自民党総裁選で各候補が力を入れてきたのがSNS戦略

1.登録者数やフォロワー数はさまざまだが、各候補は秘話や特技、家族の登場、有名人との対談など工夫を凝らし、党員・党友らに支持を呼びかけた。どんな戦略が奏功したのか。ある陣営の衆院議員はSNS戦略について「政策テーマごとの国民の関心事やフィードバックを得るうえで、大変貴重な直接対話のツールとして重視している」と明かす。

 

2.9候補のうち、ユーチューブの登録者数が36万人超と最も多いのは、高市早苗経済安保相(63)だ。支持の急伸を裏付けるかのように、26日までの約1週間で登録者数を3万人以上増やした。写真共有アプリのインスタグラムでは趣味にも言及した。ハードロック好きの高市氏は、お気に入りの曲としてディープ・パープルの「Burn(バーン)」、バンドでドラムを演奏していた当時の得意曲に英ドラマー、コージー・パウエルの「オーヴァー・ザ・トップ」を挙げた。

 

3.また、高市陣営の街宣車「Veanas号(ビーナス号)」はネット上で位置情報を確認できるようにした。街宣車の名前は逆から読むと「sanaeV(=サナエV)」になる。小泉進次郎元環境相(43)はインスタグラムのフォロワー数が18万人超と候補者のなかで最も多い。ユーチューブでは半生を振り返る動画などを投稿しているが、コメント欄は〝進次郎構文〟の大喜利状態となった。

 

4.石破茂元幹事長(67)はX(旧ツイッター)のフォロワーが20万人超と、河野太郎デジタル相(61)と高市氏に続いて多い。好きなラーメンについて語る動画も投稿した。河野氏のXのフォロワーは254万人超と圧倒的だが、ユーザーを「ブロック」したことも話題となった。小林鷹之前経済安保相(49)はユーチューブで、後援会会合であいさつする妻の動画を投稿した。林芳正官房長官(63)はピアノを演奏する動画でアピールした。上川陽子外相(71)は質問に答えるショート動画を投稿した。加藤勝信元官房長官(68)のユーチューブは娘が編集などを手掛けていると話題になった。

 

5.茂木敏充幹事長(68)の陣営は、鈴木貴子衆院議員らがXで「#茂木マニュアル」というハッシュタグ(目印)を使った。官僚が茂木氏を接遇する際のマニュアルが存在すると過去に週刊誌で報じられ、«水は可能な限り「エビアン」»などと記載されていた。鈴木氏はこれを逆手に取る形で、別のブランドの水のペットボトルが映り込む茂木氏の画像を拡散した。

政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「党員には一般の有権者と価値観があまり変わらない人も少なくない印象だ。このためSNSで主義主張を訴えるだけでなく、コメントなどの反応を見たり、他候補と差別化する手段としたのだろう。発言をSNSに残しておくことで、今後の党内の議論をリードしたり、国政選挙を見据える狙いもあるのではないか」と指摘した。