バイデン撤退なら「まさかの人物オバマ夫人」

 1.選挙戦に留まるか、撤退するか バイデンに残された時間は少ない 。バイデン大統領(81)の選挙対策本部が置かれるデラウエア州ウィルミントンか、それとも、バイデン氏に代わる新たな候補者の地元か、不透明だ。「私は大統領として相応しく、選挙で勝つために適任である人物は自分以外にいない。私はまだいい状態だ」  7月5日、ABCテレビとのインタビューに臨んだバイデン大統領はこのように述べて、再選を目指す大統領選挙の選挙戦から撤退しない考えを改めて強調した。以下、

 

2.しかし、日本時間の6月28日、バイデン氏がトランプ前大統領(78)との討論会で、言い間違いを連発し、言葉にも詰まる大失態を演じて以降、バイデン氏に対する選挙戦からの撤退を求める声は、日増しに高まりを見せている。バイデン氏が撤退を決断するならば、そのデッドラインは、7月18日あたりになるとみている。トランプ氏を党の正式な候補者に選ぶ共和党大会が、7月15日からウィスコンシン州のミルウォーキーで始まり、通例では最終日の18日に、副大統領候補が発表される。バイデン氏率いる民主党も、8月19日からイリノイ州シカゴで民主党大会を開く予定で、仮に候補者をバイデン氏から他の誰かに差し替えるなら、少なくとも1カ月程度は必要というお家事情もある。

 

3.バイデン氏の決断を もっとも左右するのはジル夫人  バイデン氏自身が、再選に向け意気軒高であったとしても、この先、撤退を余儀なくされる要素は、下記の通り、いくつもある。  ○ジル夫人など家族の反対  現状では、ジル夫人らはバイデン氏に戦いの続行を求め、支援する姿勢。 ○大口献金者の反対  ディズニー家の財産相続人アビゲイル・ディズニー氏は、「バイデン氏では勝てない」と、バイデン氏の陣営への選挙資金の提供を停止する動きを見せ、慈善家で起業家のギデオン・スタイン氏は、すでに350万ドル(約5億6000万円)の献金を保留。 ○主要メディアの反対  バイデン氏と同い年で著名なジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏や、有力紙ニューヨーク・タイムズなどが撤退を求めている。 ○民主党議員団の反対  バイデン氏を支える側の民主党議員が公然と身を退くよう求め、集団で撤退を求める動きに発展。  

 

4.これらのうち、バイデン氏の判断を左右するのは、ジル夫人だ。ジル夫人は、討論会後の6月29日、ニューヨーク州イーストハンプトンで、詰めかけた寄付者に「彼だけがふさわしい人物です」と強調し、ヴォーグ誌8月号では、「私たちは戦い続ける」と明言している。  ジル夫人は元高校教師でバイデン氏の2人目の妻だ。バイデン氏が最初の妻と長女を交通事故で失った後、再婚した相手だ。その後、長男にも先立たれたバイデン氏を精神的に支えてきたジル夫人は、バイデン氏にとって、人生を取り戻してくれた存在であり、何でも話せる唯一無二の親友でもある。  そんな彼女が、「ジョー、もう降りた方がいい」と進言すれば、バイデン氏はその歩みを止めると筆者は見ている。ジル夫人がこれまでどおり「GOサイン」を出し続けるか、それとも一転して勇気ある撤退を勧めるか、選挙の行方は73歳のファーストレディにかかっていると言ってもいい。

 

5.民主党と共和党それぞれの 「サマーサプライズ」はあるか  仮にバイデン氏が撤退した場合、最有力となるのは、やはり、カマラ・ハリス副大統領(59)だろう。  他にも、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏(56)やミシガン州の女性知事、グレッチェン・ウィットマー氏(52)などの名前が取り沙汰されているが、トランプ氏との対決を想定した各種世論調査では、いずれも2~5%ではあるが劣勢となっている。  そうした中、トランプ氏に勝つ可能性が極めて高い人物が1人だけいる。バラク・オバマ元大統領夫人のミシェル・オバマ氏(60)だ。ミシェル夫人とトランプ氏の対決を想定した場合、50%対39%と、ミシェル氏が11ポイントもリードしている。  ミシェル氏自身は、2017年、オバマ氏の大統領任期が終了した際、「私は絶対にやらない」と明言し、2019年には、彼女をバイデン政権の副大統領候補に推すPAC(政治活動委員会)が結成されたにもかかわらず、意欲を見せなかった。今回も、出馬の可能性を繰り返し否定してきた。

 

6.万が一、ミシェル氏が翻意すれば、「民主党にとってはこれ以上ないサマーサプライズになる」。副大統領候補と目される上院議員や下院議員はほとんどが60歳以下だ。そのうち、共和党穏健派も取り込める人物であれば、民主党の候補者がバイデン氏から大幅に若返ったとしても十分戦えるというのだ。  筆者が得た情報では、トランプ氏はすでに3~4人に絞り込んでいるという。黒人や女性、それもトランプ氏とは異なる考え方を持つ人物を指名できれば、それは共和党にとってサマーサプライズになる。