SDGsに取り組んでいることを掲げる企業が増えた。これは①企業のブランドイメージ向上につながる、②新しいビジネスが生まれるきっかけになる、③社員のモチベーション維持につながる、④投資家へアピールできるーからで、SDGsの導入は、SDGsの知識習得→課題を設定→目標設定→自社のビジネスに組み込む→SDGs活動開始の順に行うという(日本能率協会HP)。

 

  行政関係や企業人以外で、SDGsというアルファベットの連なりの意味するものを即座に理解できる人がどれだけいるのか定かではない。生活実感としてSDGsの必要性を感じている人は少ないだろうし、SDGsの必要性を説かれても何をすれば良いのか分からないという人も少なくないだろう。行政関係や企業人にしても、共感して賛同するというより、対応しなければならないと受け身で思考・行動している人が大半のようにも見える。

 

 SDGsとは持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)で、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、2030年までに持続可能で、よりよい世界の実現を目指す国際目標。17の目標・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを目指す(外務省HP)。

 

 17の目標は、▽貧困をなくす▽飢餓をなくす▽すべての人に健康と福祉を▽質の高い教育を▽ジェンダー平等を達成▽すべての人に安全な水と衛生の利用・管理を▽安価で信頼できるエネルギーへのアクセスを▽経済成長と雇用を確保▽産業と技術革新の基盤をつくる▽各国内や各国間の不平等を是正▽持続可能な都市を実現▽持続可能な生産・消費形態を確保▽気候変動に緊急対策▽海洋資源を保全し、持続的に利用▽陸の生態系の保護・回復・持続可能な利用促進、森林の持続可能な管理など▽平和で包括的な社会の促進、すべての人々に司法へのアクセス提供など▽持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パー トナーシップを活性化。

 

 国際社会の課題を列挙した17目標に異論を唱える人は少ないだろうが、どの目標も個人レベルの課題だと受け止める人も少ないだろう。日本政府がSDGs策定の議論にどれほど参画していたのか知らないが、国連で決まったことに従っているだけのような印象も受ける。SDGsは政府レベルや企業レベルで取り組む課題だが、日本独自に設定した課題ではなく、「与えられた」課題のようだな。

 

 他人が設定した問題を他人の解釈をなぞって考えたり、他人と同じ問題意識を持つことは教育の場などでは必要だ。そうやって子供らは、与えられた課題を考え、解くことを学ぶ。そうして大人になって、自分で課題を見いだし、問題を設定し、解決の道筋を考えるようになるーーはずだが、自力で課題を見いだし、問題を設定できる人はそう多くはいない気配だ。

 

 自力で課題を見いだすより、「与えられた」課題の解決の道筋を他人の解釈に追従して検討するほうが簡単だろう。だが、それは先生に課題を与えられて、考え始めた生徒の振る舞いでしかない。他人の問題意識や他人の思考を追っているだけだ。より良い世界を実現しようというSDGsは尊重されるべきだろうが、「与えられた」課題に対応すればいいとも見える行政や企業の動向から、独自の哲学めいたものが希薄なのは当然か。