「消費税廃止」「社会保険料減免」のとき

1.総務省が発表した5月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が107.5となり、前年同月比2.5%上昇した。電気代が14.7%と大幅に上昇した。再生可能エネルギー普及のため国が上乗せする賦課金を引き上げた影響が出た。前月の2.2%上昇から伸びが拡大した。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.6%の上昇だった。2年9カ月連続で前年同月を上回った。エネルギーの上昇率は7.2%と前月の0.1%から急拡大した。電気代が14.7%上昇となり、生鮮食品を除く指数の伸びを0.49ポイント押し上げた。16カ月ぶりにプラスに転じた。

 

2.変動の大きい生鮮食品を除く総合指数に注目するのではなく、全体の傾向(エネルギー価格含む)を掴むため総合を見る(※CPI)、実質賃金の状況を予測するために、持ち家の帰属家賃を除く総合を見る。更に。輸入価格の影響を可能な限り排除するため、食料(酒類除く)及びエネルギーを除く総合(※コアコアCPI)で見るために、、三つの消費者物価指数の対前年比をグラフ化した。現在(今年4月)、日本の輸入物価指数は円ベースで対前年比で+6.6%、契約通貨ベースで▲4.1%。つまりは、契約通貨ベースではすでに輸入物価は「下落」を始めており、円安の影響でプラス化しているだけだ。これが「現状」。輸入物価が落ち着き、国内の需給関係が悪化(需要過少)になっている場合、インフレ率は下がっていく。もっとも、人手不足により上昇する人件費が価格に転嫁されているならば、必ずしもそうはならない。

 

3.現実は人手不足による価格転嫁は不十分のようだ。更に、物価上昇に影響を与えていた「契約通貨ベースの輸入物価指数の上昇」の影響は消えつつある。コアコアCPIとはいえども、輸入物価の間接的な影響を受ける(例:美容院が電気代の上昇を受けて値上げをした。電力会社は輸入燃料価格上昇で値上げをした)とはいえ、CPIのように全面的に輸入物価上昇の影響を受けるわけではない。現在、コアコアCPIは急激に低下していっている。つまりは、輸入物価の影響を(相対的に)排除したインフレ率を引き上げる力は、パワーを失いつつある。(これだけ人手不足であるにも関わらず)要するに、需給関係が「デフレ化」しつつあるという懸念だ。

 

4.同時に、円安の影響で持ち家の帰属家賃を除く総合は+3.3%。4月の同数値は+2.9%だ。春闘で「賃上げ」とやったところで、結局、実質賃金はマイナスだ。ということは、5月はインフレ率が高まり、賃上げ効果は一息ついているはずなので、実質賃金のマイナス幅は拡大する可能性が高い。26カ月連続の実質賃金下落は、もはや確定的だ。岸田総理がいきなり「電気・ガス料金の負担軽減策について8月からの3カ月間行う。ガソリンや灯油など燃油価格の抑制策は年内に限り継続する」と言い出したのは、この消費者物価指数のデータが出たためだ。この状況で「消費税廃止」「社会保険料減免」を言わない国会議員は、政治家である資格はない。岸田総理は、この際、電気ガスとか、ガソリン価格ではなく、今こそ、声高に「消費税廃止」を叫んでいたら、あっという間に、支持率を回復できたのだが、チャンスを逸した。とりあえず、今月や来月は電気・ガス料金の負担軽減策がなくなっているため、インフレ率はおよそ1%押し上げられることになる。当然、実質賃金のマイナス幅は拡大する。

テキストの画像のようです