1.外国からの分析を参考にみる。リチャード・カッツは「腐り行く日本というシステム」で次のように指摘した。日本は途上国から先進国に登り詰めたという点において唯一無二だ。日本以外において、先進国にランクアップするための独自の手法を発明できた非欧米国家や民族は存在しない。台湾も韓国も中国も日本のやり方をパクっただけだし、南米やアフリカや中東など日本以外の地域はすべて失敗した。しかしカッツは指摘する。「途上国が先進国にキャッチアップする」という途上国型の社会構造を変化させられなかった。利権構造でがんじがらめだ。既に先進国であるにも関わらず、過去の成功体験にしがみつき、政治家も官僚も産業界も、そしてメディアや一般人すら途上国型システムの維持と復活に拘り続けた。

 

2.ほぼ独裁じみた右派政党、産業や金融に対して不自然に権力を握りすぎている官僚、機能しないメディア、途上国のような通貨安誘導、そして中産階級サラリーマンの利益を代弁する政党が現れることを権力層が阻止していて、まるで途上国のように意図的にサラリーマンの賃金を安くおさえている。韓国や台湾、ついにはASEANにすら賃金で追い抜かれたのはこの辺が理由だ。通貨安誘導、労働分配率を意図的に下げる、官僚による開発独裁志向、これらはすべて「外国市場の需要を食い散らかして、失業を他国に輸出して外貨を溜め込む」という途上国型のシステムでしかない。日本ほど巨大な先進国がこんなことを目指していても意味がない。本来の先進国なら自国の労働者の賃金をあげて彼らの消費を増やし、そして自国通貨を強くして、更に構造改革を進めて利権を破壊していくべきだった。日本は構造改革に失敗した。巨大な利権が絡み合って自ら生まれ変わる自浄作用を失った。日本システムは腐り行き、このままでは死ぬ。

 

3.カレル・ヴァン・ウォルフレンは次のように指摘した。「日本の権力構造にはアカウンタビリティ (=説明責任 ) がない。日本語にはそもそもアカウンタビリティに対応する単語がない。日本社会には権力者が自分の行動について説明し、結果に責任を負う、という考えが存在しない。だから政策に失敗した権力者は責任を取らないし、自分達の行動について説明もしないし、失敗の原因について分析もしない。永遠に失敗をごまかし続け、改善されない」。更にウォルフレンは日本の権力構造を三極構造だと指摘している。即ち「CIAとペンタゴンの傀儡である世襲の自民党議員」、「選挙で選ばれていない裕福層出身の偏差値ソルジャーである官僚」、「そして円安と労働者の貧困がそのまま自分達の利益になる輸出系大企業 とそれで構成された経団連  」の三つだ。この三つのどこにも一般国民の民意は反映されず、民主主義は成立していない。

 

4.ウォルフレンは特に日本の官僚システムがお気に召さないらしく、官僚制度の肥大化が日本のガンと思っているようだ。気に食わない政治家がいると検察を利用して恣意的に潰す法務省、権力欲にとりつかれ無意味な増税を繰り返す財務省、そして日本の国益よりペンタゴンの利益を優先する外務省、を痛烈に批判している。ウォルフレンは日本のメディアも気に食わないらしく、政治家のゴシップ批判ばかりして本質的な政治経済、官僚批判をしない、およびアメリカ礼賛ばかりの日本メディアにダメ押しをする。