もはや精神力が肉体を凌駕した男逹は、
まるで何かに取り憑かれた如くガリガリくんを食いつづけた。
果たして取り憑いているのは神か、はたまた鬼か?

14本めに達した時だった。
遂に初期のメンバー3人の精神が崩壊した。

心身共に限界など越えていた3人は突如奇声を発しながら走り出す。

もう無理だ。限界だ。
俺たちは良くやった。もうこれ以上は可哀想だよ、とても見てられない…

しかし止まることは許されなかった。精神が崩壊した後も3人は友に支えてもらいながら、ただダラダラと食べていた。

もうすでに最初の頃の熱意もスピードはなかった。


ただ時は過ぎていく。

もはやここで終わりなのか?勝つことなど不可能なのか。
いや、初めから勝機などなかったのだ。

もうやめよう、家に帰ろう、そして忘れよう。

今日という日は来なかった。もうそれでいいじゃないか。


その時だった。
コンビニをある男が通り過ぎた。

その男はただ見知っている程度の男だった。

誰一人深い仲ではない、しかし事情を話すと
とびっきりの笑顔で快諾してくれたのだ。


この時、皆は奇跡という言葉を確認した。
これは神の意思なのか?いいや、神などいない。

これは俺たちはの意思だ。

皆諦めていた。しかし、心の奥深くでは悔恨の渦があった。諦めたくない、後悔したくない、なにより自分に負けたくない。

男逹の意志が奇跡を起こした。
そして男逹は再び動き出す!

15

16

17本め!

ようやく最後の一個にたどり着いた。

心なしかガリガリくんのパッケージには恨めしそうに、されど我らを褒め称える表情をしていた。

そして最後の一本は我等がリーダー元帥閣下に渡される。

5分後、元帥閣下の手には生まれたてままの姿になったハズレ棒があった。






我々はこの時を一生忘れない。
我々はこの先何年、何十年と生きるだろう。

嫌なこと、頑張っていても報われないこと、理不尽なこと、色んな障害が人生という名の道に立ちふさがる。

その時、挫けそうになった時にはこの話を思い出してほしい。

青春で輝いたという糧は自分だけではなく、他人でさえ…やがて人生という名の花を立派にすることが出来る。

我々はその為に、今を生き、今を胸に刻む。

あの時めっちゃ楽しかったな

せやな、誰かさんが腹痛で次の日学校やすんでたもんな

あの時ほどガリガリくんを恨んだことはなかったな…

やっぱりお前お腹弱すぎやろ~!(笑)













もう嫌だ、もう食えない。アイスなんてみたくもない。

日付もかわり、9本めに突入した時だ。

男逹は満身創痍だった。
そもそもなぜこんなことをしなければならないのか?
男逹はこの戦いに意味はないのは重々承知している。
しかし、何か心の支えになるものが欲しかった。


挫けそうになっていたその時、一人の男が現れた

そいつも前回の男と同じく、とびっきりの笑顔をもってやってきた。






10本めに突入した時だろうか。
電話が鳴った。

さっき電話に出なかった者からである。
「友よ、すまんかった。」

「なにを謝る必要がある?」

「俺を許してくれるというのか!?
携帯のバイブレータに、生まれたてのバンビちゃんの如く怯えていた愚かな俺を?」

「くどい!もともと俺たちは怒ってなどいない。」

「そう言ってくれるか友よ!
待っていろ!俺は食うぞ!お前等の分までガリガリくんを食うぞ!」

そういい放ち、彼は10分後に現れた。

互いの友情を確かめあった瞬間だった。

その時男逹は悟った。

ここに男として生まれた意味を、今を生きている意味を、青春の意味を、

なにより友の意味を。

男逹は覚悟した。

この道がいばらの道であろうとも、俺達なら駆け抜けることが出来る。

今この時、この瞬間を胸に刻みつけ
漢たちは友と共に青春を輝くことが出来るのだと。



この戦いで色んなことを学んだんだ。
健康であることのありがたみ。
平穏な暮らしのありがたみ。
親のありがたみ。

そしてなにより、友のありがたみを。








誰の為に戦うのか、何のために戦うのか。
これほど自分を傷つけて、精神すらボロボロになりながら…。
いやはやどうして、この戦いには意味はないというのに…
こんな無意味な事を繰り返すのか?

敢えて言うならば、我等は導かれたのだ。
未来が見えない現代社会において確かに何かに導かれ、男逹は出会ったのだ。
男逹にはそれで充分だった。

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始まってすぐの事だった。
「助っ人が来る。」
男逹は歓喜に震えた。
4人になった男逹は来るべき恐怖の時に備え、仲間を要請することにした。

しかし、運命というものは残酷なものである。

一人めは金欠で来れない。
二人めは電話にでない。
三人めは電話ごしに断られる。
四人めはデート中であった。

彼等はこの戦いに加わることを拒んだのだ。
我等は絶望にうちひしがれた。



どれだけ時間がたっただろうか、全員の顔に焦りが見え始めた。

まだ4本めだというのに…キツイ…。
まだテンションが下がってないのが唯一の救い…が、しかし…

そこに一人の男が現れた。

彼は笑っていた。
なぜ彼は来たのか?
電話したときに金欠と言っていたのはなぜなのか?
そんなことはどうでもよかった。

彼はこう言った。
「俺たちは誰かの道具じゃない。誰かのためにやっているんじゃない。
自分で考えて、決めてここにいる。
俺は彼女もいない。学歴も底辺、こんな俺が唯一輝ける場所は
ここしかないんだ」