多くのアメリカ人がトランプのような人物に票を入れる理由

1.アメリカのある宗教、そして、その宗教が政治に与える影響について、キリスト教徒がアメリカ社会のすべての側面で特権的地位を持つべきだと主張するクリスチャン・ナショナリズム。その最も極端なグループが新使徒改革運動(NAR)  クリスチャン・ナショナリズムは、アメリカがキリスト教国家として建国されたと主張し、その政府と社会はキリスト教の価値観を反映すべきだとするイデオロギー。この運動は、キリスト教徒がアメリカ社会のすべての側面、つまり政府、教育、家族、ビジネス、芸術とエンターテインメント、メディアにおいて特権的地位を持つべきだと信じている。クリスチャン・ナショナリズムの最も極端なグループの1つが新使徒改革運動(NAR)。このグループは、「セブンマウンテン・マンデート(7つの山の権限)」を推進しています。これはキリスト教徒が7つの主要な社会領域でリーダーシップを発揮し、神の王国を地上に築くべきだとする教え。

 

2.クリスチャン・ナショナリズムは、特に共和党内で大きな影響力を持っており、トランプと結びついている  NARはドナルド・トランプと結びつき、2020年の米大統領選挙結果を覆すための試みにも参加していました。この運動の支持者たちは、政治的な戦いをより大きな霊的戦争の一部と見なし、トランプを神によって選ばれた人物と見ています。  クリスチャン・ナショナリズムは、特に共和党内で大きな影響力を持っています。マイク・ジョンソン下院議長や他の共和党議員たちは、公然とクリスチャン・ナショナリズムの理想を支持し、党のプラットフォームや政策に影響を与えています。  そして、中絶やLGBTQ+の権利に対して反対するなど、保守的なキリスト教の価値観に基づいた立法をしばしば目指しているのです。  クリスチャン・ナショナリズムはトランプと結びつくことで、その影響力をさらに強固なものとしており、多くのクリスチャン・ナショナリストは、彼をキリスト教的アメリカを復活させるためのリーダーと見ています。

 

3. 裁判の判決にもクリスチャン・ナショナリズムは影響を与えている  司法制度もクリスチャン・ナショナリズムの影響を受けています。  最近、アラバマ州最高裁判所では、宗教的信念に基づいて、「凍結保存された胚」は「子供」と見なされるという判決が下されました。  この判決は、クリスチャン・ナショナリズムのイデオロギーが法解釈にどのように影響を与えるかを示しており、政教分離の原則に対する懸念を引き起こしています。このような判決が出たことは、宗教的信念を法的枠組みに組み込むというクリスチャン・ナショナリズムの目標を強化するものです。クリスチャン・ナショナリズムとドナルド・トランプの関係は、一見すると矛盾しているように見えるが…?   

 

4.クリスチャン・ナショナリズムとドナルド・トランプの関係は、一見すると矛盾しているように見えます。トランプのライフスタイルやビジネスの実践は、伝統的なキリスト教的価値観と一致しないことが多いためです。  しかし、クリスチャン・ナショナリズムの支持者がトランプを支持する理由は、彼の個人的な行動ではなく、彼が行使する政治的な力と影響力にあります。  クリスチャン・ナショナリズムの目標は、キリスト教的な価値観を社会全体に広め、支配的な地位を確立することです。新使徒改革運動(NAR)などの極端なグループは、政府、教育、メディア、ビジネスなどの主要な社会領域でリーダーシップを取ることを目指しています。  トランプは、この目標を実現するための強力なパートナーと見なされています。彼の強硬な政治手法と大胆な発言は、クリスチャン・ナショナリストが求める「霊的戦争」における強力な戦士としての役割を果たしているのです。 

 

5.クリスチャン・ナショナリズムはトランプの政治的影響力と政策実現能力を重視。トランプをその運動の中心に据えている  トランプはまた、クリスチャン・ナショナリズムの政策目標を推進することに積極的です。彼は、保守的なキリスト教の価値観を持つ判事を任命したり、中絶反対、LGBTQ+の権利制限などの政策を支持しています。これらのことにより、彼はクリスチャン・ナショナリストの支持を得ているのです。  さらに、トランプはクリスチャン・ナショナリズムの象徴的な存在としての役割を果たしています。彼は、神によって選ばれたリーダーとして見られ、彼の言葉や行動は「霊的戦争」の一環と見なされています。  たとえば、2020年の米大統領選をめぐる彼の行動や、2021年1月6日のアメリカ合衆国議会議事堂での暴動に関する彼の発言は、彼がクリスチャン・ナショナリストのために戦うリーダーであることを示しています。  クリスチャン・ナショナリズムの支持者は、最終的にトランプの個人的な道徳性よりも、彼の政治的影響力と政策実現能力を重視しています。  彼のリーダーシップは、彼らが求めるキリスト教的な社会秩序の実現にとって不可欠と見なされており、そのために彼と協力するのです。クリスチャン・ナショナリズムはどのようにトランプを受け入れ、彼をその運動の中心に据えているかを明らかにしています。 ●米大統領選の激戦州では、クリスチャン・ナショナリストの支持が選挙結果に大きく影響を与える可能性がある  以下の図でわかるように、Battleground States(激戦州)でのクリスチャン・ナショナリズムの影響力は小さくありません。支持者(赤)とシンパ(橙色)を合わせると29%を占めています。  このような州でトランプとバイデンが接戦になった場合、クリスチャン・ナショナリストの支持が選挙結果に大きな影響を与える可能性があります。  さらに、イスラエルのガザ地区への攻撃により多数の死者が出たことで、バイデンへの政治的なプレッシャーはかなり高まっています。  たとえば、ミシガン州は激戦州の1つですが、同州の最大都市、デトロイトでは、中東系の人口が多く、若者もガザ地区のことでバイデンを支持しなくなっています。一方、民主党の年配の支持者はイスラエルを強く支持する人が多いです。この党内の分裂はバイデンにとって大きなリスクです。 ●なぜ多くのアメリカ人がトランプのような人物に票を入れるのか?  その背後には理由がある。トランプ当選の可能性は十分。その時、投資家はどうすればいい?   なぜ多くのアメリカ人がトランプのような人物に票を入れるのか?  一見しただけだと、理解しにくいことかもしれませんが、その背後には理由があります。そして、今回述べてきたクリスチャン・ナショナリズムの影響はその重要な理由の1つです。  トランプが再び当選する可能性は十分あります。  その時、投資家はどのような投資をしていけばいいでしょうか?  資産配分はどうしたらいいでしょうか?  その点については、メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」にて、詳しく説明していく予定です。  ●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。