半導体製造は印刷技術の応用

1.「導体」というのは電気を通すもの。逆に電気を通さないものを「不導体」と呼ぶ。簡単に言うと、半導体とはさまざまな条件によって「導体」と「不導体」が切り替わる特性を持つもので、その性質を利用して作られたスイッチと回路の集合体が集積回路(IC)や大規模集積回路(LSI)であり、それらを慣用的に「半導体」と呼ぶ。

 

2.スマホのアプリをタッチすると立ち上がり、上方向にスワイプすると終了する。これらを制御しているのが「半導体」。以前は大型かつ高価だった半導体だが、技術の進歩によってサイズとコストのハードルは下がり、生活の至る所で便利さを加速させている。

 

3.“半導体をひと言で表現するなら「人間の生活を豊かにするもの」。例えばドアを開ける際の指紋認証や顔認証によるスマートキーなども、優れた半導体がなければ実現していない。家電も同様で、半導体が進化しているからこそ、最近の蛍光灯はリモコンで光を調整できたり、色を変えたりできる。これらは明らかに昔と比べて便利になっている例だ。半導体技術の発展によって確実に世の中が変わっていく。

 

4.半導体の製造用原版となる「フォトマスク」だが、光を通す部分と通さない部分で、微細かつ複雑な回路パターンを描き分けたガラスの板がフォトマスクだ。写真のネガのように、原版となるフォトマスクに光を照射することで、その下に置く半導体製品の土台となるシリコンウエハーに回路パターンを転写する。その後の工程で光を通した部分の絶縁膜を削ったり金属膜を埋め込むことで、ウエハー上に回路パターンが形成される。印刷プロセスで磨いた超微細なエッチング技術を応用・発展させたものがフォトマスクだが、半導体も光を使ってウエハー上に回路パターンを印刷して製造しているとも言える。半導体は「こういう用途で使いたい」というニーズがあって、それに合わせて回路パターンを設計する。

 

5.半導体の高性能化には、パターンをより微細にしてLSIの密度を上げる必要がある。フォトマスクを用いる半導体製造プロセスでは、波長が短い光を照射するほど、パターンの微細化も進む。そこで、波長が13.5ナノメートル(nm:10億分の1メートル)と極端に短いEUV(Extreme UltraViolet)を用いるリソグラフィが期待されている。

 

6.「ナノインプリント技術」:基板上に塗布した樹脂に、回路パターンを形成したテンプレート(版)をハンコのように圧着させることで、超微細な凹凸のパターンを樹脂の上につくり出す。印影を刻むという意味の「インプリント」で、nm単位の回路パターンを作製するため「ナノインプリント」と呼んでいる。このプロセスで使う超微細な金型の設計から、それを使った製品の量産まで実現するこの技術。その原点は印刷技術を発展させたブラウン管製造用のシャドウマスクにある。