国家における最高権力者の決め方は様々だ。米国などでは大統領を選挙で決め、日本などでは首相を議会が決めるが、議会の議員は自由選挙で選出される。だが、最高権力者が居座るために選挙に介入し、対立候補の立候補を阻んだりして結果を有利にするよう仕組んだりする国もあって、自由選挙の実態も様々だ。

 

 人々の自由選挙で国家権力のあり方を決めるという民主主義では、最高権力者の交代による混乱は少なく、権力承継の安定性を確保するためには有効なシステムだ。民意が反映されて最高権力者が決まるシステムが明確に構築され、そのシステムに則って最高権力者の交代が行われる。北朝鮮などのように最高権力者の選出が選挙によらず、支配層トップだけで決める国もある。

 

 最高権力者の交代がシステム化されている国では、最高権力者は決められた任期を務めるだけだ。そうした国では、国家の主権は人々にあることが明確化され、最高権力は主権者にあり、それを代表して行使する人を選出して権力の行使を委ねる。一方、最高権力者が居座ることを正当化するために権力が行使され、憲法や選挙制度、司法制度などを都合よく変えたりする国もある。

 

 権威主義の諸国でも最高権力者を選出するシステムは構築されているが、中国では習近平氏が権力を掌握し、憲法を改正して最高権力者の座に留まり続けることを可能にし、ロシアも憲法を改正してプーチン氏が最高権力者の座に留まり続けることを可能にした。これらの国では最高権力者が国家主権を有し、それに憲法も従っているように見える。

 

 個人が国家主権を有している国で、最高権力者の交代は最大の不安定要因となる。後継者を決定するシステムが曖昧だったり、システムが明示されていても実態は支配層トップの談合で決定したりするなら、権力継承の安定性は低い。むき出しの権力闘争が勃発する可能性があり、軍を掌握することが決め手になったりする。

 

 ある国家で、好きなように権力を行使できる最高権力者であったとしても人には寿命がある。最高権力者の突然の死によって権力の承継レースが始まる。そうした国での最高権力者の正当性は民意に関係なく、最高権力を掌握したことによってのみ担保されるので、承継者が決まっていなければ、後継者を争って権力闘争が始まるだろう。最高権力者の死がしばらく隠蔽されたりすると、死んだ最高権力者の警護責任者が承継レースのキーパーソンになったりすることもある。

 

 最高権力者が国家の主権を掌握している場合、最高権力者の死は国家主権の空白を示す。国家は永続すると思われているが、個人が主権を掌握している国家では、最高権力者の死によって主権の存在が希薄になり、人々が周辺諸国に流失したりすると国家は衰弱する。個人が主権を掌握している国家には、権力の承継という不安定性が付きまとう。