欧州議会選挙が大変なことになっている

1.メディアが「極右!極右!」とレッテル張りし「ポピュリズム(大衆迎合主義)」と批判しまくる勢力が躍進。独では「AfD(ドイツのための選択肢)」が二位に躍進し、仏に至っては「国民連合」が、マクロン大統領率いる与党連合に対し獲得議席で倍以上の差をつけて大勝。マクロンは国民連合の勝利を受け、急遽、6月末に総選挙を実施することを決定。

 

2.EU議会選挙は、人口に応じて加盟各国に割り当てられた議席をめぐり国ごとに投票実施。仏では、出口調査の結果などから、移民の受け入れや、ウクライナ支援に否定的な極右政党が30%と最も多くの票を獲得した。これは、マクロン大統領の与党連合のおよそ15%の倍以上だ。極右とレッテル貼りをされているが、実際のところAfDにしても国民連合にしても「反・グローバリズム」だ。

 

3.AfDにせよ国民連合にせよ、比較的「若い世代」からの支持率が高まっている。独では、24歳以下の16%がAfDに投票。2019年と比べると、11%増えた。AfDのクラー議員は、TikTokを活用し「ドイツ人男性の3人に1人は彼女ができたことがない。自信を持て。自分が優しく弱い左派だと思い込むな」と左派政党への否定的なイメージを刷り込んだとのこと。いずれにせよEUが「カーボンN」「移民・難民の人道的受入」といった理念を掲げている状況で、自分たちの日々の生活に直結する雇用や物価の問題が蔑ろにされていると考えているわけで、特に、若い世代に顕著だ。急遽、総選挙となった仏では、右派の共和党総裁が国民連合との選挙協力を発表し、衝撃が走っている。

 

4.仏の国際関係戦略研究所カミュ氏は「欧州の若者は良い生活をしていて、戦争もない。しかし、毎日の生活費や雇用問題、年金問題、何よりも公共サービスの低下などに悩まされている。病院にかかる費用もどんどん高くなっている。こういった状況から若者たちは「グローバル化の時代において、自分たちは勝ち組になれていない」と感じている。」と、欧州で極右レッテル政党が若い世代から支持を受けている理由を説明している。

 

5.まさに、日本と同じ状況に至っている(実質賃金が下がり続ける日本の若者が良い生活をしているか否かは別だが)。日本においても、反・グローバリズム、反・緊縮財政の勢力が支持を伸ばす基盤は既に整いつつある。恐らくは、この「現実が醸成した基盤」こそが、緊縮財政派・構造改革派の「関心領域」を破壊する。「反グローバリズム、反緊縮財政」だ。