大河ドラマ「光る君へ」第27回「宿縁の命」7月14日

1.前回、東三条院詮子(吉田羊)と道長が立ち話をするシーンで、一条天皇と中宮定子の関係について、詮子が「あんなに激しく求めあう二人の気持ちが私にはわからない」と言うと、道長は「私には妻が二人おりますが、心は違う女を求めています」と反応。この道長の発言を受けて、物語は進む。

 

2.石山寺でばったり出会ったまひろと道長。思い出話に花を咲かせるうちにふたりは結ばれる。そして季節は秋になり、道長の娘・彰子(見上愛)が入内し、その6日後に定子(高畑充希)は皇子を出産。 一条天皇(塩野瑛久)の気持ちはますます定子と皇子へと傾く。 道長は晴明(ユースケ・サンタマリア)に相談を持ち掛けると、とんでもない提案をされる。 一方、まひろは懐妊が発覚し、宣孝(佐々木蔵之介)は喜ぶが見当違いだ。「数ならぬ身」(取るに足らない私)という言葉がしばしば出てくるが、これは国司に任官する層の貴族が自己表現として用いる言葉。「取るに足る」層の人は中央の官職を帯びている貴族たち。

 

3.まひろの父・藤原為時は越前守や越後守になった人だから彼女はBクラスの令嬢だが、庶民からすれば、それは高嶺の花というべき存在。でも相手の道長はAクラスどころか、その頂点である藤原本家の御曹司。いわばSクラス。二人が結ばれることは難しい。当時の貴族の恋愛は、男が女性のもとに通う「招婿婚」で女性側に主導権。そして女性の親はお気に入りの婿を全力でバックアップするので出世を目論む男は、単に好きだ嫌いだ、などとは言っていられません。女性と婚姻するとは、お目当ての女性の心をゲットすると同時に、女性のお父さんの援助をがっつり引き出すという「政治的・経済的な行為」だった。

 

4.彼女の父、藤原為時は学者で内面も素晴らしかったが、政治的・経済的に婿をどれだけ援助できるかといえば無力。だが道長の父・兼家。道隆、通兼、道長の3人を生んだ兼家の正室・時姫の父は、もっとも出世しても摂津守、「Bクラス」なのだ。兼家の妻というと、『蜻蛉日記』の記主として知られる右大将道綱の母がすぐに想起される。彼女の父は伊勢守。つまり、Bクラスの家の出だった。

【関連記事】

  • 『光る君へ』12歳で入内後、出産まで実に10年を要した道長の娘・彰子。苦しんだであろう日々が『源氏物語』にも影響を…その生涯について

  • 『光る君へ』宣孝の4人目の妻になった紫式部。最初そんな雰囲気はなかったのに…20歳差の結婚に秘めた<それぞれの思惑>を日本史学者が解き明かす

  • 下重暁子 藤原道長からいじめ抜かれた定子を清少納言は懸命に守ったが…紫式部が日記に<清少納言の悪口>を書き連ねた理由を考える

  • 本郷和人『光る君へ』定子出家後に義子・元子が入内するも一条天皇は会おうともせず。彼女らが暮らす<後宮>内の男性関係がどうなっていたというと…

  • 本郷和人『光る君へ』すれ違うまひろと道長。現実として二人が結ばれた<可能性>を考えてみたら意外な結論に…