「ザイム真理教」森永卓郎(著) 2023年05月19日、出版社: 三五館シンシャ

1.それは信者8000万人の巨大カルト。「大蔵省(現財務省)の奴隷だった」という自身の実体験をもとに、宗教を通り越してカルト教団化する財務省の実態をあばき、その教義を守り続けて転落し続ける日本経済&国民生活に警鐘を鳴らす、森永卓郎による警世の書。旧大蔵省時代を含めて、財務省が40年間布教を続けてきた「財政均衡主義」という教義は、国民やマスメディアや政治家に至るまで深く浸透した。つまり、国民全体が財務省に洗脳されてしまった(本文より)。

 

2.読んで本当に良かった。1人でも多くの人に読んで貰いたい。ザイム真理教(財務省)に洗脳された圧倒的多数の与野党議員を選挙で落とさないと、日本は極東の衰退国家になり終わってしまう。洗脳されていない積極財政派の心ある議員を1人でも多く当選させて豊かだった頃の日本に戻したい。著者はMMT(現代貨幣理論)と通貨発行益の利用を推奨している。MMTとは、通貨発行権を持つ国家は債務返済に充てる貨幣を自在に創出できることから「財源確保のための徴税は必要ではない」とするものだ。後半の「アベノミクスは、なぜ失敗したのか」以降は読みやすくておもしろかった。「日本経済が成長できなくなった最大の理由は、急激な増税と社会保険料アップで手取り収入が減ったから」。


3.財務省が唱える、税収の範囲内に歳出を抑えるという財政均衡主義、”ザイム真理教”がマスコミ、政治家、国民を”洗脳”し日本経済、国民生活に与えてきた打撃について語っている。シニカルなタイトルと表紙が目を引く。内容はソフトタッチで始まるものの、読み進めるにつれて、ある程度の経済関連の知識が必要だと感じる部分もあるが、比較的とっつき易く、読みやすい。印象に残ったのは以下の部分。
あの世は存在せず、人は死んだら何もなくなる。
神も仏も存在しないという真実を庶民に伝えたら苦しむ民衆を救えないが、宗教が、あの世という虚構の世界を伝えることで、信者は現生を前向きに生きていくことができる。
 

4.ザイム真理教は、日本の財政赤字を子供たちに先送りしないために消費税増税しかないと脅し続け、”教団幹部”や国家公務員は厚遇され続ける現実。現実を知った庶民が、今の苦しみこそが虚構だったと感じるか、それとも、それでも虚構の世界で前向きに生きていくという選択をするのかと問われているような。
東大出のエリートたちが、財政均衡主義(教義)疑問を持っていても、従わなければ出世が阻まれるため、教義にすがり続け、教団幹部が、政治家、マスコミ、富裕層を巧みに取り込み、教義を実行している様子や筆者の主張に、なるほどと思ってしまう。https://shop.r10s.jp/rakutenkobo-ebooks/cabinet/5147/2000013025147.jpg?fitin=560:400&composite-to=*,*|560:400