近くのスーパーには除光液が売っておらず、
マニキュアを落としに来ただけなのだが、
店を出ようとしたら、
いやにゴージャスなマダムに引き止められた。
どうも、ここのオーナーらしい。
「ついでに、ネイルしていきなさいよ!私みたいに!」
指先を私につきつけた。
爪先にショッピングピンクのきらきらが輝いている。
ピンクの輝きが私の乙女心を掴んだ。
「いいねー!する!」
このマダム、話してみると、年齢43歳。
見た目が若い。だが、頬の位置と、鼻と、目がやや不自然だ。
(やっているな。)
と思う私。
以前学生から、ベトナムの美容整形の話をきいたことがある。
「先生、トップカットという店をしっていますか?」
「いいえ。しりません。」
「痩せます、顔をきれいにする店です。」
「ああ、美容整形をする店ですね。ベトナムにもあるんですか。」
「はい。でも、トップカットは悪い店です。」
「悪い店?」
「はい。お客さんが死にました。」
「えっ!」
「それで、お店の人は川に捨てました。」
「ええっ!」
「お客さんは、まだ、見つかりません。」
「えええっ…。」
このおばはんはどこでしたのだろう。
まだ、ベトナムの医療を信じていない私は、このマダムの行く末を案じている。
そんなこんなで、爪はきらきらしてきた。
ジェルネイル、10万ドン(500円)。
日本ですれば、5000円~10,000円するだろう。
完成度は低くても、この値段なら満足だ。
ベトナム人の美意識は日本に負けず劣らず高いのだ。
爪をいじるくせで、長く伸ばせない。