北海道南部の渡島半島に路線網を展開しているのが函館バスだ。函館市内には密に路線を張り巡らし、西は江差や上ノ国、南は木古内や松前、東は鹿部や椴法華、北は森や長万部や今金などへ路線が伸びていて、渡島半島の各地を結ぶ路線バスは函館バスしかない。その函館バスには問題があるようだ。
報道された主なニュースを並べると次のようになる。
<2024年>7月=裁判で函館バスの違法性が何度も認められているにもかかわらず同社が改善の姿勢を見せないため、私鉄総連函館バス支部と組合員2人が函館弁護士会に人権救済を、函館地方法務局に人権侵犯の被害を申し立てることを決めた。2021年以降、支部は民事訴訟や労働委員会への不当労働行為救済申し立てを相次いで起こし、会社側の敗訴や労働委による救済命令が続いているが、「函館バスは司法判断にすら従わない」(支部代理人の弁護士)。
6月=函館バスの株主である函館市は同社の森健二社長について最高裁で「再雇用を不当に拒否した」とする判決が確定したことから、判決に従って再雇用するよう指導した。
5月=慰謝料計550万円の支払いなどを命じた裁判所の判決に会社側が応じず、函館地裁は森健二社長の預金を差し押さえる命令を出した(函館地裁は昨年10月、配置転換が不当労働行為に当たるとして会社と森社長に賠償を命じる判決。札幌高裁も今年4月、一審判決を支持し、会社側の控訴を棄却)。
5月=判決で言い渡された慰謝料の支払いに函館バスが応じていないことをめぐり、函館地裁は森健二社長の自宅を差し押さえることを決定(判決には強制執行が可能な仮執行宣言が付いていた)。
3月=函館バスが労使協定を結ばないまま乗務員に時間外労働をさせたとして函館労働基準監督署は、会社と社長・常務を労働基準法違反の疑いで書類送検(函館バスをめぐって労働組合が去年10月に告発状を提出し、函館労働基準監督署が聴き取りや勤務記録を計算するなどの捜査を進めていた)。
1月=函館バスの労働組合に所属する男性が従業員としての地位確認などを求めた裁判で最高裁は上告を退ける決定をし、従業員としての地位を認めた上で会社に未払い賃金などの支払いを命じる判決が確定した。
<2023年>10月=函館地裁は、函館バスの人事措置は組合活動を侵害する不当労働行為にあたると認定。同社と森社長に慰謝料計605万円の支払いを命じた。同社の労使紛争を巡っては、札幌高裁が8月、同支部の執行委員長に対する雇い止めは無効だとする判決を出している。
10月=函館バスが労働組合が求める団体交渉に応じなかったり、組合側への支配介入を行ってきたのは不当労働行為にあたるとして、北海道労働委員会は組合側の申し立てを全面的に認める救済命令を出した。
10月=函館バスに対して札幌高裁が未払い賃金など約500万円を支払うよう命じた判決について、会社側が応じていないことから裁判所は、会社に保管されている現金を差し押さえる強制執行を行った(判決の確定前に強制執行ができる仮執行宣言が付いていた)。
8月=札幌高裁は、雇い止めを無効とした一審・函館地裁判決を支持。会社側に雇い止め後の賃金など約530万円の支払いを命じた。判決は、組合休暇の取得方法は労使間で合意に至っておらず、懲戒処分の理由に当たらないと指摘。同社の制度では定年後も希望者を再雇用することになっており、黒瀧さんの雇い止めは「社会通念上相当であると認めることはできない」。
※函館バスは報道によると、担当者不在などとして取材にほとんど応じていない。
私鉄総連は「今回の函館バス㈱のように、団体交渉拒否・不当解雇・不当配転・支配介入・そして中立義務違反に至るまで、ここまで正面から労働組合法を無視し、労働委員会の命令や司法判決が明確に出されても従わない経営者は、私鉄総連の長い歴史を振り返っても極めて稀有な存在です」とコメント。
労働法規を無視し、裁判所の決定にも従わない函館バス。競合する路線バス会社が渡島半島には存在しないから、労組潰しなど、やりたい放題を函館バスの経営陣が行っていると見える。一連の報道で函館バスの企業イメージは低下しただろう。全国的にバス運転手が不足しているというから、函館バスは全国のバス会社にとってバス運転手の草刈場になるかもしれない。