国債の利払い費

1.財務省にとって都合が悪いのは、現実の日本の国債利払費は、図示したように、極めて低い。理由は、もちろん日本の国債金利が低迷を続けていたためだ。それはもう終わるからという理屈で、利払い費を含めた財政目標に転換したいのだが、実はことはそう単純ではない。図の国債利払費は「粗」で、つまりは、日銀保有分の国債や「政府の金融資産(※主に外貨準備)」に対する利払い費を考慮していない。国債について「自国通貨建て」と「外貨(共通通貨)建て」を無視しているのと同じだ。

 

2.当たり前だが「利払い費が問題だ」というならば、「=政府が支払う利払費-政府が受け取る利払費」で見なければならない。家計にしても、住宅ローンの金利が月6万円、金融資産からの金利収入が月10万円だった場合「利払いが多すぎて破綻する」など、しない。ネットでは、月に4万円のプラス。日本は国債の半分を日銀が保有しているため、「国庫納付金」として日本に戻る国債利払費が2兆円強ある。加えて、政府の外貨準備(ほぼ米国債)へのアメリカ政府の利払費が巨額。結果、ネットの利払い費は遂にドイツを抜き去り、G7諸国で二番目に少ない(一番はカナダ)という状況になっている。

 

3.財務官僚の国会での答弁「OECDが本年5月に公表いたしました、最新の経済見通しによりますと、G7諸国の2022年のネットの利払い費の対GDP比について、日本は0.28%、カナダが▲0.36%、ドイツが0.48%、フランスが1.89%、米国が2.98%、イタリアが4.01%、英国が4.02%となっておりまして、G7諸国の中で二番目に低い値になっています。』カナダのネットの利払い費がマイナス(金利収入の方が多い)になっているのは、債権(殆どが米国債)からの上がりに対し、カナダ国債への利払費の方が少なくなっているためだ。いずれにせよ、日本のネットの利払い費は対GDP比0.28%。日本の利払い費を問題視する前に「アメリカの心配をしてやれよ」なのだ。ちなみに、日本のネットの利払費が低いのは、アメリカが米国債の金利を日本政府に払っているのも、理由の一つだ。

 

4.G7諸国のネットの利払費については、永濱利廣先生が各所で講演されており、ようやく自民党の積極財政派にも浸透し始めている。この「ネットの利払費」の概念が知れ渡ってしまえば、「国債利払が~」という財務省のプロパガンダは「オシマイ」となる。知られていない場合、「日銀が長期国債の買い入れを減らすことを決めた。ただ、円安進行をより強く阻止するために、国民生活に悪影響を及ぼす追加利上げには踏み込めない状況。金融政策の正常化への道のりは容易ではなく、日銀の手探りは今後も続く。」

 

5.この手の「円安を利用した利上げアピール」を繰り返し、
「これからの政府は国債利払で大変なことになるんだ。財政収支を目標にしなければ」という世論醸成と世論誘導を財務省がひたすら展開してくることになる。ついては、与野党の積極財政派の皆さん。是非とも、「財務省の国会答弁」を繰り返し活用し、そもそも「国債利払費」を問題視しようとしている財務省は頭がおかしい、という事実を国会議員や国民に周知しよう。政府の利払費を問題視するなら、日本ではなく「アメリカを問題視しろよ」なのだ。米国は、こちらの10倍だ。

 

6.財務省はPB黒字化では飽き足らず、国債利払費を含む「財政収支の黒字化」に財政目標を変更していようとする。財政目標に国債利払費を含める(=財政収支の黒字化目標)ためには、
「これからは国債金利が膨張していく。利払費も含めた財政目標を」という印象操作をする必要があるが、以上の説明で、これは狂っている筋書きと理解できる。

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