③陣痛から出産まで〜力みのコツ〜 | ザクロえびのケセラセラ

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ベトナムで三年間日本語教師従事後帰国、
2017年に20歳離れた年上の日本人の旦那様と結婚し、
ドタバタ結婚生活が始まる。
心の成長を目指す ザクえび の徒然日記。

3分間隔の陣痛が始まってから、3時間が経った。

汗ぐっしょりになり、スポーツドリンク4本を飲みきった。

もう、力みたいのを我慢するのがつらい。
テニスボールでお尻の穴付近を押さえると少し楽になった。
看護師さんが様子を見に来た。
オムツをはずし、指をつっこまれる。
そして、「まだかなぁ」と言った。
去ろうとする彼女の腕を掴み、必死に訴える。
一度、離れると10分は戻って来てくれないのだ。
「行かないで!見て!もう一度ちゃんと見て!」

看護師さんからしたらもう一度見ようが、
まだなものはまだなのである。

私の泣きの頼みは虚しく、
「もう少し頑張る」ことになった。


力んではダメと言われたが、
もう何回か力んでしまった。
そのうち、おしっこをもらしてしまった感覚になった。
「おしっこ出た。」と目を白黒させて、
お義母さんに言うと、
お義母さんはじーっと私を見てから、
「そろそろね」と言ってナースコールを押した。
看護師さんが確認すると、どうも破水しているようだった。
「では、移動します」
ヤッター!心の中でガッツポーズをした。
ゴールまであと少しだ。
ゆっくり歩いて隣の分娩室へ。

分娩室は寒く、乗せられた分娩台も冷んやりしていた。痛みでほとほと疲れ果てているのに、
暖房くらい入れといてほしいと怒りが湧いた。
さらに、分娩室には私と看護師さんが一人。
私に点滴したり、機械を用意したり、全部一人で行なっている。
手袋をし、ぼうしをかぶり、エプロン結ぶ。
そのエプロンを結ぶことの遅さったらない。
早く!早くして!
普段はのんびり屋の私も、
痛みで短気になってイライラした。

ようやく私の股の方へ移動して、
管を尿路に通された。
すると、意図せずに私の尿は排泄された。
「はーい。
では破水しますね。」
直後、股から温かい水がバシャバシャと流れて出た。
「では、一番痛い時にりきんでね。」

そう。何度も言うが、陣痛の痛みには波がある。痛い時は100%痛いが、痛くない時は0%痛くない。
この0%の時に目をつぶって、うまく休憩しなくてはいけない。

くぅーキタキタキタキタ!
「うーーーーーん!」
この時、口をふくまらせてはいけない。
マタニティスイミングの先生に言われたのだが、
口の周りの血管が切れて、産後猫の髭のような痕が残ってしまうとのこと。
また、声も出してはいけない。力が逃げてしまうらしい。
その点を意識して、

息を止め、思いっきり力む。
出ていけ!全部!出ていけ!
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10...

ぷはぁ!ふぅー!ふぅー!
力を込める時はできるだけ長いほうがいい。
そのためにはやっぱり体力と腹筋が大事だ。

「上手ねぇ。」
へへへ。
マタニティスイミングでレッスンした甲斐があった。

一度、タイミングを失敗して、弱い陣痛の時に力んだ。
しかし、それだと、全く力がはいらない。
明らかにからぶった感じだ。
「今は無理よ。」
看護師さんにもバレてしまった。
ここはやっぱり赤ちゃんと息を合わせないとならないのだ。

「頭が見えてきたよ。」
出てきている感覚はまったく分からない。
とにかく、ピーク時に力む!それだけだ。

約10回目。
うーーーーん!!!
もう体力の限界。
そろそろ出てきてほしい。

すると、男の先生が入ってきた。
「〇〇の〇〇です。今日、担当させて頂きます。」
なんて丁寧に自己紹介しているがそれどころではない。
どうやらクライマックスはこの先生が対応してくれるらしい。
そして、さらりと会陰切開をされたらしい。痛みなんてない。


うーーーーん!!!
本当に便秘のときの固いうんこをしている感覚だ。


すると、するんと何かが出た。
出た。出た。
やっと出た。
先生はすぐに処置をしてくれている。
胎盤を出したり、会陰を縫ったり。
私はぐったりしていて、何とかホルモンのおかげで何をされても痛くも痒くもない。

「赤ちゃん、指5本あります。目も鼻も口もありますよ。」

と看護師さん。
そうして、私の顔元にぐちゃぐちゃに濡れてる赤ちゃんを置いた。
頭がイビツで、顔が真っ赤だ。
ようやく、
ああ、ちゃんと産まれてきてくれたんだと思えた。

妊娠中に
赤ちゃんに最初にかける言葉を考えていた。
「ようこそ!素晴らしい世界へ!」とか。
だけど、出てきた言葉は、

「やっと出てきたね。」
素直な気持ちだった。

無事に1時間半の分娩が終わった。

陣痛は死ぬほどつらかったけど、
産む時は痛くなかった。

その後約1ヶ月はトイレで大便をする度に、
出産時を思い出し、
痛みやら感動やらで涙ぐんでいた。






おわり