『2040年 半導体の未来』小柴 満信 著
定価:1,980円

1.「失われた30年の間に、技術力も技術者もなくなった。工場だけ建てたところで、そう簡単につくれるはずがない」といった批判の声がある。それでも日本は国産化へまっしぐらに突き進むべきだ。そこには勝算があるからだ。(本文より)本書では、2023年まで経済同友会の副代表幹事をつとめ「半導体業界のキーマン」として知られる小柴満信氏が、最先端半導体の国産化を「国家戦略」として掲げる重要性を説くとともに、半導体の最新潮流を明らかにした。


2.かつては世界シェア50%だった日本の半導体産業は、現在は10%を割り込み、「レガシー品」ではない半導体を生産しているのは、旧東芝メモリのキオクシア1社のみ。日本経済を「負けぐせ」から脱却させる半導体戦略を説く。半導体の復活なくしては、日本の未来はない。ビジネスパーソンの教養書。日本経済がしくじり体質から脱却し、復活するかどうかは「先端半導体」にかかっている。

 

3.世界ではいま、半導体がかつてないほど〝熱い〟。1つは、新型コロナウイルス感染症によって半導体の製造と供給が一時大きく滞り、世界経済に大きな影響を与えたこと。もう1つは、半導体をめぐる米中関係の緊張の高まりだ。「台湾有事」の可能性も取り沙汰されるようになった。いま世界中のあちこちで、自国に半導体製造工場を誘致しようとする「国産化」の動きが起きている。著者はJSRに入社後、2009年から社長、会長として11年ほど企業経営にかかわった。2023年に名誉会長を退任するまで、40年超にわたって半導体業界を現場の視点からつぶさに見てきた。そうした経験から、「最先端半導体の開発と製造を日本国内で再び行うべきだ」と半導体敗北者から結論する。いまや世界を牛耳るGAFAMはインターネット産業で大きく成長し、その後、AIが次の波になると見るや、素早く自社のサービスに取り入れることでさらなる強大なパワーを手にしてきた。それによってGAFAMが本拠地を置く米国が、世界の覇権を握ってきた。

 

4.それを支えたのは「コンピューテーション(計算基盤)」であり、もっといえば、コンピューテーションの基盤となる半導体にほかならない。すなわち、半導体は企業の力の素であり、国の力を支える基幹産業だ。半導体の復活なくして、日本の未来が明るくなることはない。ここにきて「日の丸半導体、復活か」と思われる動きが相次いでいる。TSMCによる熊本新工場の建設、先端半導体の国産化に向けた新会社Rapidus(ラピダス)の設立など。こうした「半導体の喧騒」を冷めた目で見ている人も多い。「失われた30年の間に、技術力も技術者もなくなった。工場だけ建てたところで、そう簡単につくれるはずがない」。こういった批判の声にも、一理ある意見もあるが、それでも日本は国産化へまっしぐらに突き進むべきだ。なぜなら、そこには勝算があるからだ(「はじめに」より抜粋)。

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