帰国便変更の概要は掴めたので、2日後の午前10時の便へ変更した。オペレーターのオジサンがキーボードをカタカタと叩くと彼の後ろのプリンタから変更後の便が印刷されている「旅程表+E-チケット」が出力された。彼は私にその用紙を見せて「再確認しろ」と言ったので、その用紙を上から下までじぃ~っと読んで「No Problem(問題なし)」と答えた。実は下の方に「“」で囲まれた意味の分からない単語があったのだが、変更した航空便は指定した便に間違いが無かったのでその英単語は無視していた。すると彼はその単語である「warrate」を指差して「それを読め」と言った。初めて見る英単語で、全く意味が分からない…。「ワーレイト???」私が首をかしげていると彼が「ワラテ」と言った。「ワラテ、ワラテ、ワラテ…」なんだこれ?何度読んでも分からない。試しに「r」をそれらしく発音してみても全く分からず…。「ワラテ、ワラテ、ワラッテ…」「笑って」…なにぃ「笑え」ということか?と聞くと、大きな身振り手振りを添えて「オ~ゥ、イエース!」と言った。あらん限りの気合を込めて彼に英語を話したので、きっと鬼のような形相になっていたのかもしれない。優しい彼にとても悪いことをしてしまったような申し訳ない気持ちになった。

 

他にどんな日本語を知っているのか聞いてみたら「タベテ(食べて)」「ノンデ(飲んで)」「ウタテ(唄って)」だったので、どんな時に教えてもらったのかは大体予想がついた。でも「ウタテ」もそうだが、「笑って」なら「r」をひとつ減らして「t」をひとつ増やすのが正しい綴り(?)なので、それを笑顔で彼に教えてその事務所を後にした。

 

事務所を出た後で気が付いたことがあった。「両替のレートは◯◯」を事務所で聞いた時には何を言っているのか分からなかったが、それは「1ドル80円」の「80」を彼が「エイティ」では無く「アイティ」と言った(発音)したためだった。これが生のオージーイングリッシュかぁ~、とそれを直接聞くことができたこと、そして(結構な時間差はあったが)それを理解できたことがなんだかとても嬉しかった。

空席があれば手数料は発生するが便の変更が可能、という航空チケットだったので、シドニー市内でカンタス航空の事務所へ行ってその手続きをすることにした。

 

事前にその所在地を調べていたのだが…地図を見ながらウロウロしていると、相変わらずここでも優しそうな人が声を掛けてくれて、更に「行き先が同じ方向だ」ということでその事務所の前まで一緒に行ってくれた。な~んだ、シドニーにも優しい人が沢山居るじゃないか…。

 

事務所へ入ってみると広めのオフィスでカウンターには3人のオペレーターが顧客対応をしていた。待っている人は誰も居なかったので、次が私だった。ここは英語力を試す絶好の機会だと思い気合を入れて座って待っていた。カウンターに呼ばれたら「変更可能なチケットであることは日本を出発する前に確認済みであること」「手数料はいくらかかるのか?」「2日後の便に空席はあるのか?」等の英文を淀み無く話すために頭の中で何度も何度も反芻していると…間もなく対応が終わったオペレーターのオジサンが「こっちへ来い」という感じで私の方を見て手招きをした。その仕草にちょっと上から目線のような印象を受けたので「負けてたまるか」という強い気持ちでその彼の前に座った。

 

頭の中で反芻していたことを一生懸命にそして一気に話した。このチケットは変更可能ということで購入したのは間違いないので、彼がダメだと言っても一歩も譲まい‼️と、眉間に皺を寄せて睨みつけるような目つきで回答を待っていると…、パソコンのモニターをぐるりとこちらに向けて「沢山ある。どれにする?」のようなことを言ってきた。待て待て、その前に「手数料は?」と更に厳しめに尋ねると、「両替のレートは◯◯だからニサンセン」と言っているようだったがカタカナの部分が分からなかったので私の眉間の皺は更に深くなり目は二重になった。すると彼がペンで書いたのが「2〜3000」だった。あぁ~な~んだ2〜3千円とことだったのか…。こっちは全てが英語で話してくると思っているんだから、そこへ変な日本語が入ると混乱してしまじゃないか…。しかも金額の幅が広過ぎ。

シドニーでは勿論オペラハウスの外観を見に行ったが、それが初日だったのか…等ここから先の記憶が曖昧で断片的になっているので、シドニーでの出来事については記憶に残っていることを順不同で書き出してみる。

 

出発駅のエッジクリフでは昨夜のパン屋で再びパンを購入したのだが、アジア人が珍しかったのか私のことを覚えてくれていた店員がいて「昨日のパンは全部食べたのか?」と聞いてくれたのは嬉しかった。「もちろん、おいしかったから全部食べた、ありがとう」と返した。

 

改札の手前にある券売機では、なかなかお札を認識しれくれず何度もお札が返却されたのには焦ってしまったが、後ろに並んでいる人達はそれに苛立っている様子もなかったので、もしかしたらこの辺ではこれが「あるある」なのかもしれないと思った。

 

エッジクリフ駅のホームで電車を待っている時、線路の直ぐ向こう側の壁にオーストラリアの有名な競泳選手であるイアン・ソープの大きなポスターが貼られていたが、それにイタズラをした奴がいて彼の前歯が2本欠けていた。パースでの滞在中はそのようなイタズラに出会ったことがなかったので、シドニーは私にとって少し都会過ぎるのかもしれないと感じた。私が立っているホームとポスターが貼ってある壁の間には単線の線路があるだけなので、電車の来ない瞬間を見計らってのイタズラでありそのドキドキ感も手伝ったのかもしれないが…。