、職員とメンバーで決めます。その基準は、やりたい仕事。自分に合った仕事をします。お昼ご飯もみんなで分担して、ささっと準備を済ませます。とにかく一日があっという間に終わるくらい予定がびっしり。本当に忙しいんです。
誰にでも得手不得手があるように、"ちょんこめ"では、一人ひとりの可能性を尊重して補って支え合っています。
一般社会でも、様々な人がいろいろな考え方や生き方をしています。そしてそれを尊重して「いいね!」なんていうやりとりも行われています。いろいろな人が、ごちゃごちゃと集まってできているのが当たり前の社会。
島中の人たちが集まる"ちょんこめ"に、一般とか福祉といった偏りはありません。ちょんこめの当たり前は、ひと味違います。
「福祉作業所は、知的・精神・身体・発達と、障害者別に考える」
そんな常識をぶち壊してくれました。来る者はすべて受け入れ、一人ひとりに合わせた支援を見つけ出す。それが八丈島唯一の福祉作業所"ちょんこめ"スタイル。また、スタッフの資格の有無も問いません。施設長の「あなた、いいわね」で採用。ちょんこめのリクルートはナンパです!
うーん、でもそれは、小さい島の少ない人数だからできることでしょ?都会じゃちょっとムリ……。確かにそうかもしれません。そう片付けてしまうのは簡単です。でも……。
気がつけば二週間。その滞在理由は、ぼく自身の好奇心とちょんこめの可能性でした。
「ただ、必要だからやってるだけよ」と、さらっと話してくれたのは、"ちょんこめ"の施設長。その言葉が表していたのは"ちょんこめ"に集まる人たちの事情、一人ひとりの可能性を信じている言葉でした。みんなが必要だと思うことを実現しようとする環境。さらっとしながらも、目指すべき社会福祉の課題も話してくれました。
「必要だから…」とは、障害者の自立支援に他なりません。ぼくたちは一ヶ月の間、どのくらいのお金で生活できるでしょうか?障害者支援の大きな役割、必要な理由は、仕事の確保と安定した給与体制をつくることだと教えてもらいました。
「でこぼこだから合うのよね。」そう話してくれたのは、ちょんこめを立ち上げた初代施設長。「職員だってメンバーだって、でこぼこだからいいのよ。例えば職員のAさんの凸凹なところなんて、もうかわいくてしょうがないわ」
でこぼこという言葉に愛情を感じました。そうやって日々、職員は勇気付けられているように感じました。この「凸凹のちょんこめ」を保ち続けているのは、職員の資質だということも強く感じました。資格の有無は関係ないのです。ちょんこめでは、来る者を拒むことなく誰でも受け入れていました。メンバーもスタッフも猫も杓子もついでにぼくも。
「わが邦(国)何十万の精神病者は、実に病を受けたる不幸の外に、この邦に生まれたる不幸を重ぬるものを云うべし」
これは日本の精神医学の父、呉秀三の言葉です。障害者は、病と悪い制度の二重の苦しみの中にあるといわれていた時代の話。
今、日本のあちこちに、凸凹のままの芽が芽吹きはじめています。その成長と可能性を、小さなひょうたん島でみつけました。
障害ってなに?
普通ってなに?
働くってなに?
どうして働くの?
なに?どうして?
なんでなんで?
ぼくが20年もの間、対話と表現の大切さを学んでいるプレイバック・シアターは、当たり前だと言われていることを、もう一度ふりかえるきっかけの場を提供してきました。八丈島から戻り、なんで?どうして?と考えていました。それをこれから、多くの人と分かち合っていきたいと思っています。
皆さんも一度、近所にある福祉作業所を訪ねてみてください。きっとそのシンプルな答えが、そこにあるかもしれません。その時は是非、話を聞かせてください。





