G7各国で右派が台頭の理由

1.フランス総選挙だけじゃなく、日本も移民容認で後追うのか。仏総選挙の第1回投票で、国民連合が第1勢力となる勢いで、マクロン大統領の与党連合は第3勢力に縮小する見通しとなった。その背景は何か。こうした動きが他の先進7カ国(G7)諸国、更には日本に対してどのような影響を与えるか。まず、多くの報道で国民連合を「極右」としている。実際マクロン大統領もそう呼んでいるので間違いではないが、あくまで右か左かは相対な的なもので、国民連合の台頭は右傾化にすぎない。仏国民の間では、国民連合は「極右」でなく「ニューノーマル」になって、政権政党としての選択肢に入っていることに留意すべきだ。

 

2.今回の出来事は、そのような国民意識の「右傾化」をマクロン大統領が十分に認識できないまま、6月6~9日に実施された欧州連合(EU)の議会選挙で与党連合の大敗を受けて、議会の解散に踏み切ったためだ。こうした右傾化は、フランスだけにとどまらず、欧州でみられる。イタリアでは一昨年、「極右」と呼ばれた「イタリアの同胞」を率いるメローニ氏が首相に就任した。オランダでは昨年11月、総選挙で「オランダのトランプ」の異名を持つ党首が率いる政党が第1党となった。ポルトガルの総選挙でも右翼が議席を増やした。ドイツでは、右翼の「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持率2位の座を争っている。

 

3.ただし、7月4日に総選挙が行われた英国では、野党の労働党が大きくリードし、与党保守党は大苦戦で、右から左への政権交代が予想されている。米国は、11月の大統領選に向けて、先日バイデン大統領とトランプ前大統領の間で討論会が開かれたが、左寄りで主催者であるCNNの世論調査でも「トランプ勝利」が67%にも上った。そこで、これも左の代表格のニューヨーク・タイムズ紙は社説でバイデンの大統領選撤退を主張した。今のところ、バイデンは撤退を否定しているが、この時期になって異例の展開になっている。トランプは訴訟問題を抱えているので、バイデンの苦戦の理由は高齢問題に限らない。

 

4.カナダでは、6月24日に行われた同国最大の都市トロント中心部の選挙区で行われた補欠選挙で、野党保守党の勝利が話題になっている。この地区は、与党・自由党を率いるトルドー首相のお膝元で、1993年以来自由党が毎回議席を獲得してきたが、今回は負けた。国政選挙ではないが、来年実施が予定されている総選挙への影響が懸念される。G7諸国の中では、仏伊独米加で右傾化がみられる。これらの国に共通なのは移民問題だ。移民問題が深刻化し、国民生活に大きな影響を与えている。日本も育成就労法により、事実上、移民を容認する方向で政策を変更している。これが国政選挙に影響を与える可能性はあり、国民がそれに気付いた場合、右傾化が進む可能性がある。