国債発行の限度はインフレ率

1.1970年度の政府の長期債務残高(ほぼ国債)は、7.3兆円。当時から残高は増え続けていたが「結局、国債発行の限度額は」に対して「国の借金が十倍以上になって、破綻しないはずがない」などと言われていた。現実には、2023年度時点で1285兆円。図示した通り177倍だ。国債や政府の債務残高の「数字」には、大した意味はない。政府の債務残高増加とは、過去に政府がその金額分、国民に貨幣(現在は銀行預金)を提供した記録に過ぎないためだ。政府の債務残高が増えていたところで、インフレ率(※デマンドプル限定)が適正な水準を維持するならば、単に「国民が豊かになっていっている」というだけの話に過ぎない。

 

2.その際の政府債務残高の増加ペースが「何%なら正常」といった話もない。インフレ率が適正水準ならば、1%が正解かも知れないし、5%が正解かも知ない。「特定の数字」に意味を持たせようとするが、意味はない。現実には、100兆を超えようが、1000兆円を超えようが、破綻しない。むろん家計や企業の負債は別だ。政府の債務残高は何兆円だろうが、何京円だろうが、「政府が国民に供給した貨幣」の記録だ。「絶対額に意味がないとして、対GDP比では、日本は世界最悪だ」。過去に財政破綻した国と比較しても、日本よりもはるかに「良好」だったにも関わらず、財政破綻した。理由は、アルゼンチン・レバノンはドル建て国債、ギリシャはユーロ建て国債の債務不履行に陥ったためで、自国通貨建て国債ではない。

 

3.自国通貨建て国債しか発行していない日本、アメリカ、イギリスなどにとって、政府の債務対GDP比率に意味はない。政府の債務対GDP比率の上昇は「GDPが成長していない。政府債務の増加が不十分だ」というメッセージだ。政府が国債を発行し、支出し、経済成長率を高めれば、政府債務対GDP比率は必ず下がる。まさに日本の現実だ。「政府の債務増加が不十分なんだ」。

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