半導体の基礎

1.半導体は、電気を良く通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」との中間の性質を持つ物質や材料のこと。シリコンなどがこれに当たり、同材料を用いた集積回路(IC)も一般的に「半導体」と呼ぶ。物質としての半導体は結晶の結合が強く、電圧を加えても電流は殆ど流れない。そこに、微量の不純物を添加することで電気抵抗を大きく変え、電流を任意に制御することができる。この性質を応用した部品は、電子機器の演算や情報伝達など多様な役割を担っている。

 

2.例えば、スマホは演算処理を行うCPU、情報を記憶するメモリなど、多くの半導体デバイスが使用されている機器の一つだ。スマホに搭載される半導体は、製品のスペックを大きく左右するため、メーカー各社で開発競争が進んでいる。開発が進む電気自動車(EV)は、航続距離を伸ばすためモーターやバッテリーを適切に制御する必要があり、エンジン車よりも多くの半導体が使われる。自動運転技術や常時ネット接続可能なコネクテッドカーの進歩なども相まって、今後自動車向けの需要は更に増加。

 

3.半導体を基盤に様々なデバイスがつくられているが、機能や役割ごとに5つに分けることができる。半導体メーカーと一括りに言っても、各社が得意とする製品・技術は夫々異なる。主要サプライヤーは大規模サプライチェーンを形成し、安定調達やコスト低減を求める顧客の要望に応えるため、生産設備への投資を継続的に行う。更に、搭載製品のモデルチェンジや高機能化の要請から、短期で性能向上が求められる傾向にあり、先端分野を中心に開発投資が進む。半導体デバイスメーカーが競争力を維持するには、巨額かつ継続的な投資を要する。

 

4.一方で、半導体需要には波があり、リスク回避のために開発と製造の分離が進んだ。そこで存在感を高めたのが、半導体の製造を請け負うファウンドリー(半導体受託製造)だ。従来の半導体メーカーは、デバイスの設計から製造まで1社で行うIDM(垂直統合)モデルが中心だった。だが、製造の外部委託が増加したことで、次第に力をつけたファウンドリーは技術開発も積極化。先端分野での受注を増やすなど、技術研究とサプライチェーン双方の動向において半導体市場の重要な地位を占めている。

 

5.【半導体デバイスの種類と主要メーカー】

1.「ロジック」
2.「メモリー」
3.「CMOSセンサー」
4.「パワー半導体」
5.「アナログ半導体」
6.「車載」
7.「ファウンドリー」

 

6.ロジック

演算処理や制御などを行う半導体デバイスで、パソコンやスマホなどデジタル機器の中核部品の一つ。半導体基盤に構成される集積回路は、回路線幅を微細にすることでより多くのトランジスタを集積でき、消費電力低減や処理性能の向上につながる。先端ロジックを搭載するデジタル機器は膨大な演算処理を素早く行えることから、メーカーは回路線幅の微細化競争を続けてきた。ただ、近年は微細化技術に限界がくるという指摘や、投資負担の観点から、インテルなどの有力IDMが先端品をファウンドリーに製造委託することも多くなっている。

主なメーカー:インテル(米)/クアルコム(米)/ブロードコム(米)/エヌビディア(米)/テキサス・インスツルメンツ(米)/AMD(米)

7.メモリー

半導体の回路を電気的に制御することで、データを記憶保持する役割を持つ。主にストレージとして使われる「フラッシュメモリー」と、演算に必要なデータを読み込み、一時的に記憶する「DRAM」がデジタル機器などに広く使われる。両製品の取引価格は経済指標としても注視される。DRAMは韓国サムスンが世界市場で約4割のシェアを握る。キオクシア(旧東芝メモリ)はサムスンに次ぐフラッシュメモリーの有力企業で、最近は研究開発や関連設備への大型投資を発表するなど攻勢をかけている。

主なメーカー
サムスン(韓)/SKハイニックス(韓)/マイクロン(米)/キオクシア(日)
8.CMOSセンサー

感知した光を電気信号に変換するセンサー。主にカメラやスキャナーの映像素子に使われ、ここ数年で特に需要が増え続けているデバイスの一つ。普及が進む高画質カメラ付きスマホは、1台に複数のCMOSセンサーが搭載される。世界シェアの約半分を握るソニーは、画像の取り込みを行う半導体チップと、信号処理を担うチップを積層させる技術を開発。動作速度向上やノイズ低減などの高性能化を実現し、シェアを広げてきた。20年には人工知能(AI)処理を行うロジック半導体を搭載したセンサーを開発するなど、新たな製品や技術が注目される。

主なメーカー
ソニー/サムスン(韓)/オムニビジョン(米)/オンセミコンダクター(米)/キヤノン
9.パワー半導体

電力の制御や供給を行うデバイスで、主に電圧・電流を調整する役割を担う。モーターの制御やバッテリー充電などに不可欠で、近年は技術開発が特に活発だ。パワー半導体の性能向上はEVの高機能化や、様々な機器の省エネルギー化につながるため、国内外のメーカーで設備投資が旺盛。また、よりエネルギー損失が少なく大電流を扱える窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)などの次世代材料を使用した製品が注目を集めている。

主なメーカー
インフィニオン(独)/オンセミコンダクター(米)/STマイクロエレクトロニクス(伊)/東芝/三菱電機/富士電機/ローム
10.アナログ半導体

音や光、温度、人の心拍など連続して数値化されていない情報(アナログ信号)を、コンピューター処理ができるデジタル信号に変換したり、その逆を行う。デジタル製品に加え、電圧をきめ細かく制御できる特性を生かし、自動車用モーターの駆動制御装置や電子機器のセンサーモジュールなど幅広い分野で使われている。直近の半導体市場では、全体の約15%をアナログ半導体が占める。

主なメーカー
テキサスインスツルメンツ(米)/アナログデバイセズ(米)/インフィニオン(独)/STマイクロエレクトロニクス(伊)/ローム
11.車載

自動車の動きを制御するマイコンユニットなどが分類される。自動車市場の規模の大きさから、半導体メーカーにとっても自動車メーカーは大口需要家にあたる。例えば、ガソリン車でもエンジンの燃料効率や排ガスを制御するために電子制御ユニット(ECU)の搭載が欠かせない。EV化や自動運転技術の進展で、車に搭載される半導体の数は増える見込み。取引メーカーは技術面だけでなく、モデルチェンジに応じたカスタム品の開発や、10年-20年及ぶ長期の供給保証など業界事情に沿った供給体制を確立が求められる。

主なメーカー
インフィニオン(独)/NXP(蘭)/ルネサスエレクトロニクス/STマイクロエレクトロニクス(伊)
12.ファウンドリー

半導体の製造に特化した企業のこと。逆に、設計中心で製造工場を持たない業態を「ファブレス」と呼ぶ。半導体デバイスは熾烈な開発競争が行われていることに加え、製造に巨額で継続的な設備投資が必要。生産設備を保有し続ける負担を考慮し、製造を外部委託するメーカーやファブレス企業が増えた。ファウンドリーはその受け皿となり成長を遂げ、先端分野の技術開発も積極化するなど存在感を高めている。日本への進出が決まった台湾のTSMCは、受託製造で世界シェアの6割弱を占める。

主なメーカー
TSMC(台)/サムスン(韓)/UMC(台)/グローバルファウンドリ―ズ(米)/SMIC(中)