戦時下でも政府高官の汚職事件が相次いで報じられるなどウクライナは腐敗している。民主主義や法の支配・人権尊重など崇高な理念を理由にウクライナを擁護することは奇妙な光景にも映るが、米国をはじめ欧米や日本などはウクライナを支援する。ウクライナを「失う」ことで、ロシアが西方に支配地を広げ、勢力を拡大することを米国や欧州は警戒しているようだ。

 

 ウクライナは米国などからの武器弾薬の補給がなければ、ロシアの攻撃に持ちこたえることは困難だろう。ゼレンスキー大統領はしきりに米国やEU諸国に武器弾薬の供与を要請することを繰り返し、諸国からの支援は続くが、報じられる戦況は一進一退の気配だ。長期戦では兵站が重要だが、ウクライナは米国やEU諸国に頼るしかなく、ゼレンスキー大統領は米国やEU諸国が離れて行かないように、抱きつくしかない。

 

 戦時体制にあるイスラエルはハマスの壊滅を掲げるとともに、「やられたら、やり返せ」と周辺各国に存在する戦闘集団との戦闘を辞さない構えで、散発的な攻撃の応酬のほか、戦闘集団の幹部や指導者を殺害することを繰り返している。戦線をむやみに拡大することには慎重であるべきだろうが、イスラエルは緊張の維持並びにエスカレートを狙っているように見える。

 

 汚職疑惑による裁判を抱え、世論調査で8割が「辞任すべきだ」とするなど支持率が低下したネタニヤフ首相は、権力の座に居座り続けるためには戦時体制を続ける必要があり、そのために緊張の維持並びにエスカレートを行っているとの見方がある。ガザでの大規模な破壊を続ける軍事行動や周辺諸国から飛来するドローンやミサイルを撃ち落とすために武器弾薬の支援が必要だが、頼るのは米国しかなく、ネタニヤフ首相は米国に、抱きつく。

 

 中国は個人独裁を防ぐために最高指導者(国家主席・共産党総書記)の68歳定年を慣例化していたが、習近平氏は2022年、最高指導者として異例の3期目に入り、27年以降の4期目も想定していると見られている。7月に開催された共産党の三中全会では新たな目標として、建国80年の29年までに改革の任務を完成させることが掲げられたが、これは29年にも習近平氏が最高指導者として君臨することを示すと受け止められた。

 

 習近平氏が最高指導者の座に居座り続ける理由として、①国政運営に強い意欲を持っている、②自分だけが重責を担えると自負している、③権力欲が非常に強い、④大規模な腐敗摘発活動で、あまりに多くの高級官僚(党員)を処分したため、権力を手放すと恨みの標的になるーなどが推察できる。④であるなら習近平氏は身の安全を確保するため、死ぬまで権力を手放さないだろう(=習近平氏は権力に抱きつく)。

 

 ゼレンスキー氏は侵攻するロシアに負けないために欧米諸国に抱きつき、ネタニヤフ氏は戦時体制を継続するために米国に抱きつき、強権で政敵などを排除した習近平氏は生き延びるために権力に抱きつく。国家の最高権力は時には後ろ盾となる外国を必要とするので最高権力者は抱きつくのだが、抱きつかれた外国はそれを利用する。生き延びるには最高権力に抱きつくしかなくなった独裁者は、寿命が尽きるか、人民により追い出されるまで抱きつき続ける。