将棋「最年少永世王位」

1.とんでもない記録への期待 タイトル戦ほとんど負けなしの藤井聡太王位、何歳で全冠になるのか。王位戦第5局は8月27、28日、神戸市有馬温泉「中の坊瑞苑」で行われ、藤井聡太王位が挑戦者の渡辺明九段に勝ってタイトルを防衛。同時に最年少の22歳1カ月で、王位5連覇により、永世称号を獲得した。将棋は相手の王手に逃げ間違えなければ、いわゆる初段コースの問題という、易しい詰みだった。終盤では上に逃げるという、プロの習慣が間違えさせたのだが、AIの評価はその手を指しても変わらなかった。AIでは詰みがあれば難易度関係なく、勝つ確率は100%なのだ。

 

2.しかし人間は違う。難しい五段コースの詰みでも、最初からそのつもりで考えれば、渡辺が逃すはずはない。しかし間違えなければ易しい詰みだったことに気が付くと、それを後悔しながらの思考になって、特に秒読みの中では間違えることがある。

第1局はまさにそのパターンで、渡辺は勝ちを逃した。

第2局は藤井がこれほど完璧に負けたのは見たことがない、という程の渡辺の快勝だった。しかし第3局で、難しい終盤ながら、渡辺が勝ち筋を逃して敗れると、後はいつもの苦手な対藤井戦になってしまい、結局1―4で渡辺は敗れた。

 

3.永世王位は、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、羽生善治九段に次いで4人目だが、22歳は最年少だ。

羽生がタイトルの永世称号の全冠(当時は7つ)を得たのは、47歳の時だったが、タイトル戦をほとんど負けない藤井が何歳で全冠になるのか。とんでもない記録が出るのではないか、という期待がある。

 

青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。