太陽の科学が予告する「2040年寒冷化」

1.地球上のエネルギーはもとをたどれば100%太陽に由来するものだから、太陽を気候変動の原因と考えるのは自然だが、IPCCは太陽活動を一貫して無視してきた。その理由は、太陽活動に最近は大きな変化がないということだが、これは太陽活動を黒点などの熱流入に限定していた。

2.本書が注目するのは黒点ではなく、宇宙線。太陽の磁場が弱まると地球に降り注ぐ宇宙線が増え、空気中のエアロゾルが水蒸気を吸着して低層雲をつくって太陽をさえぎる。このような「日傘効果」はスベンスマルク効果として知られ、IPCCも認めているが、第6次評価報告書では気温との相関が弱いとしてしりぞけた。

 

3.著者はこの点を最近の研究で補強し、宇宙線によって極渦(polar vortex)と呼ばれる現象が起こることを示す。これは図のように北極から寒気が南下する現象で、これが強まると地球は寒冷化する。本書のモデルでは、気候変動を

  • 温室効果:CO2などの効果で温暖化する

  • 日傘効果:宇宙線が強まると低層雲ができて寒冷化する

  • 極渦効果:宇宙線で北極から寒気がおりて寒冷化する

という3つの要因の合成と考える。太陽の磁場は1990年ごろから弱まり、2040年ごろ極小になると予想されているので、宇宙線が増えて2020年代後半から寒冷化し、2040年ごろ最低気温になるというのが本書の大胆な予言である。

参考文献:太陽の科学が予告する「2040年寒冷化」 脱炭素キャンペーンの根拠を問う 単行本 – 2024/5/30

深井有 (著) 学術研究出版