現行民法上「遺言書」とされているのは、基本的に財産相続に関するものであり、それ以外

には法的拘束力はほぼないと思っている。それは、私権の尊重、財産処分の自由、私的自治

を基礎としているからでしょう。確かに、物に対する限り、他人の権利を妨害したり、不当に他

人を侵害したりする危険が小さいからだと考えられます。しかし、日本の場合、戦後、民法が

個人主義的に改正されたとはいえ、やはり、情緒的な気質をもち、何らかのコミュニティに帰

属しながら生活して、一生を終える人が多いのも事実です。財産処分的内容がなければ法的

に効力が無いというのは、本来の日本人的気質とは、必ずしも適合するものとはいえないの

です。これは何も「家制度」を復活させろというのではありません。戦後80年近くを経過しても

日本人の気質は、そう大きく変化しているとは思えないのです。例えば、特殊詐欺のような犯

罪も、外国ではあまり成功しないのではないかと考えています。日本の場合、どうしても情緒

的に動いてしまうので、論理的に妥当であるかないかの判断をしていない場合が散見される

ようなのです。何も、祖国(日本)を馬鹿にしているわけではなく、良い面もある反面、弱点に

もなるという事なのです。「遺言書」作成に当たっては、遺言者意思の実現ができるだけなさ

れるように執行されるのが妥当であると思います。そのためには、遺言者意思の実現可能性

の高い内容に纏められる事が前提であると考えています。